第202話 みんな走れ! 疾風のように!!
「はひぃ! ふひぃ! へひぃ!」
自分達が走るということでレースが続行されたわけだが、大方の予想通りの結果になっている。トニヤとキノがトップ争いで前に行っているのに対し、俺とタニシはその後にノロノロとついていっている。もうなんかタニシなんて息がもう上がってしまっている。情けない声だけが辺りに響いている。とうとう仮面も外してしまい、タダのタニシに戻っている。あの仮面、洗脳マスク説はあっさりと否定されたのである!
「ホラ! もっと早く! じゃないと轢き殺しちゃうわよ!!」
「ほひぃ!!」
そのタニシをまるで鬼コーチのように叱咤する存在がいた。タニシの実の姉シジミちゃんである。なんか表向き俺のサポート要員というか……俺の運転手役として背中にライディングしているのである。それで何をしているのかというと……タニシへのダメだしなのだ。俺には特に何も言うことはなく、ひたすら弟への愛(?)のエールを送っているのである。
「遅い。そんな程度で済むと思っているの? オガワ家の面汚しにでもなるつもり?」
「そ、そんなつもりはミジンコにもないでヤンしゅう!」
「だったらゾウリムシにでもなってみる? あれみたいに平べったく。」
「なるんだったらワラジ豚カツの方がいいでやんしゅう!」
なんか会話の内容が意味不明過ぎてよくわからない。実家の名を汚すなみたいな内容あたりから意味がわからない。微塵粉? 草履無視? できるだけ細かくした粉と履き物を無視することに何の関係が? わらじトンカツとは? トンカツって、前にサンディーさんが店で出してたメニューと関係あるんだろうか? 余計に二人の会話内容が迷宮入りしてきたぞ。
「よし、じゃあ、最後の手段だわ。オガワ家名物”制裁のカウントダウン”をやるわよ!」
「ぎょわーーーっ!? およしになってぇ! それだけはご勘弁を!!」
「説明しよう! ”制裁のカウントダウン”とは、オガワ家に代々伝わる精神鍛練法の一つである。制裁の名の元にプレッシャーを与え、目標を達成する胆力を養うものである。一定のカウント毎に制裁の内容がより過酷になっていく。しかし、この鍛練法をクリアできた者は数少なく、大抵の者は制裁の餌食となってこの世から姿を消すという。」
「なんだか解説が始まったよ!」
「ぎょうわぁーーっ!? 死亡フラグがビンビンに立ち始めてるでやんしゅー!!」
なんか物騒な名称の制裁法が聞こえてきた! 業を煮やしたシジミちゃんによってなんちゃらカウントダウンが実施される模様。しかもオガワけの定番且つ伝統であるらしい。クリアできたものは少ないって言ってるけど、一体何人の人間が犠牲になったのやら? というか、オガワ家って人数そんなに多いんか? それともタニシには命を散らした兄弟が存在しているのかもしれない……。
「……8、9、爆裂ドロップキック!!」
「ぎゃわっ!? 早くも十秒!!」
「……18、19、地獄悶絶固め!!」
「ぎょわわ!? もう二十!!」
「……28、29、垂直落下式アトミックスマッシュ!!」
なんか、十秒毎に技名が告げられているが、名前からどんなものか全然想像がつかん! 爆裂とか地獄、悶絶とかいうつよつよワードが入りまくっているのでとてつもなく痛いのだろうことは想像がつくが、垂直に落下してアトミックなスマッシュとは一体? かけて側がなのかかけられる側がなのかハッキリしないな。あるいはその両方? さっぱりわからん。
「……98、99、シジミ・スペシャル地獄巡り~精一杯の手心を添えて、ニース風~!!」
「ぎょうわぁ!? 地獄の巡りぃ~!! 完全に跡形もなく粉砕されてしまうでヤンしゅう!!」
「ここでカウントは打ち止め。制裁方法は決まったわ。確実に死のコースは確定ね。」
「あっしの人生もここで……ぎょわっ!?」
(バチッ!!!)
「むっ!? これは?」
制裁に絶望するタニシの前に青白い火花が弾けた! 誰かが電撃の魔法を撃ってきたのだ! 前を見てみれば、先に行っていたはずの男が俺たちのところまで戻ってきたようである。トニヤだ。わざわざ遅くなっている俺たちを嘲笑いに来たのか? それとも、マジでやりあうつもり……とかじゃないだろうな?
「なんだよ? 危ないじゃないか?」
「危ないに決まってるだろ。俺を邪魔すりゃ、今の電撃は確実に当てるぜって意味で撃ったんだぞ?」
「何が言いたいんだ?」
「察しが悪いな? 決まってるじゃないか。お前との決着を付けに来たんだよ!」
「なんだと?」
わざわざレースの結果に影響させてまで俺のところまで戻ってきたのか? 俺にまだ執着しているのはわかっていたが、レースで勝てば気が済むんだろうなと思っていたが、実力行使ってわけかい? このままだと簡単に勝てそうだから、直接引導を渡しに来やがったのか? どういうわけかは知らないが俺との一騎討ちがお望みのようだ。
「さんざんリンに恥をかかせてくれた礼だけはキッチリする! この場でお前のくたばる姿をしっかり目に焼き付かせないと気が済まんのさ!!」
「お前正気か? こんなところで決闘してもどっちの得にもならないぞ!」
「お前をキッチリ始末して、新たに掃除屋稼業を再スタートさせるのさ!!」




