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第88話 Beginner's luck 本から凰雛 女と女 (3)



「いやぁ~バークス商会さんに、とうとうロレ国産の硝子を卸せるとか感無量ですわぁ〜」


「いえ、此方こそ。透明板硝子を求めるお得意様が多く助かってますわ。」


商品の納入を終え貴婦人バークスと歓談するローレライ、此の時を狙ったかの様に鈴の音が鳴り商会の扉が開く。


「まあ殿下、良くぞいらしてくださいました。」

「うむ、バークスも健在でなにより。」


入店するアルウルとカーベルを眼に留め柔和に笑み腰を折り会釈するバークス。

「バークスさん失礼します。またよろしゅうに」

ローレライは殿下の言葉に、ああ、この()がと察し席を立つも王女より一歩前に出たカーベルに機先を制される。


「お初にお目に掛かります。レキ・アルウル王女殿下の側付き文官をしておりますカーベル・アリスと申します。本日はローレライ商会、ローレライ様と御商談の場を持ちたく参りました。何卒、御時間を頂けないでしょうか。」


 (´ω ` ;) やばいでぇ やばいでぇ

 なんなんなんなん 儲け過ぎたンやな・・・


会釈しニコリと笑むカーベルに内心穏やかでないローレライも笑顔を取り繕う。

あ〜どうもご丁寧に〜などと言葉を返すも、この後、宮殿内で商談を〜と言い出すカーベル。


 Σ( ° д °;) あ え ちょ まってえなッ!?


提案に激しく狼狽えだすローレライ。

そんな彼女の動揺を察する初老の貴婦人。


「殿下、ローレライさんも、よろしければ此方の席をご利用なされては如何でしょうか。」


先程迄ローレライとの歓談に利用していた商談スペースの提供を申し出るバークス。

 初対面で王宮での話し合いは流石に敷居が高すぎたかとカーベルがバークスの提案に乗りつつ先んじて店主に礼を告げローレライを促し商談の席に着かせる話し合いは既定とばかりに、対するローレライは。


「あ〜申し訳ありませんなぁ。レキ女王室への納入はバークス商会さんを通すが決まりでしてぇ。」


 いいですか殿下

 話し合いは自分が主導します

 殿下は私が相槌を求めたら頷くだけ

 商談、交渉

 これもまた戦いです

 負けるわけにはいかないんです


「それでしたら御心配には及びません。ローレライ商会様に物を買って頂きたく。それも専売契約を結びたいのです。」


告げ王女に視線を送ればアルウルがうむと頷く。


「はあ、物はなんでっか」


問われカーベルは笑み深め、まずは座りませんかと着席を促しバークスは気を効かせ茶を淹れて参りますと場を離れる。




 机上にゴトリと音たて置かれた結晶を前にローレライの表情は僅かに揺れた。


「トロナ。何でも今ロレ国内での需要が増してるそうで。」


「あ〜トロナですかぁ〜。勿論取り扱ってますよ。今レキ国は穀物も値上がってなかなか買いづらいでっしゃろ?」


物価高に話題をシフトしようとするローレライと国内穀物の値上がりを初めて知る事になるアルウル。

カーベルは商人さんには死活問題ですよね、うんうんなどと相槌を打ち互いの手の内胸の内を探り合う。

 会話する両者に淹れたての茶を供していくバークスが、


「殿下、ローレライ商会さんの御紹介はヨシツネさんからですか?ヨシツネさんもローレライさんは良き共同経営者だと言ってましたね。」


茶と共に添えた言葉にアルウルの表情が一変しローレライは絶句し硬直する。


 (( 'Д`;))ば、バークスのあほおおおおおッ!


内心激しく動揺する両者、アルウルは上擦った声で尋ねる。


「ほ、ほお、ヨシツネの関係者か、で、でだ、よ、よく会うのか、ヨ、ヨシツネと。」


ティーカップの持つ手を震わせ尋ねるアルウル。

ローレライか顔の前で両手をブンブンと振り否定する。


「い、いや、商品の受け渡しで数ヶ月に一回会う程度ですよ。で仕事の話ししてヨシツネの家で晩御飯ご馳走になって一晩泊めてもろうて翌日、またよろしくな〜て帰るだけです。」


  ピキッ(#^ω^)      (( 'Д`;))アウアウ 


「ほ、ほう、一緒に食事し、一つ屋根の下で寝ているのか」


「いやいやいや、ヨシツネの家の娘達も一緒ですって、ヨシツネの奴、女の子十人程と共同生活してまして」   (( 'Д`;))


対面の王女が無言で怒りを発し小刻みに体震わす様にローレライの焦りは増すばかり。


 アカンアカンアカ――(´;ω;`)――ン 言い訳せなあ


「い、いや、娘いうても子供ですよッ子供。ヨシツネ、彼奴、十歳前後の女の子を養女にしとるんですッ!」   ( °д° |||)


「ほ、ほう。ヨシツネは、その年頃の娘が好みなの、か」


  ヤバイヤバイヤバ――Σ( ° д °;)――ィ

  なんか勘違いされとるッ!?

