第十六話 去る足のゴウ
男が腕を振り上げた時、身軽な影が空から落ちてきた。
「お兄さん!なんであんたが絡まれてんの!?」
先程逃げた少年が男の頭を蹴りあげる。
激昂する男達をするするとすり抜けて、彼は僕の手を取って走り出した。
「き、君!盗みはよくないよ!お金を渡しなさい!」
もつれる足で走りながら、少年の引く手に必死についていく。
体力に自信がなく、少し走っただけで息が切れる。
「あー?あんた何?騎士にしちゃあひょろっちょいなぁ。
ここに住むなら、正義感は命取りだぜ!」
少年はそのまま路地裏に身を隠した。
「はぁー。こんないたいけな美少年に大人が数人がかりなんて大人気ねぇー!」
からからと笑ってそのまま立ち去ろうとする少年。
「そうだ。あんた、ありがとな!
なんか困り事があるならひとつまでなら聞いてやる!」
まさか、僕の方が困り事を聞かれるとは……。
少年は胸を張って、どんとこぶしで叩いて見せた。
「宵越しの借りは持たないことにしてるのさ!
さあ、どんとこい!」
「じゃあ、困り事がある人を教えて欲しいな。
誰か知らないかい?
それにこれも何かの縁だ、君の名前も聞いておきたい。」
少年は鼻の下を擦り、口を尖らせて答える。
「それふたつじゃね?まあいいけど……。
俺はゴウ!『去る足のゴウ』ってのは、俺のことさ!
それにしたって、困ってるやつが困ってるやつ探してんのどうすんの?」
頭をぽりぽり掻きながら、苦笑してみせる。
「うーん、それを言われると手痛いね……。
世のため人のために尽くしたいだけだよ。
大層なことができるわけではないけどね。」
ゴウはしばらく考えて、勢いよく指を伸ばした。
「なら、ギルドに登録するといい!
ギルド宛のお願いごとって、つまりは困り事だろ?
金も貰えるし、一石二鳥だろ!」
「なら君も一緒に行かないか?
お金がないから盗んだんだろう?
なら働いてパンを買うお金を稼ぐといい。」
すっと手を伸ばす。ゴウは困ったように眉を下げて、にへらと笑った。
「あー……いや、いいや。
まだ俺、ギルドに登録できる歳じゃねえの。
少なくともBランクのやつと一緒じゃないと俺の歳では登録出来ねぇんだよ。
ま、一人で頑張れよ!じゃあな〜!」
さっさと走り去ってしまったゴウを見て、やれやれと呆れつつ、指し示されたギルドとやらに足を進めた。
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