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2ー50 歩む者

△▽△▽


トンファは、あれからの月日を思う。何か大切な人がいたはずだった。だが誰もしらない。


あの日、気付くと自分の部屋にいた。

庭にでると変わらないいつもの光景が広がっていた。


大岩から見える畑の実りが秋を教えてくれる。

それから私は、誰の子を宿したのか判らないがお腹に子供がいた。


とても大切な人の子供であると感じることだけはできた。

夜になると自然と涙が流れる。


心に空いた何かがあったはず。


そして翌年、子供がうまれた。

女の子であった。


名を『リーネ』と名付けた。


それからさらに6年後、トンファは病に伏した。

先天的な病らしく、薬などで延命している状態であった。


娘は、トンファの愛情を一身にうけ母親思いの優しい娘として村で評判になっていた。


△▽△▽


ニアは、忙しく働く。

女手一つでこの子を育てなくてはいけなかったからだ。

「ジル、そろそろ時間よ」


支度をして、彼女は、9歳になった『ジル』を教会に預ける。

そして彼女は薄い化粧をして、帝国でも賑わう繁華街に向かう。


男の相手をするのだ。肉体関係までは持たない。ただ、お酒をついで楽しくおしゃべりをするだけだ。何度か子供連れでもいいからと、婚約を申し込まれた事があったがニアは、首をたてに振ることはなかった。