  マレがヤバイ わっちもヤバイヤバイ


過熱する場を落ち着くまで待つカーベル。

藪蛇とばかりに奥へと引っ込むバークス。

愛人の奇妙な言動の原因はロ〇リコンが理由と邪推し始めるアルウル。

場を乗り切ろうとローレライは思い付くままに言葉を絞り出す。


「いやいやいや!違う、違う、違うんですッ!マ、、、あ、ヨシツネは、そうヨシツネはですねお人好し過ぎるンですッ!物乞いの子供ひきとって陶器造りや勉強教えてご飯食べさせて住む場所用意して、、、そう!食うに困る者を集めて弟子として面倒みてやってるンですッ!だからいっぱいお金稼いで弟子の衣食住用意してやる、ど〜しようもない程お人好しなンですッ!!」


 う、うそはいうてないでぇマレぇぇ(´ω ` ;) 


必死に弁解する目の前の女を前にしアルウルは呆然とする。


 ああ そうか そうだった、、、のか


 自分にだけ向けられる(love)を求めた少女は

 男の他者への無償の愛(アガペー)に気付く

 (愛人)が自分だけのものにならないを悟る

 少女は自己の傲慢さを識った

 また一つ 少女は 変わる



沈黙するアルウル。

未だ狼狽えるローレライ。

王女付き文官が動き出す。


「成る程 成る程ぉ〜 そして、その方との共同経営の結果、無銘だったローレライ商会の現在の大躍進に繋がるわけですね、、、ロレ・ローレライ()()殿()()。」


ロレ・ローレライ王女殿下。

カーベルの言葉にアルウルとバークスが小柄な赤髪の少女を凝視した。

何も応えぬローレライを前にカーベルは話しを続ける。


「昔々チラッと噂だけは聞いてました。ロレ国の王女様が御国の為に交易商人をしていると。当時は良い話しだなぁ〜泣かせますねぇ〜くらいに思ってました。そして、最近のローレライ商会の荒稼ぎとロレ国内の大事業と好景気。色々と繋がりました。いやぁ~羨ましいッ!」


カーベルはローレライに笑みを向ける。

アルウルは目の前の女が自分と同じ王女の地位に在りながら自分には無いものを持つ者だと知り、嫉妬の感情を憶えた。

場の機微を察しカーベルは王女の脇腹を肘で小突き小声で囁く。

 殿下ここからは黙っててくださいよ


「我がレキ国でもですね、アルウル王女殿下がこのままではいかんと現状の打開を決断されました。始めの一歩として本人区の梃入れを模索しております。貧民への職の斡旋にトロナの輸出をローレライ殿下にお願いしたいのです。ローレライ殿下、どうかアルウル殿下の顔を立てると思ってトロナの買取をお願いします。」


王女側近の話しを聴きながら心落ち着けるローレライ、此れは商談なのだ商人として振る舞え。


「お値段のほうは、負けられまへんで」


「相場の買取で結構。安定して購入して頂きたく。他にも珪石もご用意させて頂きます。また石膏、石灰もお求めですよね。」


「分りました。アルウル殿()()から直接買い付けましょう。」


にこやかに商談を進めるカーベルと真剣な表情で応じるローレライ。

笑顔の裏に腹に一物。


「やはりトロナ珪石辺りですか?硝子の材料は」


 (´=ω=`) まあ気になるわな 言いかいボケ


側近の問いに沈黙は金とばかりに口を噤むローレライ。

カーベルも此処が本命では無い、本命の要求を通す為の揺さぶり。


「実はですね〜、ローレライ殿下に技術供与をお願いしたいのです」


喋る側近、沈黙のロレ国王女。


「あ、大丈夫ですよ?硝子の製法を教えろとは言いません。何よりタリアと異なる製法、安価に造る方法が分かりませんしね。」


「何の技術が欲しい で 見返りはなんや」


迂遠なカーベルの交渉にローレライは言葉の直球を投げつける。


「水車の設計図。更に職人をお一人お借りしたいです。見返りは関所の通行書、複数枚。それもアルウル殿下の裏書付き。」


 (´=ω=`) そーきたかぁ〜

 賄賂払わんでええな

 更に貴族、官吏の横槍が入らんのはアチラさん

 にも利がある

 ローレライ商会の後ろ盾になると

 当然、お互いの為に〜ってか?

 


「悪うない取引でんな。()()()の為に水車職人二人用意しましょう。」


互いが協力者と成る。

我が意を得たりと満足気に頷く両者の間で合意は成された。

最終最後とカーベルは上位者であるアルウルに同意を求めるも。


「ローレライ殿下はヨシツネと、、、男女の関係か」


「男女の仲では無いですね。ヨシツネはわっちの事を友と呼んでくれました。わっちの事、商会の事、ロレ国ロレ国民の事を何時も気に掛けてくれます。わっちにとっての恩人です。恩には恩で返さなあきまへん。友と友、互いの関係は此れが最良でしょう。此れ以上を求めるンは強欲が過ぎるでっしゃろ。」



淀み無く、しかし本心告げたと思われる女の言葉

それでも彼女の心に小さな雫を落とし波紋広げる


 此の者も、また、

 それは、私も同じか、



   欲する女と寄り添う女の邂逅






 

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