6.『かわらばん屋の娘』
『かわらばん屋の娘』
出版社:くもん出版
森川 成美 (著), 伊野 孝行 (イラスト)
今回はこちら、森川成美さんの「かわらばん屋の娘」を紹介します。
この本は『真実を伝える事』とはどういうことなのかを考えさせられるお話でした。
時代は1861年の江戸時代。
黒船来航から7・8年後の時代です。
主人公は吟という13歳の女の子です。
彼女は母親を亡くし、家の事と弟の面倒を見ながら父親のからばん屋の仕事を絵描きという形で手伝っていました。
今までは嘘に少し真実を混ぜて面白おかしく記事にして売っていましたが、中盤での父親の失踪、少年侍との出会い、そして終盤でのある出来事をきっかけに、真実を伝えるとはどういうことなのかを考え、ありのままを伝える決意をします。
『真実を伝える』とはどういうことだろうか?
かわらばんは現在でいう新聞記者のようなものですが、当時は事実報道は幕府に禁止されていました。
民は何も知らなくていい、黙って幕府に従っていればいい、文句が面倒くさいという理由です。
見つかれば処刑されます。
なので嘘に本当のことを混ぜたり、化物語にして『ああ、あの話だな』と分かる人には分かるように工夫して作って売っていました。
「何も知らなければ考えることもできない」ある登場人物のセリフですが、このセリフを見たとき何故かわかりませんが、現在で問題になった東日本大震災の動物園を脱走したライオンの話を思い出しました。
実際は嘘でしたがSNSを見たほとんどの人々はこの嘘を信じました。
世の中で起きたことを知ったところで、それが真実かどうか見極められず疑うこともしなければただ踊らされるだけで、だったら幕府の言うように知らない方が幸せなんじゃないかとも思いました。
実際、起こった出来事を見て、聞いて、考えて、行動した結果が攘夷だ佐幕だの戦争だったわけですから。
攘夷派は、この国には外国人が多すぎる。幕府に任せて置いたら国が終わる。外国人は追放すべきだの考えの人たちで、佐幕派はいや幕府に従うべきだの考えの人達らしいですが、これは現在の難民・移民・外国人観光客に対する問題と政府の対応にそっくりだなと思いました。
難民・移民問題は世界中で起きていますが、日本も例外ではないですよね。
今まで安全で治安のよかった国がガラリと犯罪率が増え、治安の悪化が目立つ危険な国になっていたりします。
そう考えると、もし私が幕末に生まれていたら攘夷派に入っていたかもしれません。
そのうち現在の日本でも外国人の擁護派と追放派が戦争する日が来るかもしれませんね。
SNSに踊らされているだけかもしれませんけどね。
主人公の吟はコロリで母を亡くし、五歳の弟の世話、家事、父親の仕事の手伝いなど学校にも行けず働いています。
しかし突然父親が失踪したため、しかたなくかわらばん屋を引き継ぎます。
そしてある悩みを抱えた少年侍を助け、仕事を手伝わせることになるのですが、顧客に裏切られ支払いを拒否されます。どう生きたらいいかわからないまま一生懸命頑張ってきたのに報われず床を叩き泣いてしまいます。
その時少年侍に諭され、これからも頑張って生きていくことにするのです。
私も以前はすべて放って楽になりたいと一人泣いたことがありますが、吟の言う通り自分で自分を楽にするのは難しく、家族を残していけないと頑張ることにしました。
吟のセリフには共感できます。
終盤で父親の正体を知り、大切な人の身に起きた出来事を切っ掛けに、『真実を伝える』ということはどういうことなのかを考え、嘘でも何でもない、処刑されてもいい、実際に目の前で起きた事をありのままに伝えたいと答えを出します。
吟は漢字が書けません。
ひらがなで文章も拙いですが、彼女の記事は人々に色々なことを考えさせ、影響を与える事でしょう。
物事を伝えるという行為は、誰かの人生を変えるものになるかもしれません。
禁止された事の中で工夫して真実を伝え、受け取った側はこれは真実か、真実ならどう行動するかを考える。
そうして攘夷だ佐幕だの戦争に発展したりする。
かといって何も知らなければただの生きる人形みたいな物になってしまうと思うし、国民全員が人形だったら日本は終わりですよね。
そう考えると幕末のあの戦争は必要な戦いだったのかもしれませんね。
初めは新聞屋の日常話かと思っていました。
嘘を報道するなんてどうしようもない親父だなと思っていましたが、処刑されるほど幕府に疎まれていたと知って、それではしょうがないよなと思いました。
そんな中で処刑されてもいいと覚悟を決めて真実を伝えようと思った吟は記者の鑑かもしれません。
五歳の弟も一緒に処刑されるかもしれないのに・・・。
この本はページ数もそんなに多くはなく、一気に読めます。
長屋の大家に植木屋の一家、版画刷りの爺さん。
みんなの優しさに心が温かいです。
長々としゃべりましたが、ふっと笑えるところやちょっと泣けるところもあって凄く面白い本だと思いました。
皆さんも図書館や書店で見かけたときはぜひ手に取ってみてください。
こんにちは、ボアと申します。
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