第六話 モテても困る
どうにもこうにも、僕は顔が良すぎるらしい。
ナルシストではなく、事実なのだ。
父上譲りのきりりとした顔立ち。
鼻筋はすらりと伸び、唇は微笑むと程よく薄く広がる。
目元は涼しげで、風が吹けば飛ぶような繊細さがあり、それでいて毅然とした強さが隠されている。
母上譲りの穏やかな色合い。父上の金髪碧眼ではなく、母上の黒髪と夜空のような煌めく黒い瞳。
暖かい国で生まれた母上に似て、滑らかな深みのある小麦色の肌は、王族の装飾によく使われる金や白を際立たせる。
僕の自己評価ではなく、これは貴族のお嬢様達からくる手紙に実際書かれていたのである。
「坊っちゃま、また手紙が送られてございますよ。」
にまにまと笑みを浮かべるパティは、大きな盆に手紙を大量に乗せてやってきた。
「困るな……。まだ前回の分の返信をしていないんだ。」
現在10歳とはいえ、前世の分精神年齢は高い。
同封された肖像を見たところ、両親への愛を一身に受けたうら若き乙女達を、どうにもこうにも恋愛対象には見れないのである。
「坊っちゃま、誰か1人を選べばいいのでございますよ!そうすれば大量に返信せずにすみますでしょう?」
「パティ……。勘弁しておくれよ。大体、ナディル兄さんにすればいいじゃない。兄さんの方が美男子だし、王位継承権だって持っているのに。」
「だからこそです!ナディル殿下は許嫁が既に政略で決まっておりますし、公爵家のご令嬢と競う方はいらっしゃいません。」
「まだ坊っちゃまは決まっておりませんから、こぞってアピールが送られてきてるのでしょうね。」
パティは盆から何枚か手紙を抜き取る。
「ほら、こちらは宰相のご令嬢ですよ。坊っちゃまよりも年上ですが、女学園でトップの成績だとか!国を支える柱になるでしょうね!」
「こちらは辺境伯のご令嬢ですね。伸び伸びとお育ちになっていて、坊っちゃまとお話も合うのでは?隣国との最前線ですからね、王族としても関係は繋いでおきたいところです。」
パティがあれやこれやと手紙と肖像を引き出す中、僕は返信の手紙の封を閉じた。
「そうだね、王族としての勤め、ってやつね。」
パティはハッとして慌てて手を振る。
「いいえ、いいえ!恋愛は自由であるべきだと思います!
勿論、ナディル殿下は素晴らしい選択を致しましたが、
そもそも公爵令嬢様とも仲睦まじく、坊っちゃまは坊っちゃまの好きな人と結ばれてよろしいかと!」
「ああ、違うよパティ。」
ようやく書き終えた手紙を重ねてトントンと整える。
「恋愛は執着になる。政略結婚なんて、世俗に僕を縛ることになってしまうよ。欲を捨てないといけないのさ。」
ポカンとするパティの背後から、また大量の手紙が運ばれて来るのを見て、僕は後ずさりした。
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