2ー51 二人
△▽△▽△
緑の深緑が生い茂る森が広がる美しい星があった。
多くの多種多様な生物が弱肉強食の世界で生きていた。
文字や子孫に残す遺産などもない。
あるのは、その日を生きるための幸運だけだった。
そんな星にどこにでもいそうなトカゲが産まれる。
彼らのは、生まれたときから高い知能を持ち、力をもっていた。100年もしないうちにトカゲは星の生態系において頂点に君臨する存在となる。そして世代を重ねるうちに急激に進化していった。気付くと彼らの多くは、同族で争い戦争を始める。
世界規模の大戦を3回ほど繰り返すと彼らは一転して種を制限し監視された高度化した社会のなかで平和を1000年続けたという。
だが、そんな世界に生まれたのが
それがギーとグーであった。
彼らは、生まれながらにして強大な力持っていた。
そして自分が良いと思う形に世界を変えていった。そしてある程度理想に近付いた矢先にこの世界で目を覚ましたらしい。
共通点は、多い。安定した世界において彼らも異物であったという事。そして力の影響があまりにも大きい事。
アルは、アーツとは異なるアームズについても彼らに教えた。そして特に驚くこともなかった。何故ならば別に特別なことではなかったからだ。むしろ、彼らのアーツは非常にアームズに近いものだったからだ。
ギー:『空間に再現する力』
グー:『空間を継続する力』
ギーの空間に再現する力はあらゆる物質的なものを生み出す事ができた。だが、ギーが一定の距離を離れると消滅してしまうものだった。
グーの空間を継続する力はその対象物に永久的な定着を与えるものだった。そしてそれは生命すらもその状態を保持できた。
前の世界では、この二人が手を繋ぐことで世界の形が変わった。
ほとんど神にもひとしい存在となった彼らはその力を使い、監視され資源を分配し生かされているだけの世界から物に溢れすべての民が超高度社会で自由に生きる世界にしたのだ。
この窓から見える虚像がまさに彼らが実現した世界の有り様だったという。
だが、彼ら理想郷は破綻する。ギーとグーの生み出し定着したものが徐々に劣化し始めてきたという。その現象の報告が相次いだころに突然、二人は何もない世界で目が覚めたという。
アルは、そういう事かと理解した。
「システムコール」
「セリアの見解を彼らに説明してくれないか?」
「そうですね。彼らはそれを理解しなければなりません。少し辛いかもしれませんが真実で間違えないかと」
そしてセリアは、彼らが理解出来るよう意識を共有する。
アルとギー、グーは、草原でエルフの少女に会う。
ギー、グーは初めてなのでびっくりしていたが直ぐに慣れたようだった。
「はじめましてアームズのセリアです。自己紹介は不要です。ギーさん、グーさん。私は常に観測し続けてますから十分な情報を共有できます。まずは、先に真実からお伝えします。」
そして、セリアは語りだした。
‼️
「ここが、僕らのいた世界だというのか!?」
「はい、あなた方が崩壊させた世界、いや星の成れの果てです。」
「世界によりその呼び名は色々と異なりますが、あなた方は『アーツ』、私どもの世界では『覚醒者によるマナの消費』と呼び、星の源を枯渇させます。
判りやすく例えるなら、発生したエネルギーを消費しているぶんにはいずれ発生元に回帰するため問題ありません。しかし、覚醒者によるエネルギーの消費は、発生源そのものを消費するため減り続けます。
やがて、発生源はその機能自体を停止します。それが『星の死』です」
彼らは、言葉を失っていた。
いつか、帰れると信じていたからだ。だが、帰る場所は遠の昔にこの荒野に変わり果てた場所であったという。そして、わずかに残るエネルギーで生活区域を作り出し行き長らえていただけだ。
ギーが一言呟く、、。
「我らは、何のために生まれてきたのだ。まさか世界を滅ぼすと思っていたら使うことはなかった。何故与えられた。神は何故こんなにも酷いことができるのだ!」
