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2ー49 洞穴

△▽△▽


空を羽ばたく火竜は帰りにお土産を持って『フォート』の国死鳥に挨拶していくことにした。


かれらは国死鳥と呼ばれている事を知らないようだ本当は、火竜と同じ炎の理を守護するフェニックスだと言うのに人はお馬鹿な呼び方をする。


「どーも。ハムと言います。先日は、お付き合い有り難うございました。ところで、今日は詫びにお土産を持ってきました。」


ハムは、帝国のアル鳥ショップから貰ったハイアルの豪華ファミリーセットをフェニックスに差し出した。


全部で3セット分だ。皆、体が大きいからそれでも一口程度しかない。だが彼らは少食だ。これでも多いぐらいだろう。


「これは、私の主が崇めてる旦那様がさらに崇めている食材で作った料理で、絶品です。ご賞味下さい。」


「ほお、人が料理したものを食べるのは初めてかもしれない」


「ジェアは、食った事あるか?」


「うん。2000年ほど前に食った事はあるが忘れた。さして旨かった記憶はないが、ネズミの方が旨かった。」


ジェアと呼ばれたのは、一番体の大きなフェニックスだ。


ここにいるフェニックスは3体いる。

先ほど呼ばれた『ジェア』、今話し掛けた『トイ』。その様子を影で見ている臆病な『フィーネ』だった。


『ジェア』は、生まれた時、人間の親がいたそうだ。だが色々あって人間とは距離をとるようになったらしい。『トイ』は、それより前からずっと頂にいると言う。


そして、『フィーネ』はまた変わった生まれをしていた。彼女は自分の存在を認識した瞬間から闇の中だったと言う。闇から解放された時には、自分は森の中にいたらしい。飛び立つ方法を覚えてから彼女は、何かに導かれるように高く飛ぶことを目指した。気付けば、このフォートの近くで自分によく似た『トイ』に出会い一緒にいるらしい。


『フィーネ』は、もっとも若く、80年ぐらいではないかとの事だ。

このフェニックスと言う種は、特殊な環境化でないと成体してもフェニックスという種にならないそうだ。その共通点として人のマナに触れると言う野生では決してありえない状況で孵ると成体したときフェニックスに『覚醒』するとの事だった。


普通にただ卵から孵ると、何かしらの怪鳥になるらしい。

『トイ』は、かなり昔の事なので単純に自分がどういう経緯で産まれたか忘れて覚えていないそうだ。いったい何歳なんだと聞いたが軽く5000年以上は経っていそうだ。


『ジェア』は、詳しくは教えてくれなかった。

ただ、優しい人間の親がいたことだけは判った。


△▽


さあ、ご賞味下さい。


ハムは、高級そうな箱を引き出してお盆に盛られたハイアル鳥のフライドチキンを並べた。鳥に鶏肉持ってくのもどうかと思うが別に食い物なら何でもいいらしい。


「ほう、ずいぶんと美味しそうな香りがするな」


「食べる前に言うのもなんですが、美味しいです。どうぞ、熱いうちに」


アルが開発したファミリータイプの特別な日にちょっとご馳走プランのメニューらしく。箱が保温仕様で時間が経っても熱々出来立てを維持出来るらしい。


箱は、再利用出来る魔道具らしくそれだけでもかなりのヒット商品らしく、この箱目当てに購入する人が多いと言っていた。


それはともかく、大陸の一番高い山の頂上で3羽のフェニックスと竜が1匹がこのフライドチキンを囲んでいるとは世界広しと言えど、誰も思わないであろう。


「では、いただきます!」


‼️


‼️


‼️





「おーーーーーまいバード!。」

「やっちゃた。ここの食い物、ゴミじゃねえか!なんだこれ旨すぎでしょ」

「・・・・・・・無念。無駄に生きてた。」



この日、世界の生態系に絶妙な変化が起きた。


それは、食を通じた平行社会を発現させた。

さあ、時は大航海時代の幕開けである。


△▽△



「平和だなぁー。」

ジルをおんぶしながら、アル達はカルナの泉に向かっていた。以前いった時よりも早く到着する予定だった。転送で近くまで行けるからだ。ただ、泉はマナ干渉が大きく、さすがに現着というわけにはいかないようだ。


虹色の泉が広がる。何度見ても幻想的な風景だ。

ニアとエマは、初めて観たこの景色に息を飲んでいた。


「すごいでしょー。私なんてここでこのあと放置プレーされたのよ」

「トンファさん、まだ根に持っていらしゃるのですね、、、。あの時はすいません」


「トンファ姉さん、なんの事ですか?」

ニアとエマが首を傾げる。


アルは、釈明しつつこの泉がマナそのものが発現しているものだと言う。

全員、ある程度マナ操作が出来るようになっているため、驚愕の表情を浮かべる。


「間違っても火とか雷とかイメージしないほうがいいよ。死ねるから」


・・・・・・・・。


「大丈夫よ。そういうのアルぐらいしか出来ないから」


「そうなのか?」


アルは、アームズに意識下で質問する。


「その件ですか、回答します。アルさんは、この時すでに特異点としての理を理解していました。それにより世界への干渉を可能にしたと思われます。よってアルさん以外でそのような変化を起こすことは、、‼️」



「どうかした?」

思わず声が出る。


「大変、申し上げにくいのですが、、、。もう一人いらっしゃるようです。」


アルは、意識の視線先を見る。

抱っこしていたジルがキャキャ言いながら指を指しているのだ。その先で水が輪を描いてクルクル廻っていた。


「もしかして、あれをジルがやっていると? 特異点では無かったはずでは?」


「現在、観測予測計算しておりますが、可能性としてマナ根源に影響しているかと。つまり特異点からアルさんの根源にあたるマナの因子を受け継いでいる可能性があります。場合によっては、新たな特異点にもなり得る可能性を否定しません。」



んぅ、何ですと!