そして、昼も少しの仮眠後に受付の仕事をしていた。


ジルは、そんな母親の苦労を知っていたので教会で必死に勉強と武道を磨いていた。

必ず、もう少し大人になったら自分が母親を守ると強い決意をきめていた。




△▽△▽


「午後からで、よろしいでしょうか。奥様」

トロアが身籠った体でエマに確認する。

「ええ、問題ありません。それで準備おねがい。あと来週から休暇をとりなさい。もう、そろそろ自分自身の体も気づかってほしいわ」


「しかし、私がしたくてしている事ですので、それに無理はしておりません。」


「いえ、ボムさんにも悪いわ。これは命令よ」


トロアは、少し考えてから

「では、来月の頭からそうさせていただきます。アスカ様の演奏会に向けた準備の区切りにもなりますので」


「娘の事で申し訳ないわね。そう言ってもらえると正直たすかるわ。誰に似たのか。突拍子もない性格で私にはよくわからないの」


「いえ、私から見てもアスカ様はとても賢いお子様です。将来は、奥様と一緒にサリード家を背負う立派なお方になられます。」


来週に、エマの娘の『アスカ』が8歳の誕生日を迎える。それにあわせてパーティーの目玉として娘の希望でピアノを披露する事になったのだ。


エマは、帝国技術開発本部の室長件軍事顧問として多忙を極めていた。アスカと接する機会がなかなか持てず。


アスカの口癖は

「お母様、いつお戻りなられますか?」だった。





△▽△


此処が何処なのか。

自分の名前は覚えている。


初めてみた風景は、土と砂ばかりの荒地だった。

古い道が過去に人がいた事を教えてくれるが、それだけだった。


そして気掛かりだった事。

トンファ、ニア、エマ、、。それにギル。


幸いな事に荷物は無事だった。1週間程度であれば食いつなぐことも可能な携帯食と水があった。荒野をまず抜ける必要があった。


地形は、見たことがない。そして、マナが異常に薄い。マナ操作しても発現するだけの環境ではなかった。


「システムコール」


アームズからの返答もない。

孤独や孤立がこれほど辛いものだとは、知らなかった。


皆で泉に行って、、っつ! 頭痛がするそこからの記憶はなく。

次目覚めた時には此処にいた。


まずは、誰か探さないと。

ひたすら、歩き続ける。昼は、遠くに見える山を目指し、夜は星を頼りに歩きつづけた。


4日目、誰かが通った気配を感じる小道を発見した。


5日目、底知れぬ谷間が目の前に広がる。

まるで、こちらと向こう側を隔てるように左右に永遠に繋がっているかのようだった。

少し遠くに谷を渡るための橋が見えた。


もう、空腹と疲労がピークだった。橋を渡り終えた所で睡眠もとらずに歩き続けた為だろう。アルはその場に倒れ意識を失った。


△▽□




「カーベラ、ギニアジェフシェア ジ ウル」


「ドイ ズ ニアベレ」


・・・・・・・・・・。


聞きなれない会話が聴こえる。

目をさますと、不思議な部屋にいた。


近くで先ほどの会話をしていたであろう人の気配がする。


「ギア ドイ ズッキー」


その一人がアルが意識を取り戻した事に気付いたのか話しかけてくるが言葉がわからない。


姿が人とも違う、耳が長くトカゲが人になったような姿であった。

また背中にコウモリのような翼が生えている。


アルは、自分を指差して名前をいう。

「アル」

「アル」


トカゲ男か女か性別は不明だが、その者もそれが名前であることが判ったのか己を指差して


「ギー」

「ギー」


そして、もう一人のトカゲ人を指差して


「グー」

「グー」


どうもこの二人の名前は、ギーさんとグーさんと言うらしい。

片言ながら相手の名前が判ったのは助かる。


言葉は、通じないが部屋を見る限りそれなりの文明が発達していることを感じた。まずは自分のおかれてる状況をしる必要があったが極度の疲れからかまた意識が遠退いていった。


次に目を覚ました時には、二人の姿はなく部屋のベッドのような不思議な入れ物に横たわっていた。アルは、体をおこして周囲の様子を伺う。


生活様式が人とそれほど変わらないことを理解した。台所らしき物。椅子やテーブル。それにお風呂やトイレなど一通り揃っていた。


アルが何よりも驚いたのは、外の風景だった。

トカゲ人がいっぱい通りを歩き、車輪のついた箱に乗ったりして高速に道を行き交う様子が見える。


また建物も高度な技術力を持っているようだ。

ガラス貼りの非常高い建物が立ち並んでいる。そして、大型の箱が空を飛んでいる。よく見るとトカゲ人が一杯乗っているようだ。上半分んがガラス張りになっておりその様子が伺えた。


アルがいる家は、周りの建物をみてもずいぶんと大きな方なのであろう。周りの建物が上に上にひしめくように建っているのに対してこの家?。屋敷とよんだ方がいいのか広い庭園に建って要りようだった。


