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720時間の弾丸  作者: 一条一
12/23

会議が再開される当日、「池上」達はバクダット市内から30分ほど離れた地区にいた。ここはかつてフセイン政権時代の大臣クラスが住んでいた場所であり、大きな屋敷が軒を連ね、中には地下室やシェルターまである家もあった。シーア派の代表は、この地区に住んでいるわけでは無く、会議の期間に身辺警護がしやすい様に屋敷が充てがわれていた。事実、「池上」達がシーア派の代表が住んでいる屋敷までたどり着くまでに、厳重な検問所が三カ所もあり、最後の検問所に至っては爆発物専門に訓練された警察犬とそのハンドラーまでいた。

「池上」は前日にシーア派の代表に会っていて、警護に付く際のお願いと注意を説明していたが、シェルパの話しでは、「この代表は少々気難しくて、中東の地位の高い男に有りがちな”面子”をたてたいタイプです」と聞いていた。ただ、それ以外はとても温厚で話が分かる人柄であった。そういった所が交渉の代表に選ばれたポイントであろう。

このシーア派の代表は、シーア派の中の最大部族の王であり、シーア派のトップ3に入っていた。政治的な位置からすれば大臣クラスであろうから、たんに「代表」と呼ばれて少々不服顏だったので、「池上」は「これから我々警護は、大臣とお呼びさせて頂きます」と言うと、代表は手を広げ「いい響きだね」と満足気な顏で「池上」にそれで頼むよと言った。「しかし、貴殿が言った先ほどの話で、私の乗る車が明日からは変わるとかで、少々不安なのだが大丈夫なのか?」と大臣は尋ねると、「池上」は、「大臣には少々御苦労をかけますが、これも大臣のお命をお守りする為、何卒ご理解頂きますよう」と言い、「出来ればお命を狙う輩をせん滅してみたいと思います」とまで言っていた。

大臣の家に着き大臣が出てくるまでの間、シェルパのリーダーは「池上」に質問した。「今回用意されていた銃器ですが、なかなか豪勢ですね、空軍にしてはこだわりがあるけど…」と言うと「池上」は、「ああ、あれらは陸軍のデルタが撤退する時に置いていったらしいんだ、たまたま顏を知っているAFSOC(空軍特殊部隊)の指揮官がいて、おねだりしたら自由にどうぞってね」と言うと「池上」は手を日本人のよくやる「ドーゾドーゾ」のジェスチャーをして見せた。「池上」がアメリカの民間軍事会社から持って来た銃器は、M4や自分のL96などで、今回は現地に良いのが有ったから使っちゃうつもりであった。AFSOCから調達した銃器は、SR-25にHK416、そしてM2重機関銃だった。「しかし、SR-25やHK416なんて置いて行きますかね?勿体無い」とシェルパが聞くと「池上」は、「デルタやシールズなんかは、最新の武器がメーカーからテストしてくれって届くもんだから、あまり銃器に執着が無いんだよ、だから本国に帰れば新品があるのが分かっているから置いて行くんだろうな」と呆れ顏で笑ってみせた。

時間より5分遅れて大臣が出てきて、大臣がレンジローバーに歩み寄ると「池上」が、「大臣、こちらの車にどうぞ」とランドクルーザーに誘導した。大臣は面食らい「コレに乗るのか?コレは警護用じゃないのか?」と狼狽した。「池上」がまあまあ、大丈夫ですからとランドクルーザーの後部ドアを開けるとさらに大臣は面食らい、「なんだ!こ、これは?」と指差した。大臣の指差した先には、ランドクルーザーの後部に後ろ向きに設置されたM2重機関銃があった。ランドクルーザーに大臣が乗ると「池上」も助手席に乗り、大臣の側近は、普段から乗っている古いランドローバーにのった。これで車は4台になったが、大臣が「ん?私が乗ろうとしたあの装甲車は誰が乗っているのか?」と前席にいる「池上」に尋ねた。「池上」は「誰も乗っていません」と答えると「これで」と手に持った物を見せた。「池上」の持っていた物は、いわゆるラジコンに使う「プロポ」と呼ばれる物を大きくしたものだった。大臣は、興味津々で身を乗り出して「池上」の手元に注目した。「これであの車を操縦するのか?なんとも面白い物だな!そうか!あの車は囮なんだな!いや、面白い!外国人は面白い物だな」と興奮した。

「池上」がアメリカから持って来たレンジローバーは遠隔操作が出来るもので、車が見えなくてもカメラが搭載されており、手元のプロポから映像が出力されモニターに映し出される仕組みだった。とココまでは有りがちなものだが、この車はカメラは全部で6台付いており、そのうち4台が前方だった。それに連動してモニターも4台あり、ほぼ180度を映し出していた。本来は偵察用に開発されたもので、軍事衛星や無人偵察機にもリンク出来るが、今回はそれは無い。

「しかし、乗らないならあんなに装甲を付ける必要は無いんじゃないか?」と大臣が言うと、「池上」は「いかにも乗っていそうですし、中のカメラや操縦装置が攻撃で壊れないようにしたいですからね」と答えた。「それに…」と続けた時、ガレージの門が開き先頭車両のシェルパから「出発します」と無線が入った。


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