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8.『くますけと一緒に』

『くますけと一緒に』

出版社:中央公論新社

新井 素子 (著)


皆さんこんにちは、今回は新井素子さんの『くますけと一緒に』を紹介します。


皆さん、子供の頃に大切にしていた物はありますか?

私はドラえもんの人形をボロッボロになるまで持ち歩いてましたね。


この『くますけと一緒に』タイトルだけ見れば子供向けの童話のように見えますが、実際読み出すと気持ちが沈みます。暗いです。

帯にはホラー小説とありますが、読後に残るのは恐怖ではなく深い余韻。

ぬいぐるみという存在を通して、人間の孤独や喪失、そして救いを描いた作品です。


タイトルと内容のギャップ

『くますけと一緒に』可愛い響きです。

小さい子供とくまのぬいぐるみの話に思えます。

しかし中身は事故、喪失、罪悪感で一杯です。

あまりに重いテーマに「うわぁ・・・」となります。

しかしこのギャップは作品の核だと思えます。

見た目は可愛いのに中身は切実で深刻。

その対比が物語全体に不思議な緊張感を与えています。

読んでいるうちに、可愛い者の中にも怖さは潜んでいる。

そして怖さの中にも優しさは宿っている。

と思い知らされます。


子供時代の記憶

『くますけと一緒に』の大きな魅力は“子供の目線が”とてもリアルに描かれていることです。

主人公の成美は小学四年生。

彼女にとって「くますけ」はただのぬいぐるみではないのです。


唯一無二の親友で、心の支えです。

この描写を読むと誰もが一度は経験したはずの子供時代の感覚がよみがえります。

気に入ったおもちゃに名前を付けたり、話しかけたり、まるで本当に生きているかのように感じたり。

大人になるにつれて忘れてしまったけど、確かにあった感覚が思い出されます。

そして思わず考えました。

「あの時、自分にとっての“くますけ”は何だったんだろうか?」と


ホラーとファンタジー

この小説で欠かせないのはホラーとしての一面です。

物語の中で、くますけと成美の関係が原因で、周囲に事故や不幸が起こるように見える場面があります。

「もしかしてくますけには呪いの力があるのか?」と成美も私も一瞬ゾワッとします。

けれどもその怖さは最後まで徹底されることはありません。

恐怖に押しつぶされそうになる前に、どこかで幻想的な優しさがある。

この“不安と安心”こそがこの作品の味わいだと思います。

夢を見ているような不思議さ、悪夢の中に差し込み一筋の光。

ホラー小説として読むと物足りないかもしれませんが、ファンタジーとして読むと救いの物語になると思いました。

物語を通して一番悲しいのは、成美の心の痛みです。

「私が呪ったから事故が起きてしまったのかもしれない」

「私がくますけを離さないからパパとママが不幸になったのかもしれない」

たった10歳の女の子が抱くにはかなり重い罪悪感で、孤独も半端ないです。

でも私にも心当たりがあります。

“もしもあの時ああしていれば・・・“

“自分のせいで相手を傷つけた”

こうした後悔や不安を一度も味わったことのない人はいないと思いますが、だからこそ成美の心に共鳴し強く引き込まれます。


裕子おばさん

成美を支える大きな存在が裕子おばさんです。

両親を失った成美にとって裕子さんとの関わりは大きな救いでした。

裕子さんは血のつながりに捕らわれない“心の家族”です。

彼女の存在は、この物語が“絶望だけの話”で終わらない為の大切な支柱となっています。

裕子さんの言葉や態度は私にとっても救いになりました。

「ぬいぐるみを抱いていてもいい」

「それがあなたにとって必要ならそれでいい」

そう言ってくれる大人の存在は成美にとってとても心強かったと思います。


読者への問いかけ

『くますけと一緒に』を読み終えて、いくつか頭をよぎりました。

・孤独に押しつぶされそうになった時、何を拠り所にするか

・血のつながりがなくても本当の家族になれるのか

・大人になっても自分にとっての“くますけ”を持っていていいのか

簡単に答えは出ませんでしたが、自分なりに考えることが大事なんだと思いました。


読後の余韻

最後に残るのは恐怖ではなく不思議な安心感。

成美の「くますけは良い子なんだ」という言葉が呪文のように繰り返され、心に残りました。

それには愛情と依存、そして解放への願いが込められているように思えます。

だから読後はそんなに暗くありません。

むしろ「誰にでも支えになるものが必要なんだよな」と気づかせてくれます。


まとめ

つまりこの作品は

・見た目の可愛さと内面の重さにドン引き、

・子供時代の感覚を思い出し、

・ホラーとファンタジーの味わいを描いていて、

・孤独と罪悪感を抱える10歳の女の子の姿がリアルで、

・最終的には救いと希望を残してくれる物語です。

読む人にとって受け取り方が違うと思います。

でも誰もが自分にとっての“くますけ”を探してしまうと思います。


あなたにとっての“くますけ”は何ですか?


こんにちは、ボアと申します。

もし「面白い!」と思われたら

感想などいただけると参考になりますので

嬉しいです。

よろしくお願いします。

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