20話
「____きて____ミヤ」
_____んんっ
「起きてミヤ。朝だよ」
「んん、おはよう」
「おはよ、準備して。森に行くんでしょ」
「んん、いまなんじ?」
「たぶん四時過ぎくらいだよ」
「んん、まだねるぅ」
「寝ぼけてないで起きて」
ミヤから布団を奪って無理やり水を飲ませる。
___んぐっ
「ん゛ん゛____」
「ほら水飲んでスッキリした?あさだよ」
「うう、おはようハナビちゃん・・・・・・でもこんな起こし方ってないよぅ」
「だってミヤが起きないから。準備してギルドに行くよ。ギルドならこの時間でもご飯食べられるから」
「うん」
寝ぼけ眼ままミヤはのそのそと準備を始める。こんなに早い時間に起きたことのないミヤはなかなかまだ寝ぼけたままだ。
「ミヤ、寝ぼけたまま刃物を持たないで危ない」
「んん、ごめん」
少し時間がかかったがミヤの準備も終えてギルドに向かう。当然ハナビの準備はミヤが準備を終えるよりも断然早く終わっていた。
「キナ爺おはよう」
「ああ、おはよう。なんだぁ一緒に森に行く仲間かい」
「うん、この子はミヤ」
「ミヤです。よろしくおねがいします」
「ああ、俺のことはキナ爺とでも呼んでくれ。よろしくなぁ」
「それにしても仲間ができたか。いいことだ。今は一人でどうにかなっても後々一人じゃあどうにもなんねえこともあるからなぁ。じゃあ、俺は先に行かせてもらうな。嬢ちゃんの目がちゃんと覚めてから森には行きな」
「うん」
「ミヤじゃあ朝ごはんにしよ」
いつもどおり朝食に野菜をかじる。まあ、今日はミヤと一緒なのでそこだけはいつもと違うが。
「キナ爺さんはハナビちゃんとどんな関係なの?」
「ん、キナ爺が薬草の知識とか森の知識を教えてくれたの。私がたくさんお世話になった人」
「そうなんだ、ハナビちゃんのお師匠さん的な人なんだね。でもそれなら結構稼いでると思うんだけど、それでもずっと傭兵続けてるんだね」
「ん、そういえばそうかも。考えたことなかった。キナ爺も毎日森に行ってるからたくさん稼いでるはず・・・今度聞いてみよ」
「まあとにかくあの人のおかげで今のハナビちゃんがいるんなら私も感謝しなきゃ」
「うん、それがいい」
朝食を食べ終え、ミヤの目も覚めたので森に向かう。
「うーん、朝ごはん足りなかったかも。ハナビちゃんは毎朝あれを食べてるの?」
「うん、私も足りないって思うときあるけどそのときは干し肉食べてる」
「そっかあ、お肉持っていったら焼いてくれたりしないかなぁ」
「試してみるのもいいかも、朝ごはんが豪華になる」
二人で話しながら歩いてしばらく森にたどり着いた。
「浅いところなら魔物も出ないし入ったこともあるだろうから大丈夫だと思うけど、深くに入るほど魔物も出やすくなる。気を付けて」
「うん、わかった」
森の中の群生地を二人で巡りながら、森の奥へ進んでいく。ミヤもこれまでの依頼の経験などから息が荒れたりすることはない。
「ここから奥はもっと魔物に出会いやすくなってくる、そこまで進む前にいったん休憩する」
「ミヤ、足元を見てみて」
「なにかあった?」
「ほらこれ。ミヤの足跡。こういう痕跡を残すと魔物に存在が悟られて危険。待ち伏せとか不意打ちを狙われやすくなる。石とか草を踏むようにして足跡が残りにくいように歩くの。あとは歩くとき音を立てないように気を付けて、足音以外にも木の枝を踏んで折れる音とか草に体が当たる音とかを消すように意識するの」
「わかった。教えてくれてありがとう」
「これもキナ爺の教え」
休憩を終えて森の奥を進んでいく。
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「___見つけた______ゴブリンが三匹、ミヤの初陣にはちょうどいい」
「ミヤ、伏せて。結構近いかも」
「わかった」
魔物が近くにいることを知り、ミヤは露骨に緊張をにじませる。
「だいじょうぶ。三匹のうちの二匹は私が片付けるから、ミヤが相手するのは一匹だけ。それにミヤが怪我しないようにフォローもする」
「ごめんね、ありがとう」
「ん、じゃあゴブリンの足跡を追うよ」
足跡を追ってすぐ、獲物のその姿を視認する。
ゴブリンが三匹。二匹は木陰に座り込んでいる。そしてもう一匹は少し離れたところで横になっている。休憩でもしているのだろうか。
「座ってる二匹は私がやるから。ミヤはもう一匹をおねがい。ちょうど広場みたいになってるから邪魔な木もない。槍で距離をとって慎重にやれば問題ない」
「うん・・・・・・」
「じゃあ、いくよ」
そしてハナビは一気に飛び出しながらナイフをゴブリンの喉元に投げつける。寸分違わずヒットしたナイフはそれだけだゴブリンの命を削り取った。そして突然の仲間の死に動揺するもう一匹も剣で両断し、ほんの一瞬で勝負がついた。
ミヤの様子を見ようと振り返るとゴブリンに対し槍を向けてにじり寄っていた。
ゴブリンは突きつけられた槍に対して対応できないでいる。ゴブリンが持っているのは短い木のこん棒でリーチが余りにも違うのだ。
ただミヤも腰が引けていて攻撃に一歩踏み出せないでいる。
「ミヤ____」
ミヤに声をかけようと思ったそのとき、ミヤは覚悟を決めたようで腰を入れてまっすぐゴブリンに突きを放つ。
それに反応して避けようとしたゴブリンだったが、避けきれず刃が左の肩口に突き刺さる。強烈な痛みにゴブリンは暴れるがリーチの差が大きくがむしゃらに振り回すこん棒が当たることはない。
ミヤは突き刺さった槍を抜いて、次はゴブリンの腹をめがけて槍を横薙ぎに払う。そして地面に倒れたゴブリンにまた槍を突き刺して勝負は決まった。
「______ふぁああ」
腰が抜けたのかミヤは座り込む。それを支えてあげてミヤを労う。
「ミヤ、お疲れ様。悪くはなかったよ」
「ありがとー、もう怖かったぁ」
そういってミヤは抱き着いてきたので、優しくぎゅっと抱きしめ返す。
「今はまだ殺すのに躊躇しちゃうかもしれないけど、お金のためにも命を守るためにもがんばって」
「ううう」
ミヤが落ち着いてから討伐証明の左耳をとって街に帰る。ミヤは耳をとるのをひどく嫌がっていたがしょうがない、誰もが通る道なのだ。
ゴブリンは売るところもないし金にはならないが、いい経験にはなっただろう。
討伐依頼ならともかく、依頼のない魔物を狩っただけでは一銭も稼げません。討伐証明はあくまで実績を確認するためのものです。
傭兵は依頼の成功報酬か狩った魔物の肉や素材を受けることによって稼ぎます。




