第234話 あー、ハイハイ。ドンマイ、ドンマイ。
「皆さん、長旅でお疲れですにゃあ。今晩はゆっくり休んで言って欲しいですにゃ。」
「そうさせてもらうぜ。この辺の宿で泊まるよりはゆっくり休めるしな。」
この街での目的がハッキリしたところで、宿はどうなるのかという心配が出てきたわけだが、それは杞憂に終わった。アジトに泊めてもらえる事になったようだ。良かった。
スラム街だと宿もお察しくださいなレベルの所ばかりだと思うから、宿泊費以上にサービス料(寝てる間に徴収される)が多大に発生する可能性があるもんな。そうなると普通の宿屋で馬小屋を使うよりも悲惨なことになるし。正直安心した。
「俺らは部屋があるけど、勇者とか3人の部屋は用意してるだろうな?」
「もちろん、ゲストの皆さんにも用意してるのでご安心を。若い衆に案内させますニャ。おーい、新入り!」
「ん?」
「ん、じゃない! 早く来るにゃあ!!」
クロガネ団メンバーは普通に部屋を持っているようだ。俺とウィンダム、そしてタニシの三人は別で寝床を用意してあるみたい。こういう時の恒例として、一番の下っ端に案内させる流れになったが、イマイチな反応が返ってきたため、マイケルも軽くキレている。気の抜けた返事と共に出てきたのは、やけに小柄な人影だった。
茶色いふわふわの毛が特徴的な犬人である。体格は小柄な方のタニシやタンブル、キョウナよりも更に小さい。子供……なんかな? こんな子に働かせて大丈夫なの?
「子供か? こんな小さい子も加入させて大丈夫なのか?」
「子供じゃないやい! これでも16だ!」
「この子、ポメラニー族でヤンスね。比較的コボルトの中では小柄なことで有名でヤンス。」
子供かと思ったがそうでもないらしい。本人は16だ、と主張しているのでそうい
うことなんだろう。タニシの解説によると、犬人の中でも小柄な種族であるらしい。やっぱ、犬人の体格差は凄いな。
イツキやセンベイ、キノみたいに俺よりデカいのも普通にいるし。そういえば牧場に行ったとき、小柄なチワンヌ族のじいさんがいたっけな? あの人なんて人間の赤ん坊くらいの体格しかなかったことを思い出した。見た目も千差万別ってことか。
「誰がチビじゃ、ボケ! 臭ぇんだよ、オッサンが!」
「い、言ってないでヤンしゅう! しかも、オッサン!? ガァァァァァァン!!!」
「もー! この子はっ! お客さんに失礼な事を言うにゃあ!!」
「サーセン!!」
「そういう態度はダメっていつも言ってるニャア!!」
小柄な犬人は反抗的な態度と口調で接してきた。口だけではなく、しっかり中指まで立てて挑発してまでいる。これは相当な問題児の予感がしてきた。しかも、”体が小さいこと”に対しての言及はNGなようで、種族解説しただけのタニシに対して過剰な罵声を浴びせる始末。正に”狂犬”な新人なようだ。シジミちゃん程ではないが……。
「じゃあ、お前ら、ついてこい!」
「初対面でお前ら呼ばわりか……。」
「ンニャーーッ!! その生意気な口の利き方はダメーッ!!」
「あー、ハイハイ。ドンマイ、ドンマイ。」
「んげそうぃfhねおえっw!!!!!!」
マイケルさん、キレすぎて野良猫同士の喧嘩で聞こえてくる奇声みたいな声を出している。そして、生意気な新人は彼の名前をイジりつつ、”あかんべー”をしてから通路の先へと走っていった。”お前ら”扱いされた俺達は気まずい空気の中、アイツの後を追うしかなかった。どうなるかわからんけど、そうするしか選択肢はなさそうだ。
「割と綺麗に改装してあるね。見た目は遺跡みたいな建物だったけど。おいら、ビックリしたよ。」
「んー、まあそうだな。アジトってだけでなく、生活するためのシェルターみたいになってるんだろうな。外が犯罪上等な環境なだけに。」
アジトの中を進むと、結構綺麗にしてあるのがよくわかった。建物の年代を感じさせないぐらいには内装を凝った感じにしている。ちょっとしたお屋敷程度には整えてあるのだ。
至る所に植物も植えてあるので華やかである。多分、キョウナが関わってるんだろうなと思わせられた。日の差し込まないアジト内なだけに魔法とかで枯れないように工夫していると思われる。外の結界みたいにセキュリティも兼ねているのかも?
「ああっ! あの子、階段を降りていったでヤンス!」
「なんだ? ここって地下もあるのか?」
どこまでも通路を歩かされると思ったら、とうとう地下にまで至る所まで来た。なんか雲行きが怪しいような? しかも階段は長く続き、果てしなく下の方まで降りて行っている。どこに続いているのかと思ったら、内装が施されていない通路のような所に出た! 壁とかをよく見ると……人骨が所狭しと並べられているではないか!




