第212話 今後起きうる事について
「なんで会ったばっかりの俺の事知ってんの? おかしくない?」
「その前にあなたは有名人ではありませんか。私などよりもよっぽどね。」
この人と面と向かって話すのは今が初めてだ。そんな人から俺の生き方について示唆されるなんて誰に想像できるだろう? なんか、俺が有名人だからだ、としている様だが、どうやって知ったのか気になるところだ。もしかしてあの二人、掃除屋の二人組から聞いていたのだろうか? それにしたって学院でいたときの情報しか出てこないはず?
「もしかしてあいつらから話を聞いていたのか?」
「切っ掛けは学院の事件ですね。私は前学長殿とは知り合いでしたし、あの事件の詳細については興味があったのですよ。」
「あの人、俺から額冠と剣を取り上げたんだぜ? それを条件に入学を許してもらえたのは良いが、なんか色々監視されたり刺客まで送りつけられちゃったりで大変だったよ。最終的にあの人自身が大暴れなんて事態に発生したし。」
どうしてもエルの事が心配だったんだ。彼女は持って生まれた体の性質上、どこへ行っても疎まれる存在だったし。だからこそ自分の大切な物を没収されてでも一緒に行きたいと思ったが、それは杞憂に終わった。むしろ、俺の方が災いを呼び寄せてしまった感が強い。そして、それは次第に事が大きくなり始め、最終的に学院存続の危機にまで発展してしまった。
「私も彼の思想に懸念を持っていたのですよ。ですが、額冠をウッカリ預けてしまったあなたにも問題はありますよ。自殺行為ではありませんか。」
「う……それを言われると言い返せない……。でも、どうしても正式に入学した仲間のことが心配だったんだ。」
「おかげで前学長殿は自らの研究へのヒントを得たようですね。そこで調子づいたのか、創造神になったかのような気分になられたのでしょう。」
そう……結果、フェルディナンドは世直しと称して世界中の人間を抹殺する方向へと舵を切った。人類の愚かしさに愛想を尽かしたなどと言いながら、魔王軍と変わりない行動を取り始めたのだ。
あの男は千年近くの間、子孫の体に乗り移り擬似的な不老不死を達成していた様だが、ここまで狂った思想に陥った事に理解が追い付かなかった。ただ不老不死に拘りすぎた末路なのかと思っていたら、後に意外な切っ掛けを知ることになった。
「利口な方ではありましたが、過去のトラウマが彼を狂わせてしまったのが残念でなりません。」
「確か……姉がいたんだっけ? 不老不死の研究もその人を蘇らせるために行っていたと聞いたけど?」
「悪い言い方を承知で言わせて頂きますが、シスコンを拗らせすぎたのですよ、彼は。最も、その点がなければ魔術学院の学長を長年続けられたどうかは疑問ですが。その事実は良くも悪くも影響していたのでは、とも思えるんですよ。ただの私の個人的な見解ではありますけれどね。」
俺が学院を去った後、あの男の弟子達の封印が解かれる事件が発生した。アンネ先生やら魔王軍のアイローネとかが関わっていたそうだが、以外にもフェルディナンドの素性も明らかになったのだった。
研究の数々やら、研究の目的、その末にデーモン・コアの様な物を生み出す技術を完成させていた事が判明したらしい。正確には古代の失われた技術を復興させただけではあるそうだが。
しかも、それらと一緒にシスコンの極みとも言える物的証拠まで発見されてしまったと言うのだから目も当てられない。死んでからとんでもない死体蹴りを喰らってしまったのだ。因果応報と言うべきなのか?
「あなたの行動が後に大騒動を引き起こしてしまっているという事実にお気付きでしょうか?」
「ゴメン……。それは反省してる。もし、あの時学院に入らなけりゃあんな騒動にならなかっただろうし……。」
「騒動の原因になってしまったかもしれません。ですが、近い未来に同様の騒動は起きていた可能性はあります。あれはあなたがいなければもっと大きな騒動に発展していた可能性を考えれば、未然に処理することが出来たと評価しても良いのかもしれません。前学長殿はそういう人間だったのです。」
「俺がいたから、解決できたと考えた方が良いと? どうも納得が出来ないなぁ……。色々被害が出ちゃったし……、」
色々と被害が出たのは事実だ。犠牲者は幸い少なかったそうだが、怪我人は大勢いた。物的被害も相当だったらしく、貴重な建造物や設備や書物などが多く失われてしまったのだと聞いた。フェルディナンドが原因ではないが、俺も利き腕を失う羽目になった。エルへの心配から始まった出来事がここまでの大事に発展したのだ。その事実は何よりも重い……。
「そして、何よりも、今、あなたにこの騒動と同じくらいか、それ以上の試練が待ち受けているのですよ。」
「どうしてそんなことがわかる? アンタは予知能力者なのか?」
「違いますよ。知見と学識を以てすれば、似たような事が出来るんです。あなたの性格やこれから向かう場所、あなたと今後相対する人物達から推測すればわかることなのですよ。それを別のことで例えると、なんだろうな……高いところから遠くを見渡すような事なのですよ。」
この人のことはあまりよくわからないが、ここまで話を聞いただけで物凄い人物なのだというのはよくわかった。何よりも知識量が凄いし、少ない俺の情報からその性格や行動原理、果ては未来に起きうる事まで予測しているのだ。それが正確な話なのかどうかはわからないが、聞いていて段々恐ろしくもなってきた……。




