第201話 じゃあ……私が走るよ!
「あの~、俺が走らないとダメ?」
「ダメ。」
俺の意思は秒でシジミちゃんに否定された。結局俺が走らないといけないらしい。シジミちゃんは運転がしたいのであって、自ら走るというのはやりたくないのだろう。ウィンダムは……無理だろう。なんか気が抜けたみたいになっているし、前にも例の発射した後には速攻でぶっ倒れたぐらいだったしな。今回は奪い取ったエネルギーも利用したから、無事なんだと思われる。
「おいらは走る気力が残ってないよ。何してたか覚えていないけど、疲労感が凄いんだ……。」
「わかった、わかった。お前は無理をしなくていい。前みたいにぶっ倒れてしばらくそのままみたいになられても困るしな。」
消去法で結局俺が走ることになった。走るのに自身があるわけではないが、走らないとレースに決着が付かない。なんとしてでもゴールにたどり着かないことにはレースが終われない。競技者同士の乱闘が発生して続行できなくなったなんて言っても、観客は納得してくれないだろう。レースを続ける義務が俺たちにある。
「やっぱりイヤでやんしゅう! 走ったら汗だくになって臭くなってしまうでヤンスよ!」
「なに言ってんの。アンタ、コボルトだから汗なんてかかないだろ。どこかの小娘みたいな事を言っててもダメ。それに元からアンタは臭いから。」
「えぇ~? あっしのダンディズム溢れる香りに何の不満があるんでヤンしゅかぁ!」
他もだいたい走者は決まっているみたいだが、ノーラのところはまだ揉めていた。タニシ……ギョバットさんがまだごねているのだ。そういえば、さっきも汗水垂らしたくないとか言ってたが、よくよく考えたらアイツは汗をかけないのだった。獣人全般に言えることだが汗をかけないのは常識なのである。彼らからすれば人間やエルフ、ドワーフが体から水を出すのは変なのだそうだが……。
「ギョリバンが走らないなら……私が走るよ!」
「マ……!?」
「シトラス、アンタが走るって言うのかい? 学者肌なアンタが汗を流す様なことを……じゃああたしも負けてられないね! あたしが走るよ!」
「しょわわ!? 候補者が乱立したでヤンス!」
「他チームだけど、ボクも走るよ!」
「センベイ君まで!?」
なんか走りたがらなさそうなシトラスが走るとか言い始めた。なんでもギョバッと解決するはずのギョバットさんが棄権しそうになってるんだからしょうがない。それを見たノーラまで挙手してきた。この勢いに乗り、他チームのセンベイまでもが名乗りを上げた! じゃ、じゃあ、この流れに乗るなら……、
「じゃあ、俺も走るよ!!」
「アニキは元々走者に決定してたでヤンス!」
「そうか残念だ。どっかの誰かさんみたいに下半身がカラクリ馬になってしまえば二人分走った事になりそうなんだが……、」
「コラ! 私の立場を取るんじゃない! 私は断腸の思いで……タニシ君が参加しないのであれば代わりに出馬しようじゃないか。」
「出馬って、選挙じゃないんだから!」
なんだよノリに便乗してやったのに。二重参加扱いにされてしまった。グレートみたいに下半身がウマなら載せていってやれるのに。残念だな。俺も下半身からカラクリ生えてこねーかな? とか言ってたらリタイヤしたはずのグレートまで参戦してきた! 候補者乱立で混迷を極めてきたわけだが……?
「んもう! あっしが走ればいいんでヤンしょ! あっしが行きヤス!!」
「どうぞ、どうぞ!!」
「ああーっ!? はめられたでヤンす!!」
「じゃあ、決定で!」
「わひ~ん!!」
なんとか、ギョバットさんを誘導することに成功したようだ。これで走者は揃った。あとはゴールまで突っ走るだけだ。しかし、コースも吹っ飛んだのに何を頼りに走ればよいのやら? レース出場経験のあるトニヤとかキノやギョバットさんは鼻が利くからいいかもしれないが、俺は……?
「走るときにどこを目指せばいいかわからん!」
「そう言うと思った。」
「じゃあ、何で俺を走らせんのさ?」
「決まってるじゃない。私があなたを操縦するのよ。」
「は……?」
どうすればいいかと思っていたら、シジミちゃんが予測していたかのような受け答えをしてきた。何を狙っていたのかと思いきや、俺を「操縦する」とか言ってきた! 乗る? 勇者に? 乗る? 操縦するってどういうこと? 俺を操り人形とかにするつもりなんだろうか? いきなりそんな荒唐無稽な話をされても……、
「こうするのよ!」
(ばっ!!)
「ううっ!?」
「シジミがおんぶされる形になった!」
「お、おんぶぅー?」
「何よ? 文句ある? 私みたいな美少女をおんぶできるんだから光栄に思いなさい。」
「あの娘……将来、大物になりそうじゃわい。」
いきなり背中に乗ってきたと思ったら、強制的におんぶさせられる羽目になった! 自分で走りたがらなかったのはそういうことか! 俺をオリッツォンテ号の代わりにするのを狙っていたんだ! こんなんハンデじゃん! おも……とか言ったら殺されそうなので、口にしないでおこう。しかし、ただでさえ走るのしんどいのになんで俺だけハンデありやねん……。




