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たまには本を読んでみない?(小説紹介)  作者: ボアの本棚


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75/84

75.『息子のボーイフレンド』


今回紹介するのはこちらら。


秋吉理香子さん作

双葉社 出版


『息子のボーイフレンド』です。


この作品は、高校二年生の息子・聖将から「自分はゲイだ」とカミングアウトされた母親、杉山莉緒を中心に、息子とその恋人、そして家族や友人たちの姿を描いた物語です。


テーマだけを見ると、とても重い作品に思えますが、実際に読んでみると、かなりコミカルでテンポがよく、思わず笑ってしまう場面もたくさんあります。


一方で、登場人物たちの心の葛藤が丁寧に描かれていて、読み終わったあとには「家族にとっての幸せって何だろう」と考えさせられる作品でした。


特に印象に残ったのが、母親の莉緒です。


莉緒は、実は昔からBLが好きだった女性です。


そのため、息子からカミングアウトされたとき、「自分は理解があるはず」と思っていたのかもしれません。


ところが、いざ自分の息子のこととなると、頭で考えていたようにはいきません。


息子の恋愛を心配し、動揺し、あれこれ考えすぎてしまう莉緒。


その姿は、少しおせっかいではあるものの、息子を大切に思っている母親だからこその行動にも見えました。


そして、聖将の恋人である雄哉も、とても魅力的な人物です。


雄哉は大学生で、母親を早くに亡くし、祖母の介護をしながら生活しています。それでも自分の置かれた環境に負けず、しっかりと生きている青年です。


聖将との恋愛も、単なる「同性同士の恋愛」としてではなく、お互いを大切に思う二人の恋として描かれています。


二人の関係を見ていると、「好きな人と一緒にいたい」という気持ちは、異性同士でも同性同士でも変わらないのだと感じました。


そして、もう一人、非常に印象的なのが父親の稲男です。


稲男は、仕事ではLGBTへの理解を広める立場にいる人物です。ところが、息子のこととなると、簡単には受け入れられません。


「他人のことなら理解できる。でも、自分の息子となると話は別」


そんな稲男の葛藤が、この作品の重要な部分だと思いました。


これは、単純に「理解がある人」と「差別する人」に分けられる話ではありません。


頭では分かっていても、愛する家族のことになると不安になってしまう。


息子に苦労してほしくない。

傷ついてほしくない。

できるだけ幸せになってほしい。


そんな親としての気持ちが、時には本人を傷つける行動につながってしまう。


その矛盾が、とてもリアルに感じられました。


この作品を読んで一番考えさせられたのは、「幸せの形を誰が決めるのか」ということです。


結婚すること。

子どもを持つこと。

異性と恋愛すること。


世の中では、そうしたものが「普通の幸せ」として語られることがあります。


でも、本当に大切なのは、その人自身がどんな人生を幸せだと思うかではないでしょうか。


莉緒や稲男、聖将、雄哉。それぞれが悩み、間違えたり、考え直したりしながら、家族として相手と向き合っていきます。


だからこそ、この作品はLGBTをテーマにした物語でありながら、同時に「家族とは何か」「人を理解するとはどういうことか」を描いた物語でもあると感じました。


重いテーマを扱いながら、笑えて、最後には温かい気持ちになれる。


『息子のボーイフレンド』は、恋愛だけではなく、家族のあり方についても考えさせてくれる一冊でした。





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