第185話 勇者に対抗するための新兵器だ!
「掃除屋シルヴァン、敗れたりだな。人間共を処分するには足りるが、魔族を倒すには至らなかったようだな。人間相手に特化し過ぎた故に発生した不都合といえるだろう。」
「クッ! 言わせておけば……、」
裏社会で名を馳せた掃除屋も魔族の前では形無しか。破壊の術式自体は魔術師の間でもあまり使われることない、取り回しが困難な魔術と言える。第一に魔力の消費量が大きい事。第二に詠唱に時間がかかる事。第三に反射魔術の前には無力な上、諸刃の剣に成りうる事。これらの欠点がある故、戦闘に使われる事は滅多にないのだ。
「そちらの、ヴィクシオンと言ったか? その人型カラクリにもその術式を使うように設定しているのだろう? 広範囲に術式を発動出来るのだろうが、これも当たらなければ意味はない。よって、貴様らの敗けは確定したといえる。」
これら2番目までの欠点を解消したのが、掃除屋の持つ弩型の魔導器なのであろう。あれは恐らく魔晶石に魔力を貯蔵し瞬時に術式を発動することを可能にしているのだ。それ故、短時間で何発もの術式を連発するに至っておる。しかし第三の欠点を克服出来ておらんし魔族は魔力探知に優れている故、通用しないのだ。
「まだだ、まだ終わらんよ!」
「なんだそれは? まだつまらないオモチャでも持っていたのか?」
掃除屋の女はスーツの肘部分に付いた突起を取り外して手に取った。形状は掌に収まる程度の棒といえるが、鍔のような突起がついているので剣の柄のようにも見える。手にして構えた所でその棒から針のような刀身が延びてきた。その形状は刺突剣のようでもある。剣術で魔神に立ち向かおうというのだろうか?
「見ておくがいい。これは元々は勇者に対抗するために用意した魔導器だが……貴様で試し切りをしてくれる!」
「なんだ? 細剣か? そんな物が通用するとでも? この全身金属のカラクリボディを突けば逆にへし折れてしまうぞ?」
「その名もシルヴァン・メーザー! この剣で貴様を切り刻んでくれる!」
掃除屋は手にした剣で連続の突きを繰り出していく。本来魔術師である奴にしては見事な剣捌きといえるが、スレイブは容易にそれらを全てかわしている。そう、かわしているだけ。奴は槍ですら使う必要はないと判断しているのか、明らかな手抜きの戦い方をしている。完全に掃除屋相手に遊んでいる!
「これはすごい、すごい! 破壊の術式だけと思いきや、剣まで使えるとは大したものだ。貴様を相手取るのは厄介であろう。……あくまで人間に限った話だがね?」
「舐めるな! この剣をただのエストックだと思っていると痛い目に会うぞ!!」
(シュバッ!!)
「ぬっ!?」
余裕を見せていたスレイブに一筋の攻撃が顔を掠めた。金属の体に効果的なダメージを与えられないと思っていたが、鋭利な傷跡を残すほどの威力を見せている! この一撃で行けると判断したのか、掃除屋は次々と攻撃を放ち、スレイブを傷だらけにしていった。それでもスレイブは避けようとも、槍で退けようともしなかった。
「油断していたな! これはただのエストックではない。その刀身から破壊の術式を放つ事が出来るようになっている! いわば破壊の刃を持つ剣だ! 勇者の剣を参考に開発した新装備なのだ!」
「ううーっ!? こんな武器を持っていたとは迂闊だったぁ!?」
刀身から破壊の術式? まるでロアの勇者の剣のようではないか? あれも刃が付いておらず、技の発動時のみ闘気による刃を展開する仕組みになっている。あれの魔術版を作り上げたのだろう。しかも、刃は破壊の術式と同等の威力を持つ故、理論上はなんでも斬ることが出来るはず。限定的な範囲で展開しているために消費魔力も少なく、反射される恐れもない。なんという恐るべき武器を開発したのだ!
「うおぁ!? ダメだ、これではやられてしまいそうだ!」
「貴様は倒す! トニヤを痛め付けてくれた例はタップリしてやるぞ! やれ、ヴィクシオン! お前のヴィクシオン・メーザーの出番が来た!!」
スレイブはなす術もなく滅多刺しにされ体を穴だらけにしている。これでも止めを刺すには至っていないが、この間に掃除屋は自らのカラクリを呼び寄せ攻撃させようとしていた。その手には大型の両刃剣を携えている。掃除屋が口にした名前からすると、これも奴の武器と同様に破壊の術式を展開する武器なのだろう。大きく振りかぶりスレイブを攻撃しようとしている!
「斬れ、ヴィクシオン! お前の手で私を侮った愚かなる魔神を打ち倒すのだ!!」
(ブンッッッ!!!!!)
「ウギャアアアアアアアアッ!!!!!!!」
巨大な剣がスレイブを登頂部からまっぷたつにした。あれだけ圧倒的な力を見せておきながら魔神はあっさりと切り伏せられてしまった。あっけない。あまりにも。本当に倒せてしまったのか? いや、間違いない。いくら魔族であっても破壊の術式の威力に消滅は免れないはず……?
「ハハハ! 思い知ったか、魔神め! 掃除屋を侮るから……?」
(ズンッ!!!!)
「良い夢見れたか、掃除屋さんよ? 確かに当たれば我々魔族とて、体が崩壊しかねない。でも、それは的確に当てることができていればの話なのだよ。」




