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第十一章 博士と新聞と胃痛
数日後、その成果は地方新聞の一面を飾った。
「日本人博士、漁村でマイクロプラスチックを除去!」
記事には「政府研究所の検査官ハリムが公式に数値を確認」と記されていた。
しかも写真には、泡に囲まれて赤っ恥をかいた直樹の顔が大きく写っている。
「博士だ!」
「博士が新聞に!」
村人たちは新聞を回し読みし、子供たちは直樹の写真を指さして大笑いした。
「やめろって!顔が変に写ってるだろ!」
直樹は頭を抱えたが、笑い声は止まらなかった。
――
その夜、集会所でノートパソコンを開き、直樹は報告書を作った。
ハリムのデータをまとめ、「日星飲料 ジャカルタ湾プロジェクト報告」として日本の本社に送信した。
送信ボタンを押した瞬間、直樹は深いため息をついた。
「……これで、俺の役目は終わりだよな」
だが、その言葉は自分に言い聞かせるように弱々しく響いた。
外では子供たちが「博士!博士!」と呼びながら走り回っている。
直樹は胃を押さえながら、窓の外を見上げた。
赤く沈む夕日が、まるで「まだ帰れないぞ」と言っているように見えた。




