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720時間の弾丸  作者: 一条一
13/23

傭兵

先頭車両がガレージを出て行き、2台目に大臣の側近が乗ったランドローバーが続き、3台目が装甲を施したレンジローバー、しんがりは大臣を乗せたランドクルーザーだった。「池上」が操縦するレンジローバーは、エンジンの始動から遠隔操作が出来、先頭車両に続いて走る姿も非常にスムーズだった。「池上」は少しでも時間があれば基地内を遠隔走行して練習していて、それは夜間でさえ行われていた。ただ一つ難点があったが、それは街中で車両間が空いてしまい、モニターでの操作が続くと乗り物酔いしてしまうことだった。これには「池上」も閉口し、モニターの大きさに改善が必要だとこぼした。

「JP、やはりあのポイントで狙ってきますかね?」とシェルパが聞くと、「池上」も「そうだな、考えられる場所はあのポイントで、市内に入る所か、出る所かの二カ所だろう。車のフロントガラスの角度から計算すれば、20m前後の高さからの狙撃が最適だから、やはりそのポイントだろう」「それに、散々デモンストレーションして走り回ったから、RPGなんかも来ると思うぜ、それでも止まらなかったら、やはり車での強行手段でくるだろうな。」と言うと、大臣が「RPGて、ロケット砲のことか?暗殺犯は何人もいるのか?」と聞いてきた。「池上」は、「ええ、暗殺犯は複数いると思います、恐らく狙撃で上手くいかなければRPGを使って車両を狙ってきて、それでも止まらなかったら相手も車で強行手段…でしょう。」「ただ、相手もバカじゃないでしょうから、いきなり初日から狙わないでしょう。私の予想では、3日目辺りが実行かと」と説明した。

「池上」の予想通り、初日のこの日は何も無く、怪しい車両も見られなかった。

会議は、バクダット市内のホテルが予定されていたが、自爆テロなどを警戒して空港の空軍基地に変更していた。その分30分程移動時間が伸び危険性も上がっていた。

その後、二日目も何も無く過ぎたが、三日目の朝、「池上」が予想したように変化が起きた。市内の三カ所で爆弾テロが起きたのだ。爆弾の規模は小さかったが、明らかにこちらの走行ルートを意識した場所だった。「池上」は少し考え、「本日の会議は中止にして頂きたいが、そんな訳にもいかない様ですので、スンニ派の代表に大臣宅までおいで願おう」と言い、基地に予定変更を連絡し、スンニ派の代表を大臣宅に連れてくる変更プランを暗号方式で伝えた。

大臣は「池上」が予想した通りになってきたのに感心し、ワガママも言わずに提案を飲んだ。

シェルパが、「さぁ、我々は帰りますか」と言うと、「池上」が「何を言っているんだ、敵を倒すチャンスじゃないか。相手は爆弾テロで通れるルートを誘導してきている、じぁあ我々はそれに乗ってやろうじゃないか」とサラリと言ったからシェルパ達は驚いた。シェルパ達は当初、要人警護とだけ聞いていたし、イラクに来てからは基本、警備が仕事だった。それが、「池上」がチャンスとばかりに「攻め」に転じると言うから少し戸惑いながらも、「マジにやるんですか?ん〜、じぁあ気合い入れますか!」と何やら(面白くなってきた)と顏がニヤついていた。

急遽決まった作戦を大臣の側近だけに伝え、ランドローバーを借り、恐らくこの後起こるであろう襲撃に備え、給弾したマガジンを出来る限り用意した。「池上」はシェルパ達に敵が罠をかけてくる場所をあえて通ることを伝え、襲撃に際しての対応を細かく指示した。

