19話
そうしてミヤと一緒に暮らしながら森で稼ぐ生活を続けてからしばらくたった。ミヤと宿で夕食を食べていると、ミヤが神妙な面持ちで話してきた。
「ハナビちゃんお願いがあるの」
「なに?」
「えっとね、いままでずっとハナビちゃんにおんぶにだっこで申し訳なくて、それでこれ以上頼るのも申し訳ないんだけど私も森に一緒に行っていいかな?足引っ張ることになっちゃうかもしれないけど、私も戦えるようになってハナビちゃんの役に立ちたいの」
「ん、わかった。いいよ」
「ほんと!?ありがとう!」
「ただミヤは森に行くには装備が弱すぎる。ダガー一本しか持ってないから何かほかの武器も持つべき」
「そうだよね。じゃあ明日武器買ってくるよ」
「とりあえず雑貨屋の中古品でいいのをさがそ。付き合うから」
次の日一緒に雑貨屋に向かう。
「とりあえずここからいいのを探そう。今のミヤの貯金じゃ鍛冶屋のものは買えない」
「えっと、剣も槍もいいなあ。でも魔物に近づくのは怖いし長柄の武器がいいな」
「それなら刃の状態がいいのはこの三つ。ここから選んで」
「んー、これはハルバードってやつかな?あとは普通の槍かあ」
「そっちは柄の長さが違うだけでどっちもスピアーっていうやつ。ハルバードよりも扱いやすくていいと思う。あとは森で扱うには柄が長すぎても困るから、こっちのスピアーがおすすめ」
「そっか、ハルバードもかっこよくて憧れるけどハナビちゃんの言う通りその槍にしようかな」
そうしてミヤはスピアーを購入する。
「初めて扱うのに慣れないまま森行くのは危ない。だから訓練場で練習してみよう」
訓練場でいくつか有効であろう型をミヤに教える。ポールウェポンの扱いについても基礎だけカイラスに教わっているがメインは剣なのでそこまで詳しく教えられない。
だがとりあえず基本の突きや横薙ぎ、下からの突き上げといった型にそって素振りをさせる。
「腰が引けてる。重心を意識してどっしりと構えて」
そうしてしばらく反復して素振りをさせた。
「ん、まあまあ。一回休憩しよう」
「__ハアハアッ___疲れたぁ」
「休んだら次は私に対して打ち合おう。思い切り来ていいから」
「う、うん」
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「お疲れ様、おひるごはんにしよ。おなかすいた」
「う゛ん゛_____そう__だね___もう限界っ!」
「初めてにしてはよくやった。あとは魔物を前にしり込みしなければだいじょぶ。今日のお昼は私のお気に入りのお店に連れてってあげる。ほんとにおいしいから」
腹ペコで限界だが、汗をそのままにするのは気持ち悪いので一度宿で汗を流してから店に行く。
「ここはほんとにおいしいから」
そういっておすすめセットを二人分注文した。
ミヤはまだ安い味も微妙なものしかこの世界で食べていないので自信満々なハナビに対して少し半信半疑といったところだ。ただ店に漂う食欲をそそる匂いに少しは期待してくれているらしい。
「ん、来た」
「「いただきます」」
そうしてお互いスリープの肉で作られたラムチョップに齧りつく。
「んんっ!おいひい!」
「言ったでしょ。この店は最高」
二人で昼食を楽しみ会計を行う。
「え!?ハナビちゃん、私こんな額払えないよ・・・・・・」
「だいじょぶ、ここは私のおごり」
「あ、ありがとう」
「ん、気にしないで。午後は二人で服買いに行く」
「ん、うん」
特に午後の予定は決めてなかったけどハナビちゃんが服を買いに行きたいみたいだから、一緒に行こう。私も新しい服欲しいし。
二人は街の中でも富裕層によく利用されるような店に入っていく。ミヤはここで服をたくさん買えるほどの貯蓄はないのだがハナビが上機嫌で服を見ているのでそれに付き合う。
「これ、ミヤに似合うかも。こういうワンピースけっこうすき」
「そうかな、えへへ。でもこのお店のものは私には買えないよぉ」
「それなら大丈夫、私が払う」
「いや、お昼もご馳走してもらったし申し訳ないから・・・・・・」
「んん・・・・・・」
ハナビは露骨に悲しそうな顔をする。
「あっ、そうだ!これだけはハナビちゃんに買ってもらおうかな?せっかく似合うって言ってもらったしね!私も着たいな!」
「うんっ、それがいい。たくさん着て」
そうしてミヤはその一着だけを買いハナビは数着買って店を出た。
「今度はオーダーメイドするのもいいかも」
「それは私も稼げるようになってからにしようね」
「うん。じゃあ次は____」
ミヤはハナビに引きずられるようにして様々な店をともに回っていった。ハナビは初めてできた同性の友達とのお出かけになんだかんだ舞い上がっていた。
とうとう歩き疲れたミヤに、二人は宿に帰ることにした。
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____ふう
流石にちょっと疲れちゃったな。でも今日一日ずっとテンション高めだったハナビちゃんは新鮮でかわいかったな。
もう寝ちゃってて可愛い寝顔をしてるけど、これで毎日獣や魔物を狩って来てるんだから信じられないよ。
もうハナビちゃんには虜にされちゃった。ハナビちゃんに置いてかれないように私も頑張らなくちゃ。なんてったって明日は狩りデビューなんだから。足を引っ張らないようにしなくちゃ。
起こさないようにこっそりとほっぺたを突っつく。
______んにゃっ
それにぴくっとハナビは反応する。
寝るのが早いハナビに対してこれをやるのが日課だ。時には頭をなでたりもする。
ハナビちゃんは毎日一生懸命森に通って狩りをしていてとてもすごい。他の傭兵なんかは狩りに行ってはしばらく休み狩りに行ってはしばらく休みとそんな勤勉な傭兵はいないんだから。そんなしっかりもののハナビちゃんだけど、普段はどこかふわふわしていて少し心配になってしまう。
だから私も強くなってハナビちゃんの隣で支えてあげたい。
そして今支えてもらってる分恩返しをするのだ。




