アラブ国
「池上」がライフル スコープで見ている人物は、この地域には似つかわしい人種だった。アジア人…しかもどうやら中国人らしい。
「池上」が今いる村は、世界中のメディアを賑わしている「アラブ国」を名乗る連中で一杯だった。他のアラブ系の国にいるタリバンよりも今最も「タチ」が悪い。だがそんなタチ悪も考え様によっては、「池上」には都合良く使えるのだった。「池上」が村に入るなりアラブ国が占領すると、アジア系の戦闘員を捕まえ、軽く拷問して情報を聞き出した。そして、その戦闘員になりすましていたのだった。「池上」も驚いたのだが、「アラブ国」の先進隊のほとんどがアラブ系以外の「外人部隊」だったのだ。「池上」も最初は予期せぬ占領で脱出するつもりだったが、たまたま見かけたアジア系戦闘員を見てひらめいたのだった。
拷問した戦闘員いわく、「部隊は外国人の寄せ集めで、ろくに訓練もせずに最前線に送られた。みんな自国の言葉か英語ぐらいしか話せなく、意思疎通は全くと言っていいほどできていない。ただ、歯向かうヤツは撃ち殺せと命じられた。身分証や金目な物は取り上げられ、ここに来たんだ。」と言っていたので「成りすます」には好都合だなと判断した。
チョット予定を変更せざるえなく、用意したドラグノフとRPGは使えない。ただAKを撃っても問題ない状況になった。村のあちらこちらでは、AKの銃声が頻繁に聞こえていた。「アラブ国」の戦闘員が「仕事」をしているのだ。
話は冒頭に戻し、「池上」がライフル スコープで見ている人物は、確かに「中国人」だった。「池上」は、「見たような顔だが確信が無いな…多分、人民解放軍の特務機関だと思うが…な」と呟いて、はたと思い出した。「そう言えばメールの顔写真が2枚あったな…もう一枚があちらさんのご要望のだっけ」とスマートフォンを取り出し確認するが、写っている顔は横顔でピンボケだった。「あぁ、そう言えば顔認証ソフトにかければ…と、ん〜、ライフルスコープにスマートフォンのカメラを近づけてもピントが合わない…じゃ、直接でズームでどうだ!…と、おぉ!認証した(笑)随分小さく写っていたが、ちゃんと認証できるもんだね〜」と「池上」は子供の様にはしゃいだ。
「池上」は、鼻歌混じりに斜め掛けしたポーチから、砂が7割ほど入った布袋と、持参した30cm近くあるAK47用のサイレンサーを取り出した。このサイレンサーは、AK47の銃口をそのまま差し込み、45°右に回すだけでロックされる優れモノだった。「池上」はターゲットの二人が居る建物に対し通りを挟んだ建物の屋上にいた。「場所、時刻、人物…オールクリア…」「池上」は深く息をして息を止めた…「カシュ!カシュ!」乾いた金属音が二つすると向かいの建物の部屋には死体が二つ転がった。通りを歩いている人は誰一人足を止めない。いつもならこの時点で「池上」は早速撤収なのだが、今回はさらに一発づつ追加で「死体」に撃った。しかも弾は全て体に撃ち込んでいた。頭に一発で殺していると「暗殺」だとハッキリしてしまう。体ならば「戦闘」もしくは「襲撃」で死んだ様に少しでもする為だった。
だが、二時間後「池上」は窮地に立っていた。