ち、このポンコツ計算機がお前の0%はあてにならない。


「聞こえていますけど!もともと存在しないものを計算にいれないといけないこっちの高性能アルゴリズムを否定するとは心外ですわ。」


「そういえば、高濃度のマナの中ではアームズも機能のほとんどを停止するって前に言っていた気が。この泉に沈めておけば安心か、、、ここでお別れか。長い間、ありがとう。」



「そんな、後生な。はい、またのご利用お待ちしております。では『また』」


ち、都合のいいやつだ。


息子のジルは、楽しくなったのか範囲を大きくしていく。


おい、やめんか!


アルは、対抗するようにマナを移動させるが視界よりも感覚に作用しているのかアルよりも明確なイメージがあるようで輪が巨大化していく。


そうこうしている内に、泉の底が見えるようになっていった。


「ん、何かある」


泉の底に蓋をするかのように、下向きに扉があった。

何かにわからないけど、入口のようだ。


アル達一行は、興味本位で扉を開いてみることにした。

明らかに人口の階段が続いている。壁は発光しており以外に明るい。


△▽


「どこまで続くのかな。もう1時間ぐらい経つ?」

トンファがアルに聞くが、アルもよくわからなかった。時間の概念がこの場所にないように感じていたからだ。


「わからないけど、この通路に常識は通用しないみたい」


アルは意識下でアームズを起動する。

「どうなってます?」


「今、メインとの通信が出来ない状況です。現在スタンドアローン状態です。」


つまり、世界と観測を隔てる場所にいると言うことだ。


「それは、だいぶやばくないです?」


「そうですね。もときた道があるかも怪しいところです。移動するたびに座標がとんでもなく変動しています。」


ふと、アルは後ろを振り返る。下ってきたはずなのに来た階段はそこにはなく通路になっていた。前を向くとどこまでも下る階段に見える。


「これは、だいぶやばいかも」


アル達は、全員で歩きにくいが手を繋いでひたすら下ることにした。もし一歩でも引き返そうものなら永遠に戻れない気がしたからだ。


こうなればひたすら進むしかない。


△▽


もう、何時間経っただろうか。

そう思ったころに終着点と思われる場所が見えてきた。

そこには、白い部屋が一つある。


窓もなく、何もない四角い部屋である。

しかし、部屋にはいるとそこに視認できる存在が一人いた。


黒い服装に身を包んだ老人が一人佇んでいた。


アルは、老人に話しかける。

「すません。アルと言います。どうも迷い混んでしまったようです。ここは、どこなんですか?」



老人は、表情一つ変えないでこちらを見ていた。


「君達か」


老人は、僕らを知っているようだった。

一言、そう言った。


「どこかと言う質問は正しくはない。君には何が見える?」


アルは、ただ白い部屋を見つめる。

白い。

白い。

白い。


、、、、、、。


いや、けして白いわけではない。白い線がいくつも無数に枝分かれしている。太いものもあれば細いもの。長いもの短いもの。枝分かれするように無数の白い線が集合し一つの白い部屋を形成していた。まるで大樹のように。


「枝分かれした白い線が無数のように見えます。」


「そうだ、これは存在するかもしれない未来であり、存在しなかったはずの過去でもある。」


「君は『特異点』と呼ばれたことがあるだろう」


「はい」


「特異点とは、厳密には存在しないはずの存在ではない。可能性の事だ。そして可能性は常に無数に存在し消滅する。では可能性による回帰はどこにある?」


「無ですか?」


「そうだ。ゼロと言う存在しない存在だ。矛盾しているようでそれは非常に美しい。」


「君は、どうしたい?。ゼロに戻るか。ゼロから始めるか選ぶことが出来る。」


アルは、質問が2択である事に疑問を感じた。

「どちらも選びません。選ぶ必要がないからです。」


「それが答えか?」


「いえ、答えなど最初から存在しません。ゼロですから」


老人は、初めて笑みを浮かべた。


「そうか」


「お前の家族はどこにいる?」


「ここにいますけど」



‼️


そう言って、ふと振り返るとさっきまで居たはずのトンファもニアもエマもいない。そしてジルの姿もない。


この部屋には、アルと目の前の老人しかいないのだ。


「私の家族はどこにいるのですか」


「お前達の言葉で分かりやすくいうなら、他の場所に帰った。本来いるべき場所へ」


「なぜ、私だけここにとどまっているのですか?」


「それは、特異点だからだ。先ほど、選択したであろう。

選ばない選択肢を、自分はゼロであると。」


「そろそろ、戻りなさい。また時がくれば来る事もある。」


老人は、光の中に消えていった。

一瞬、反転すると当たりは真っ暗になる。


目を閉じていたらしい。(まぶた)を、開くとそこには見たこともない風景が広がっていた。



△▽


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