58.『そこにいるのに』
『そこにいるのに』
似鳥鶏(著)
河出書房新社
こんにちは。
今回は似鳥鶏さんの『そこにいるのに』をご紹介します。
この小説はこんな人に特に向いていると思います。
・“じわじわ怖い話”が好きな人
突然驚かせるタイプではなく、日常に違和感が入り込んでくる怖さが中心。読後にあとから効いてくるタイプです。
・考察するのが好きな人
全部を説明し切らない終わり方が多いので、「結局どういうことだったんだろう?」と考えるのが楽しい作品です。
・連作短編や都市伝説っぽい雰囲気が好きな人
話ごとに独立しているようで、どこか繋がっている感じがあります。不思議な世界観を少しずつ味わうタイプ。
・静かなホラーが好きな人
血みどろの恐怖というより、“そこに何かいるかもしれない”という不安感を楽しむ作品です。
・「六年前の日記」や「二股の道にいる」みたいな、後味が残る話が好きな人
読後にスッキリするというより、頭の片隅にずっと残るような感覚があります。
逆に、すべての謎がきっちり解決するミステリーを求めている人や、テンポの速いホラーを期待すると少し合わないかもしれません。
この作品、まず冒頭の入り方がすごく上手いです。
最初から不穏な空気が漂っていて、「これは何かがおかしいぞ」と読者を一気に物語へ引き込んできます。
派手なホラーというより、日常の中にじわじわ入り込んでくる怖さがあって、気づいたら夢中で読んでいました。
読んでいて思ったのが、「これって連作短編なのかな?」という不思議な構成。
それぞれの話は独立して読めるんですが、どこか繋がっているような感覚もある。
世界観がゆるく共有されている感じがして、その曖昧さが作品の不気味さを強めている気がしました。
特に印象的だったのは、どの話も“その後”をはっきり描かないところ。
「結局あれは何だったの?」とか、「この先どうなるの?」と気になる終わり方をするので、読み終わった後もしばらく頭に残ります。
全部説明しないからこそ、読者の想像が広がるタイプの怖さでした。
あと面白かったのが、主人公の名前が出てこないこと。
名前が無いことで、読者自身がその場にいるような感覚が強くなるんですよね。
「もしかしたら自分の周りでも起きるかもしれない」というリアルさがありました。
個人的に特に好きだったのは、一話目の「六年前の日記」と「二股の道にいる」。
「六年前の日記」は、じわじわ真相に近づいていく感じが不気味で、読み進めるほど怖くなっていく話。
「二股の道にいる」は、日常と怪異の境界が曖昧で、静かなのに妙に印象に残りました。
どちらも“説明しすぎない怖さ”があって、この作品らしさを強く感じたエピソードでした。
全体的には、派手な驚かせ方ではなく、読後にじわっと残る不安感を楽しむタイプのホラー・ミステリー。
余韻のある話や、考察したくなる作品が好きな人にはかなり合うと思います。
気になった方はぜひ読んでみてください。




