第217話 じゃあ、ゲテの神のお導きということで!
「やあやあ! こんなトコで会えるなんて偶然ていうのは素敵だね!」
「え? あ、まあ、そうかな? 偶然っていうより、お互い参加者だから必然だったと思うけど?」
プリちゃんは偶然通りがかった錬金術師の女の子に話しかけていた。あの人もレースの参加者だったと思う。なんだか猫さんのカラクリを使っていたチームだったような? わざわざ知り合いでもない女の子に話しかけるということはつまり……プリちゃん恒例のあの行動に他ならなかった。
「そこは偶然ということにしておいてくれたまえ! これは我々の運命が引き合わせた結果なのだよ!」
「えぇ……。でも、私、友達がゲテモノ差し出してきたから逃げてきただけなんだけど?」
「じゃあ、ゲテの神のお導きということで!」
「聞いたことないよ、そんな神様……。」
ああ、また、強引な勧誘手法が始まった。なんだか偶然の出会いを装って無理矢理運命の巡り合わせと前向きに解釈して相手を説き伏せる論法。プリちゃんが時折使う手法だけれど、私は他の人が使っているのを見たことがある。親戚の女好き(※ジン・フェイロンのこと)が同じやり方で綺麗な女の人を何人も口説いていた。つまりプリちゃんも同系統の人間なのかな?
「見ていたよ。君の活躍は! 素晴らしいね、最高にアルケミってたじゃないか?」
「あ、アルケミ? え? 活躍って言っても私はどちらかというとレース本編では活躍ししてないと思うな? 主に相方のノーラとおんなじで裏方に徹してたから……。主にチームを主導してたのはタニシ君だよ?」
「そんなことはないよ! 君は最高に輝いていた! あんなエロ犬・クッサ犬の事などどうでも良いのだ!」
「エロイヌ・クッサイヌ!? 何の呪文!?」
やっぱりフェイとやり口が同じ……。ひたすら美辞麗句で相手の女性を褒め称えて気分を良くさせようとする。フェイの場合、七割がたは女性がうっとりして乗っちゃう感じだけど、プリちゃんは何だかおかしな方面に話が進んでいるような……? なんだか方向性の定まらない称賛のしかたとか、相手のお友達の評判を下げるのはどうかと……。エロイヌ・クッサイヌってあの犬の人の事?
「君のような素敵な錬金術師の働きによって、あのエロいだけの犬はエロ犬・クッサ犬に昇格できたのだよ! それだけ君はすごい才能を秘めているのだよ!」
「それって称号の事だったんだ……。」
「多分ね、私に手を貸してくれたら私も更に輝ける存在になれると思うのだよ! プリメーラ・ザ・グレートになれると思う! いやそれどころか、ハイパー・プリメーラ2・ダッシュ・プラス・ターボ・エックスにメガ進化出来るかもしれんねん!!」
「え? はいぱー? ダッシュ? え? え!?」
あああ! プリちゃんのいけない癖が発動してしまったヨ! プリちゃんの気分が最高潮に達すると確変モード(※プリメーラ本人がそのように説明していたようです。)に入ってしまうの。こうなったら誰にも止められない。止めようとしても、更に気分は上昇していって誰も立ち入れない領域に突入してしまう!(※要するにプリメーラがおバカなだけです。)
「そこで錬金術を駆使すれば、更なるパワーアップを図れるのだ! ゴールデン・プリメーラが爆誕してしまうんやでぇ!!」
「ゴールデン? もしかして錬金術の”錬金”の事を言ってるの? それ、無理だから。」
「はへ? 何て言うた、今?」
「だからね、錬金術師っていうけど”錬金”なんてことは出来ないんだよ? まあ、始まった時はそれを目指して進歩させてたみたいだけど、やればやるほど出来ないことが判明しちゃったのよ?」
「嘘やろ?」
うーん、事情は良くわからないけれど、とにかく職業名に掲げた”錬金”という行為は出来ないという結果になったと? 私たちの国でも似たような技術で”錬丹術”というのがあるけど、あれも不老不死の丸薬を作り出そうとして失敗してるしね。やっぱり価値のないものから立派なものを錬成するなんて夢物語ということなんだと思う。
「嘘だと言ってよ、アルケミィ!!」
「私、そんな名前じゃないから……。出来ないものは出来ないんだよ? それだけは理解しておいてもらいたいな……。」
「あああ! 一攫千金の夢がぁ……脆くも崩れ去ったぁ……。」
「私の技術をそんなことに使おうとしてたの……。」
これはいけない。何かおかしいなと思っていたら、そんな事を企んでいたなんて……。確かにプリちゃんのおサイフ事情はかなり乏しい状況なのも知っている。でも……そんなズルいやり方に手を出そうとしていたなんて思わなかった。サヨ先生に知られたらお尻ペンペンどころではすまされない事案だね……。
「なんだい、なんだい? うちの相方を金づるにしようとするなんて、とんでもない輩だね? そんな詐欺紛いのセールスなんてお断りだよ!」
「ノーラ!」
「おおっ!? 誰かと思ったら……”博士”ではありませんか!!」
「は、博士……?」
錬金術の人のお友達のふくよかな女性がやって来た! あの人はカラクリの技術士だったと思う。プリちゃんの強引な勧誘から友達を助けるためにやって来たみたい。しかし、プリちゃんは困るどころか、更に興奮し始めたのだった。そして、あろうことか、ハカセとかいう謎の呼び名を使うのだった。ハカセ、って何?




