9.『ことり屋おけい探鳥双紙』
『ことり屋おけい探鳥双紙』
出版社:朝日新聞出版
梶よう子 (著)
今日は梶陽子さんの『ことり屋おけい探鳥双紙』を紹介します。
江戸の町に、小さな鳥の声が響く店があります。
その名は「ことり屋」。
店先には、色鮮やかな文鳥、賑やかな九官鳥、
そして目を引く珍しい鳥たち。
この店を切り盛りするのは、おけいという女性。
夫は幻の鳥を探す旅に出たまま、三年もの間戻ってきません。
それでもおけいは、店を守り、夫の帰りを信じて日々を送ります。
ことり屋には、今日も不思議な客がやってきます。
鳥に興味がないのに何羽も買い続ける男、
壊れかけた鳥かごを抱えた老人、
そして、鳥を介して何かを伝えようとする人々…。
おけいは、ただ鳥を売るだけではありません。
客たちの心の奥にある寂しさや喜びに触れ、
時にはそっと背中を押し、時には寄り添う存在となります。
この物語には、派手な事件はありません。
あるのは、日常の中で静かに紡がれる、小さな謎と人情の物語。
鳥たちはその中心で、人と人を結びつける役目を果たします。
九官鳥の月丸は、時に場を和ませ、
時に、忘れていた大切な記憶を呼び覚ます存在となります。
そして、おけいと同心・永瀬との心の距離も、
物語が進むにつれて、少しずつ変化していきます。
読み進めるほどに、胸の奥に広がっていくのは、
切なさと温もりが混ざり合う、不思議な感覚。
悲しい出来事も、優しい人の手によって、
やがて柔らかな記憶に変わっていきます。
『ことり屋おけい探鳥双紙』は、
江戸という時代を背景に、人の想いと鳥の存在が重なり合う、
静かで深い人情物語です。
ページを閉じた後も、羽ばたく音と人の声が、
心の中にいつまでも響き続けます。
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