グーは問う。
「死んだ星はもう生き返らないのか?」
エルサは、少し考えた様子で答えを返す。
「表現として星の死と言っている部分もあります。機能の復元と再起動はそれなりのステップが必要ですが現在、この星の生体がアルさん、ギー、グーさんの3人しか存在しなかった場合は、残念ながら方法はありません。」
そうか、とばかりギーはうつむく。すでに周囲には生物の姿などなく。しかし、200年で初めてアルという生物にあったのだ。期待したあとに方法は何もないと言われたようなものだった。
だがエルサは続ける。
「星を滅ぼすほどの力をもう少し正しく使ったらいいだけです。この3人が正しく力を使えばこの星は生き返ります」
‼️
「でも、力を使えば星の死につながるのでは?矛盾している気がしますが、、」
「発生源は、別に多少削られても星の状態しだいで修復したりさらに大きくなったりします。つまり適切に選択しながら実行する事が大事なのです。無尽蔵のパワーと勘違いしたのが間違えなのです。」
「普通の人の身ではけして出来ない事をできることがもっとも重要な因子なのです。」
「そして、このアルさんは覚醒者でもありますが、もう一つの要素として『特異点』という存在なのです。すでにこの星は一度死んでいますが存在しないものが存在する事で大きく運命が変えられます。」
さあ、始めようじゃないか。
△▽△▽
アルは、自分の思念をロードさせる。言うなれば彼の記憶にあるものをギーさんに再現させるためだ。
最初は、何もないからアーツを使うしかない。しかし自然の理になかで産まれるものは発生源を消費しない。
我らの理想郷を作ろう。
「それにしてもコレは凄い生き物ですね。こんなのいちゃいけない気がしますが(笑)」
「いやいや、これは神だよ。信仰と恵みを与えて下さる。」
△▽
外に出ると荒野が広がる。
そうか、目の前が陸を分ける大きな谷なわけだ。じゃあ、この反対側がいいな。増えすぎるのもよくないしな。
後は、増えるのを待ってから一気に基本種を揃える。
5ヶ月ほどで一帯の風景が変わっていく。
よくも、これだけ成長したな。
何もないと生態系の影響なんて考えなくていい。勝手に増えていく。もともといないから開拓し放題とばかり繁殖性の高いものが一気に範囲を広げたと思うと、個体としての力が強いものがそれらを餌に個体数を増やしていった。
そして、そろそろ統治者が必要だ。最後までいられるとは限らない、中途半端にまた何処かに飛ばされることもリスクとしてある。
アルは知ってる限り最強の力と知性をもつ存在をギーの力で具現化する『ワイバーン』である。この星の理を共にする彼ならこの先、無用な争いに介入することも可能だろう。
過去のこの星の記憶をもつ特性があるようで生まれた瞬間から高い知性があった。
ギー達には、わからないこの星の固有の種だった存在も認識していた。
彼の協力もあり、この星としての新しい形を形成していった。
アルは、この世界には人は必要ないと考えた。オリジナルが失われるからだ。
だが、寂しかった。
心の底では家族に会いたくて。
抱きしめたくてしょうがなかった。
△▽△
美しい湖から川の水が流れる。近くに畑が広がる。
大気に広がるマナが濃くなってきた。
「アルとーたん。何見とんの?」
トカゲの子供達が村を駆け回る。
ギーとグーは、人のような性別がなかった。大気にマナが戻ってきたことで、子供が産めるようになったと言う。ギーは、グーの子を産み。グーは、ギーの子を産む。人には、ない不思議な増えかたをする。3年ほどで成体になる彼らは、また子供達が同じように子供を産む。
6年の月日が経過していた。
山が美しく緑に覆われている。まさかこんなにも早く生態系が戻るは思っていなかった。ギー曰く、アルがもたらした存在が影響しているらしい。
ガゥアー。
「おお、ボーのところの息子か。」
