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たまには本を読んでみない?(小説紹介)  作者: ボアの本棚


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78/84

78.『佐藤の告白』

今回紹介するのはこちら。


藤紘 作 

中島花野 絵  

集英社 出版 


『佐藤の告白』です。


この作品は、夏休み明けの中学校で、「佐藤君が鈴木君に告白したらしい」という噂が広まるところから始まる青春群像劇です。


たった一つの「告白」の噂が、学校という狭い世界の中でどんどん広がり、それぞれの登場人物が抱えていた思いや悩みまで浮かび上がっていきます。


まず印象に残ったのが、佐藤君に片想いをしている、ひなのです。


ひなのは佐藤君のことが好きだからこそ、彼が鈴木君に告白したという話を聞いて、鈴木君や、佐藤君に嫌がらせをする男子たちに怒りを覚えます。


「佐藤君を守れるくらい強くなりたい」と考え、なんと「屈強なゴリラになりたい」とまで思ってしまう。


このちょっと笑ってしまう発想が、この作品の大きな魅力だと思いました。


ただ、ひなのの行動を追っていると、単純に「佐藤君が好きだから」というだけではなく、好きな人を傷つけるものから守りたいという、まっすぐな優しさが見えてきます。


一方、鈴木君の担任であるオカジュンは、まったく違う悩みを抱えています。


彼は学生時代にいじめられた経験があり、その過去から、生徒たちの問題に深く踏み込むことを避け、「生徒に好かれる先生」を演じていました。


ところが、佐藤君の告白をめぐる騒動によって、そんな「事なかれ主義」ではいられなくなってしまう。


ここが、とてもリアルだと感じました。


教師だから正しい行動ができるわけではなく、大人だって怖いし、傷ついた過去に縛られることもある。


そんなオカジュンの姿が描かれていることで、この物語は単なる「中学生の恋愛」の話ではなくなっています。


さらに心に残ったのが、佐藤君のお母さんです。


学校から呼び出された母親は、息子が男の子を好きになったのは、自分たち夫婦の家庭環境が原因なのではないかと悩んでしまいます。


息子を心配する気持ちがあるからこそ、自分自身を責めてしまう。


この姿には、親が子どものことを理解したいと思うほど、かえって迷ってしまうこともあるのだと感じました。


そして物語の中で特に面白いのが、「告白」という一つの出来事を、ひなの、オカジュン、母親、そして鈴木君、それぞれの視点から見せていく構成です。


同じ出来事でも、立場が変われば見え方はまったく違う。


誰かにとっては恋愛の問題でも、別の誰かにとっては過去のトラウマだったり、親としての責任だったり、あるいは自分自身と向き合うきっかけだったりする。


だからこそ、読み進めるほどに「人の気持ちは、外から見ただけでは分からない」と感じさせられました。


そして、この作品で一番好きだったのは、登場人物たちがみんな完璧ではないところです。


ひなのは感情的になるし、オカジュンは逃げてしまうし、母親も考えすぎてしまう。


でも、それぞれが悩みながら、自分なりに相手のことを考えて行動している。


その不器用さが、とても愛おしく感じられました。


『佐藤の告白』は、男子生徒から男子生徒への告白をきっかけに、恋愛だけではなく、友情、家族、学校、いじめ、そして「自分らしく生きること」まで描いた作品です。


笑ってしまう場面がある一方で、胸が締めつけられるような切なさもある。


そして読み終えたあとには、登場人物たちがそれぞれ抱えていた「言えなかったこと」や「分かってほしかったこと」について、もう一度考えたくなる作品でした。


青春小説が好きな方はもちろん、複数の登場人物の視点から、一つの出来事を掘り下げていく物語が好きな方にも、ぜひおすすめしたい一冊です。





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