そして、アルは感じとる。この場所のマナは村の濃度に匹敵するぐらい濃い事に気付く。

もしかしたら、、、。


「システムコール」


□△



起動シーケンス開始



テクニカル自動シーケンスに移行



現在座標補正、星座標により現在時刻補正

「エラー」


初期化フェイズに移行。

再構築、拡張実施。

現在座標補正、星座標により現在時刻補正

「成功 2次補正観測 擬似移行」





システムの再起動、、、、。




サブオペレーター起動



観測モードに移行します。



観測完了。



保護対象者の生存を確認



「おはようございます。アルさん」


久しぶりに人の言葉を、聞く気がした。


意識を仮眠状態にして、エルフの少女(セリア)に会いに行く。


いつも通りのなにもない草原だ。


今のところ話相手が彼女しかいないのでセリアと本名で呼ぶことにした。


「セリアは、今どこまで把握しています?」


「いい質問ですね。正直にお答えいたします。まったくわかりません。」

「星の座標も重力地場もマナの質にいたるまで、同じ星とは思えないほどに異なります。」



「つまり、異なる世界と言うことですか?」

「今のところ、そう判断したほうが一番正解に近いと思いますが、完全に別ではないようです。まだ、マザーとの繋がりを微小に感じます。」


「つまり、元の世界に戻れる可能性があると?」


「可能性はあります。が、かなり複雑な経路であることは確かです。」


「一旦、観測モード移行します。なるべく多く、トカゲと会話してください。情報を得るにも言語理解が最優先事項になります。」


「了解、頼りにしてます。」



△▽


さて、どうしたものか。

危機的状況が去ったことが判ると、どうしても家族の事を心配してしまう。もし同じ境遇かそれよりも不味い状況も想像し、気ばかりが焦る。


この世界から仮に戻る事ができても、もしここに家族を残していたとしたら取り返しのつかない事態になる。


考えても仕方の無いことかもしれない。でも割り切る事も出来ない。まずは、情報を集めなければ。


窓から外に出ることも可能だが明らかに助けてもらった手前もある。素直に部屋から出る事にした。助けてくれた『ギーさん』か、『グーさん』を探す。これだけ大きなお屋敷なのにトカゲ人の姿がみあたらない。使用人が複数居てもおかしくないレベルの佇まいにもかかわらずおかしい。


違和感を感じながらも部屋を順番に開けていく、どこもコピーしたかのように部屋の作り、家具の配置まで一緒だった。そして途中で気付く。


「窓からの風景が移動していてもまったく一緒だ、、、。」


窓をためしに開けてみたらハッキリするはずだ。

アルは一部屋に入り窓まで近寄り、窓に手前をかける。


「ジ デァア アル!」


その前に、部屋の入口に立つトカゲ人に呼び止められた。


「ギーさん?」


アルは、とりあえず知ってる名前をあたってみる。正直、パッと見まだトカゲ人の違いはわからない。


トカゲ人は、嬉しそうに頷く。そう見えた。

どうもこの窓には、触れてはいけない事は何となく理解できた。


それからトカゲ(ギー)に付いて歩いていくと、もう一人のトカゲ(グー)と合流することが出来た。その後、手振り身振りを交えながら意志疎通をはかる。


そして、テーブルの天板が開口し、下からせり上がるように器に盛られ食事が出てきた。

同じような、同じじゃないよなそんな食べ物であった。



意識に唐突に声が聴こえる。


「アルさん。言語サポート完了しました。まだ、名称保管が済んでいないので未完成ですが構文は翻訳可能性となりました。アルさんが喋った言葉もマナ操作で声帯への信号変換をおこないますので今まで通り喋っていただければある程度伝わるようにします。」



おお、さすがセリアさんだ。



さっそく、ギーさんとグーさんと会話をしてみる。


「助けて頂き有り難うございます。私はアルと申します。」


‼️


「おお、言葉が通じるようになったか。それなりの『アーツ』をお持ちのようで助かる」


「アーツとは何のことですか?」


「ん?、アーツではないと」


それから彼らの言うアーツという定義について説明をしてもらった。

彼らのが言うには、一種の能力のことであるとそして個性の一つで特技ともいうものだという。ギーとグーは、それぞれ規格外の能力『アーツ』を持っていた。


ギー:『空間に再現する力』


グー:『空間を継続する力』


この二人がいることでこの環境を構築しているという。

彼らは、アルと同じようにもともと此処とは異なる世界にいたという。


しかし、ある日この何もない荒野に飛ばされ約200年もの間この世界で、生活しているというのだった。にわかには信じられないが嘘をつく必要もないので信じる事にした。


「では、この窓から見える風景も作り出しているものだと?」


「アル殿は、飲み込みが早くていい。その通りだ。元の世界を忠実に再現したものだ。実際には、あの窓を開けると名にもない荒野が広がるばかり。」


「そして、悲しい事にどこまでも荒野しかない。少なくとも半径1000万kmは荒野だ」


‼️


「本当になにもないゼロなんですね」


「だからだよ。200年近く何もなかったこの場所に突然、君が現れた。僕らは、感動しかない。そして何か意味があるのではないかと。」


アルはその後、自分の身の上話や此処にくる直前までどんな世界でどうしてきたのか。


そして自分が前の世界において異物であり。特異点と呼ばれていたことなど。そして他人には空かす事ができなかった世界の理について話した。


そして、驚くほど彼らとの共通点が有ることに驚いた。



ギーとグーもまた前の世界では異物のような存在であったと言うことだ。

世界の有り様うを二人で全く異なるものに変革したという。






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