第221話 ちょっとした息抜きのはずが……?
「レース中にちょっかいを出しに来た挙げ句、失敗して負け惜しみなんてダサいよな。」
「そう言うお前はレースにすら出れなかったじゃねーかよ。」
タンブルとイツキがパーティーの喧騒から離れたところでしんみりとしていた。タンブルもどうやら調子を取り戻しているようだ。最近はあの棍棒が汚れてしまっていたのでテンション低めな事が多かったが、強気な事を言える程度にはなってきている様子。例の馬の魔王の事が話題に上がっているようなので俺も参加させてもらう事にしよう。
「おっ? 勇者? 偉いさんからようやく解放されたみたいだな。」
「はは……、馬やら豚やら竜やら、人ならざる者に捕まっちゃっててな……。話題も色々とんでもなかった。」
「俺たちなら子難しい話は抜きだから、少し休んでいけよ。」
せっかくのパーティーだと言うのにストレスのかかる相手ばかりだった。サヨちゃんは違うけど、魔王とかピッグなんて今後の予告みたいなある意味脅しとも言える話ばっかりだった。レース中と同じくらいの冷や汗を大量にかかされる羽目になったので散々だった。あんなサプライズは二度とゴメンだ。少しはリラックスして話せる奴等と一緒にいないと気が滅入る。そういう意味では助かった。
「馬の魔王の部下に勝てたとは言っても大ピンチに陥ったんだけどな? お前がいてくれりゃあ、もう少し楽になったんだろうなぁ。」
「でもな馬の下僕どもなら楽勝で倒せる。そうすれば馬も泣きべそかいてただろうに。」
「バカ言うな。お前が本調子でも相手は四天王だぞ? あれ以上下僕どもを叩きのめしていたら、逆上してこのパーティーも台無しにしてただろうよ。」
正直、ナイト・メアーズの三人組は手強かったと思う。途中から各個撃破体勢に乗り出してくれなかったら勝ち目はなかったかもしれない。あの三人の連携具合は驚異的だったと思う。レース序盤でグレートを苦戦させていたほどだったし。
他の人間があの連携を食らっていたら命を落としていたかもしれない。グレートだったから死なずに済んだんだし、下半身を失う(?)程度で済んだのだ。アイツですら苦戦する強敵だったと言える。
「アイツの本命はカラクリに隠してあったんだろう? 本性が伊達気取りなお調子者って噂は本当だったんだな。なんでも競馬みたいなマジックを仕掛けてるなんて馬鹿げてる。これぞ、穴馬だ、的な事を。」
「強かったな。あの三人組よりも。アレでまだ本体は別にいるっていうんだからな。本体と出くわした時の事を考えると正直ゾッとするよ。」
「倒したのはまたアイツなんだろう? たまに謎の覚醒をするよな、アイツは?」
今回もまたウィンダムの活躍によって危機を脱したのだ。スレイブの産み出した大量の分身によって俺たちは押され窮地に陥った。俺は逆境を打開すべくヤツの張った結界を破壊しようと目論んだが見透かされ、早急に対策され動きを封じられる結果になった。そこでまた、アイツが急におかしくなって過剰とも言える力で結界諸ともスレイブを吹き飛ばした。
「で? 結局、アイツの正体はなんなの?」
「さあ? 俺も聞きたいよ。今のところ、謎の勇者2号という肩書きしか付いてない。」
「まあ、勇者サイドの最終兵器って事にしとけよ。多分、馬もビビってただろ? 俺もビビったもん。タニやんじゃないけど、恐ろシッコになりかけた。」
「魔王さえ恐れさせるレベルなんか、アレは……。」
アイツの正体も謎だが、その武器に関しても謎が多い。一応、槍と分類させてはいるが、本来どういう武器だったのか見れば見るほど訳がわからなくなる。今回はその破壊力だけでなく敵のエネルギーを吸収する力を持っている事も判明した。それを利用して攻撃する事すら可能だったようだ。その証拠に戦闘後のアイツは意識を失ったりはしなかった。
前の時は自分のエネルギーを大量に消費していたから、倒れたのだろう。あとそれから、名前らしき物も判明した。スクリーマーだったっけな……? 何かその響きに不吉な物を感じるのは気のせいだろうか?
「アレがあればテンプル騎士団とか鶏もなんとか追い払えるんじゃないか?」
「そんな都合良く連発できるものじゃないだろ? 本人の負担も大きいだろうしな……。第一、アレは人に向けていいものじゃない……。」
「そうか? でも、それくらいの気持ちでいかないと、アイツらには勝てないぞ? テンプル騎士団には天翼騎士がいるし、鶏サイドも五色羽や吸血部隊がいるから手強いぞ。」
なんか、息抜き的な話をしたかったのにまたしても物騒な話になってしまった。確かに俺の首を狙っている奴等はどれもこれも手強い。どちらも悪名高い戦力を抱えている。しかし、五色羽は一人減っているからいいが、新たに吸血部隊なんて物騒な単語が飛び出してきた。詳細は聞いてみたいが恐ろしくもある。また、明日にでも聞いてみることにしよう。