アルは、この村では皆からとーたんと言われていた。
「何をみてるかって? そりゃ神様を見ているのだ!」
「ハイアル様ですね。本当に美味しい神様です。」
「そうだろ、ハイアル様がいればこそ生きる糧と希望になりえる。敬い、そして美味しく頂きなさい。」
「はーい」
そう言って、トカゲの子供は駆けていった。
よき隣人はどんどん増えていった。
アルは、忙しく働き続けた。立ち止まると動けなくなりそうだったからだ。
、、、、。
「システムコール」
彼は、意識をアームズに繋げる。
最近、アルは精神的に不安定になっていた。
そんな彼の状態を察して、セリアが安らぎを与えていた。仮想空間だけでも彼の愛した者達を再現したのだった。それが本物ではないこともアルは判っていた。それでも彼にとっては、必要だった。
トンファだったり、ニア、エマの容姿になったセリアの精神体と交わる。
「セリアすまない。僕の為に、、、。」
「別に謝る必要などないですよ。私もこれでも女ですし、恥ずかしがる必要もないですよ。いつも観測してましたから。」
世界が無くなってもゼロから始めることなど出来ない。
辛い時、悲しい時、迷い苦しむ時。いつも君はそばにいた。
明日も日は昇る。
△▽△
世界の器が広がる。
ギーとグーがアルに諭す。
「アルさん。もう十分、尽くしてくれました。もう自分の為に生きて下さい。」
こちらにきて何年経っただろう。
アルは、いつからか此処で生きることを選択していた。
そして、老いていた。
荒野だった場所は、草原になり、林になり、森になった。
小屋は、集まり村になり、集落になり、町になり、都市になり、国になった。
ギーもグー、アルも力を使ったのは最初と途中に数回だけだった。大きくなればなるほどコントロールが難しいため中継ぎを用意した時ぐらいだ。
もう、世界は彼らが手を差しのべなくても自走できるようになっていた。
若い者が知性を学び、創造し作り上げた物、芸術、食に溢れていた。貧富や階級、差別や区別もうまれていた。だが、強き者が弱き者を守る為、弱き者が強き者の近くで生きようとする事。それが始まりなのだから否定はできない。不平等も差別も始まりは、存在するのだ。後に悪意に充ちるようであれば正しき者達が自らの信念で、事を解決する。
アルは、セリアと共に山に向かう。アルにとってセリアはすでに人生の伴侶に均しい。肉体はないが理解者であり、心の支えであった。
山には、ワイバーンが住む。アルは肉体が滅びても特異点であるため、この世界に回帰する場所がない。そんな存在を唯一、どうかできそうなのが彼という事だ。
ワイバーンは、彼の星屑として複数の竜を従えている。彼もまた孤独には耐えられないのだ。
「アル様、わざわざお越しいただけるとは幸せです。この度は、どのようなご用件で?」
アルは瞳を閉じて明確な意思を思念する。
ワイバーンは、最上位種族だ。世界に住まうもの達と星を結ぶ者。そして星に繋がる者の意思も伝わる。
ワイバーンは、悲しげに答える。
「アル様がお望みなのですね。しかし辛いものです。
しかし、私にしか出来ないというのも確かです。私がしっかりと務めあげたく思います。」
「ギー様とグー様は、この事は?」
「彼らに隠し事などしたことはない。このことを後押ししてくれたのは紛れもなく彼らのおかげだよ。自分のために少しばかり力を使えと。」
「失礼いたしました。それではいつ頃に行いますか?」
「ああ、君には申し訳ないがこの山を登るのもそう何度もできるほど体は許してくれないようだ。できれば直ぐにでも準備を始めて実施してもらいたい」
「はい、承知いたしました。」
△▽
ワイバーンに頼んだのは、浮遊思念の破壊である。漂い続ける苦しみは必要ない。帰る場所は同時に還る場所でもある。輪廻すらできず死してなお苦しむのは想像に硬い。
彼は、魂の解放をさけんだ
「セリア!」
「アル!」
光の中に彼らは消えていった。