10分後防弾ベストやヘルメット等、フル装備で大臣宅を出発した。走りだして25分後最初の襲撃されるであろうポイントにさしかかった。「池上」の予想通り、レンジローバーのフロントガラスに着弾があった。しかし、本来のフロントガラスの上に角度を変えて装備していたもう一枚の防弾ガラスを貫いた50BMG弾は、二枚目の防弾ガラスに弾かれ軽くヒビをつけただけだった。その際一枚目の防弾ガラスが衝撃で外れてしまった。「池上」は無線のチャンネルを一方通信にして、指示を出し続け始めた。「ようし、来たぞ!全車蛇行運転して回避運動しろ!まだ、来るぞ」「シェルパB、見えたか?やはり予想したビルだ!6階か7階にいるぞ」と「池上」が言っている後方で、バイクから降りたシェルパBが照準を合わせ始めた。しかし、この間にも敵のスナイパーは1〜2秒間隔で撃ってくる。「ありゃバレットのセミオートだな」と「池上」が呟くと後方でシェルパBの射撃が始まった。シェルパBは、SR-25をセミオートとはいえドンドン連射して援護に入った。援護射撃のおかげもあり、スナイパーのビルから100m以内に入りバレットによる射撃も収まった。スナイパーから死角になる90度の地点で、「シェルパC、頼むぞ!」と「池上」が言うや否や先頭車両からサイレンサー付きのHK416を構えたシェルパCが素早く降り、ビルに走り寄って行った。車列はそのまま走り、ビルから50mほど過ぎた時、ビルの非常階段の三階部分からRPGが飛んできた。RPGは正確にレンジローバーに向かって飛来し、屋根に当たったが、まるで水切り遊びで水面に投げた石の様に弾いてしまった。「池上」は「シェルパC、RPGの狙撃手は三階だ」と叫びレンジローバーを操作し続けた。RPGの狙撃手は第二弾を装填すると、150m程先を走る車列に照準を合わせた。そしてトリガーに指をかけた時、非常階段に出る扉が開きシェルパCがHK416で狙撃手を射殺した。シェルパCは倒れた狙撃手に追加で二発撃ち込むとサッサとバレットの狙撃手を片付けに向かい、6階の最初とは反対の窓で車列の後ろ姿に照準を合わせていた男を射殺した。そしてとどめの二発を撃ち込むと、死んだ男の顏写真を撮り、非常階段で撃った男の顏も撮っていた。

銃撃が止んだ後も「池上」達の車列は、蛇行運転こそ止めたがアクセルは踏みっぱなしだった。市内を抜け、空港までの道に入ると、一台のトラックが追ってきた。トラックの荷台に乗っている男が三人並んでAK47を撃ち始めた。ランドクルーザーは民生車両としてはハイレベルな防弾ガラスに変えてあるため、後方ガラスに当たっても細かいヒビが入る程度だった。すると一人の男がおもむろにRPGを取り出した。「池上」は「おおっと、いけないぞ!」と言いながら、レンジローバーを道から外して砂漠へ走らせると、トラックも同じように砂漠に進路を変えた。「池上」は器用にレンジローバーを操りながら、M2重機関銃の用意に入った。すると運転をしているシェルパに「M2を撃つぞ!Shoot!」と言うと、後方のトラックに向かい、M2重機関銃を連射した。徹甲弾を連射で撃ち込まれたトラックは、逃げる間も無くエンジンを撃たれ、運転席も撃たれ、その後ろにいた男達も当然の様に撃たれた。荷台にいた男が構えたRPGが撃たれた衝撃で発射され、むなしく遥か彼方へ飛んで行った。

炎上するトラックの乗員の死亡を確認をしていると、バイクに二人乗りした、シェルパBとCが追いついてきた。シェルパBは、「やあ、やりましたね!バッチリ計画通りだ」と

意気揚々に言った。「池上」は、「どうだった?写真は撮ったかい?」と尋ねると、シェルパCはカメラを「池上」に渡しながら「やっぱり白人でしたよ。でも、トラックの乗員は中東系ですね」と報告した。「池上」はカメラのモニターを見ながら「見覚えは有るけど名前は知らないな、彼らも雇われた傭兵だな…」とこぼした。

「しかし、シェルパCは早かったな!三階で一人、そこから六階まで上がって一人だろ?心肺能力が高いね〜」と「池上」は賞賛した。

バクダットの治安警察がそれぞれの現場に着いた頃には、「池上」達は基地に帰り着いていて、民間軍事会社に提出する報告書を書き始めていた。

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