第183話 なんだ、生きてたんだ?
「なんだ、生きてたんだ?」
「ちょっと! シジミちゃん、そんな言い方はないんじゃない?」
なんだか意外な登場の仕方だったが生きていてくれて良かった! しかもグレートも一緒だ。二人とも生死不明で不安しか感じていなかったけど、一片に現れてくれたので一気に溜飲も下がった気がする。しかし、グレートの方は無事だった……とは言い切れないのでは? カラクリと一体化しているのにはそれなりの理由があるんじゃないか?
「それより、グレート? 何故、そんな姿に?」
「ああ、これか? 話せば長くなるが、谷底……、」
「スタァァーーープ!!!! そんなつまらん話は聞かなくていい! その話題は禁止!!」
「ふむ、またしても出鼻を挫かれてしまったな。残念だ。」
「おいらも残念だよ……。」
「話が長くなるから却下!」
「私も賛成! 今はそんな場合じゃないの!!」
なんだか深い理由がありそうだったが、慌ててロアに阻止されてしまった。凄い気になるじゃないか。谷底……と言いかけたのだから、やはりあのゴドルフィンとかいう悪魔にやられて転落してしまったのは間違いないだろう。でもゴドルフィンの目測は外れ、彼は生きていた。でも無傷では済まず今の姿になったと。サイヴァリアンが壊れ、グレートも下半身を負傷したに違いない。
「なんて見事な応急措置なんだ!」
「は? 何言ってんだ、お前? こんなん、応急措置とかってレベルじゃねーよ! きっとインチキ臭い方法で無茶しやがったに決まってるんだ!」
「だから私が説明すれば納得がいくのだ。説明なき故、不可解に感じざるを得ないのだ。」
「もういいから、アンタは黙ってろ!」
「つまらんのう……。」
グレートは残念そうにしている。きっと素晴らしい方法を用いたに違いない。それを聞いてさえおけば、今後自分が同じような危機に見舞われたときに役に立つかもしれないのに。
今後魔王軍との戦いは熾烈になっていくだろうから、五体満足で凌げるとは限らない。体の一部をインプラントに置き換えるなんて事も……。インプラント? おいらは何を考えているんだ? 一体どういう意味だろう? 単語だけが頭に浮かぶだけで、その意味は全然思い出せないや……。
「どうした、若者よ? 顔色が優れない様だが?」
「あ、いや……ちょっと軽く頭痛がしただけさ。」
「大丈夫か? 怪我とかしてるんじゃないか?」
「してないわよ、多分。ノロノロ走ってただけみたいだし。」
不可解な記憶についてみんなに相談するわけにもいかないので、頭痛がしただけと誤魔化しておいた。確かに思い出そうとしたところでピリッとした痛みの様な物を感じたのは事実だ。昔の記憶を思い出そうとするとたまにそうなる。曖昧な記憶に対して詳細な所を思い出そうとすると特に。何か……体が思い出そうとするのを拒んでいるかのようでもある。何もハッキリしないけど……。
「あなた達がここまで行方不明になってたのは魔王の手先と戦ってたと解釈していいのよね?」
「うん、まあ、そういうこと。二回も襲撃を受けた上でそれを退けたと考えてくれればそれでいい。君が気絶している間に色々トラブルがあったんだぞ。」
「うーっ! それは言わないで! 思い出しただけでも、悔しいから! だって自分がミスったおかげでレースの遅れの原因を作ってしまったようなものだから!」
「ごめんよ。俺達がフォローしきれなかったばっかりに……。」
やっぱり二人が無事に生還したのはあの悪魔を倒してこれたからだったんだ。きっと二人の素晴らしい連携で打ち倒したに違いない。この二人がいればどんな敵であってもきっと敵わないに決まっているんだ。魔王の手先を排除できたのなら、後は何も心配することなくレースにだけ集中すればいいんだ。これで負けも取り戻せるはず……、
「若者よ、思い悩んでいる様だな?」
「え? 別に何も言ってないけど?」
「わかる。お前の悩みがな。お前はつい先ほどまで自らの使命を果たせているのかどうかと、葛藤していたのではないか?」
「どうしてわかるんだい? まるで全てを見透かしているようだ……。」
「私にはわかるのだ。お前は力不足とも考えているかもしれないが、決してその様な事はない。支え合ってこその仲間だ。チームなのだ。気にすることなく、お前の出来ることを果たせば良いのだ。」
「は、はい! 助言ありがとうございます!」
「うむ。それで良い。きっとこの後、お前の出番がやって来る。」
「こんな奴の言うことは真に受けない方がいいぞー。」
グレートはどういうわけかおいらの悩みを感じ取ってくれていたようだ。自分が不甲斐ないばかりに迷惑をかけてしまっていた事に罪悪感を感じていた。そんな葛藤を拭い去るかのように、彼の言葉は心にしみた。なんという器の大きい人なんだろう。これが目指すべき真の勇者の姿に違いない。この後レースの結果に繋がるように邁進していかねば!
「ちょっと! 話が長くなりすぎてるわよ! 早く行きましょ!!」
「そうだな! 早く行かねば!!」
そこで丁度良く話は終わり、みんな急いでオリッツォンテ号に飛び乗った。キャノピーを閉じた途端にシジミはスピード全開で車体を発進させた。相変わらずアグレッシブな運転だが、おいらの運転に比べると遙かに安定感があった。これで遅れも取り戻せるだろうか? しかし、グレートの言っていた事が気になる。この後、何が待ち受けているんだろうか?




