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第四話 盆踊りと魔法

待ちに待った魔法の授業!


……だったのだが、教師がどうも、様子がおかしい。


「ハーイ!」


褐色肌を存分に露出する美女。頭や腕、足までジャラジャラとアクセサリーをつけている。


「シド君!アタシが今日から君に魔法を教えるカノンでぇす!気軽にカノンちゃんって呼んで♡」


パティが後ろで口をぱくぱくさせているのが、見なくても分かる。


「教育に携わる人間が……!!ここまで教育に悪いのはいかがなものなのですか!?」



震えながら僕の目を塞いでくるパティ。


「ノンノン♡お姉様、これは魔法に大切な要素なのですよ?」


細い腰に巻き付けたショールをヒラヒラと遊ばせながらカノンは踊る。


「魔法とは神の加護!それぞれの神への祈りが必要不可欠なのです!厳格なフドガル、知恵のモンデ、そして世界最強の女神、慈悲のアミターナ!」


くるくると舞い踊るカノンに、手を取られ困惑するパティ。


僕はくすくすと笑いながら、カノンを見つめる。


(なるほどな、あれは瓔珞や腕釧という訳だ。)


「カノン先生、つまりそのアクセサリーは祈りを捧げるための……?」


カノンは踊るのをやめ、パッと顔を綻ばせた。


「イエース♡大正解っ!アミターナ様はね、慈悲の女神!静かな祈りには涙を流して耳を傾けてくださるのよ!だからね、悲しませないために賑やかに祈るの!」


カノンはいそいそとアクセサリーを取り出す。


「はい!これシド君の分ね!これつけて踊るのよ!」


おお、重たい……!!これをつけてカノンは踊っているのか!?


ジャラジャラと飾りを揺すりながら舞うカノンは、僕がアクセサリーを付けると更に腰を振る。


「シェイクアップ!シェイクアップ!シド君、踊るのよ!踊りながらアミターナ様への感謝と祈りを唱えて!」


見様見真似でぎこちなく踊る僕に、カノンは更にスピードを上げて飛び跳ねる。


「考えないで!感じて!真似するんじゃないの!君の思うダンスを!」


僕は唯一踊れるダンス、盆踊りを始める。


「ワァオ!クール!サイコーよシド!そのまま魔法使うわよ!まずは簡単な魔法─」


カノンは踊りながら指を的に突きつける。


「ファイア!」


的がドガン!と音を立てて崩れる。カノンは続けて体をくねらせる。


「はい、やってみて♡」


僕は天に腕を突き上げながら足さばきを早める。


「ふぁ、ファイア!」


─途端、地に炎がうねる。5つ並べられた的が同時に弾けた。


「……ワァオ。シド君、何したの……?」


「……へ?」


ポカンとして踊りを止めるカノン。口が開きっぱなしのパティ。


僕は唖然として言い訳をしようとするが、2人がピクリとも動かないのに違和感を感じる。


「ヘイ、サムライボーイ♡お久〜!アミターナ様ご降臨だぞ♡」


気がつくと、天からにょきりと女神が顔を出す。


「いやぁ、10年ぶり?なかなか可愛いイケメンに育ってるじゃないの〜♡あ、女神ってあんまり地上に出てくるのバレたらまずいから、時止めといたヨ♡」


相変わらずバインバインと体を揺らす女神に呆気にとられる。


「あ、あの、魔法が……!」


「んー、そうそう、魔法の威力ヤバいから気をつけてねーって、魔法使う年齢になる前に言っとこうと思ってたんだけどね〜。忘れてた☆」


てへぺろと頭をコツンとするアミターナ。


「後はまあ、上手いことして!そうだ!踊り可愛かったよ〜♡」


スポンと天に帰る女神。あんな感じで引っ込むのか……。


動き出した2人に、詰問されたのは言うまでもなく、僕は『釈迦パワー』の説明に3時間を要した。

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