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たまには本を読んでみない?(小説紹介)  作者: ボアの本棚


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74/84

74.『王妃の帰還』


今回紹介するのはこちら。


柚木麻子さん作

実業之日本社 出版


『王妃の帰還』です。


舞台は、カトリック系の女子校、聖鏡女学園中等部。主人公は、範子、通称「ノリスケ」です。


ノリスケは、チヨジ、スーさん、リンダさんという仲間たちと、目立たないながらも穏やかな学校生活を送っていました。


ところが、そんな日常を大きく変えてしまう出来事が起こります。


クラスの頂点に君臨していた美少女、滝沢さん。

ノリスケは、彼女を心の中で「王妃」と呼んでいました。


ところが、ある腕時計事件をきっかけに、滝沢さんはそれまで所属していた「姫グループ」から追放されてしまいます。


そして、なぜかノリスケたちの地味なグループにやって来ることに。


憧れの「王妃」が自分たちの仲間になったのだから、最初は嬉しい……と思いきや、そう簡単にはいきません。


滝沢さんは、これまでの立場のまま振る舞い、ノリスケたちに対してもわがまま放題。


せっかく仲良く平和に過ごしていた四人の関係まで、少しずつ崩れていってしまいます。


ここで面白いのが、ノリスケたちが「滝沢さんなんて追い出してしまおう」とは考えないところです。


むしろ彼女を元の姫グループに戻して、以前の平穏な生活を取り戻そうとします。


つまり、「王妃帰還作戦」を始めるわけです。


ノリスケは一見すると、おとなしくて周囲に合わせている女の子に見えます。


でも、作者の柚木麻子さんによると、実はノリスケはかなり過激な性格で、最終的には自分から行動を起こす「革命家」のような人物として描かれています。


この部分が、私はとても面白いと思いました。


教室の中で目立たないようにしていたノリスケが、物語が進むにつれて、自分の考えで動き始める。


一方の滝沢さんも、最初は単純な「嫌な女の子」に見えます。


人を見下したり、わがままを言ったり、周囲を自分の思い通りに動かそうとしたりする。


でも、物語を読んでいくと、彼女にも彼女なりの不安や苦しさがあることが分かってきます。


教室の頂点に立っているからこそ、その場所から落ちることへの恐怖もある。


そして、周囲から期待される「王妃」であり続けなければならないプレッシャーも抱えているんです。


だからこそ、この作品は「滝沢さんが悪い」「ノリスケたちが正しい」という単純な話ではありません。


それぞれの少女が、自分の立場から必死に生きている。


その姿が、とてもリアルに感じられました。


特に印象に残ったのは、物語の終盤です。


この作品では、誰か一人を完全な悪者にして、みんなで責めれば問題が解決する、という結末にはなりません。


作者自身も、正論で誰かを打ち負かしたり、一人にすべての責任を押しつけたりしても、問題は解決しないという考えを語っています。


そこに、この作品の優しさがあるように思いました。


中学生にとって、教室は世界のすべてのように感じられる場所です。


どのグループにいるのか。

誰と一緒にいるのか。

誰から嫌われているのか。


そんなことが、自分の人生そのもののように思えてしまう。


でも、本当は教室の外にはもっと広い世界がある。


今は「地味な子」でも、「王妃」でも、その先にはいくらでも違う未来がある。


『王妃の帰還』は、そんな少女たちの可能性を描いた青春小説なのだと思います。


最初は、女子校の中で繰り広げられる「王妃の座」をめぐる騒動として楽しめます。


でも読み終わってみると、そこには、友達とは何なのか、自分らしく生きるとはどういうことなのか、そして、人を一つのイメージだけで判断してはいけないというメッセージが込められているように感じました。


テンポがよく、登場人物たちの関係が次々と変化していくので、とても読みやすい作品です。


そして何より、ノリスケたちが起こす「王妃帰還作戦」がどうなっていくのか。


ぜひ実際に読んで、少女たちの小さな「革命」の結末を見届けてほしい一冊です。





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