第83話 マレの野望 北の大地統一編(1)
「鼻垂れた生意気なガキ共め!並べ並べいッ」
狸人族の連合体加入交渉は、はっきりとした結論がでぬままに夜を迎えてしまった。
集落中央、何故か複数の釜で米を炊くハク、セン、軍曹達。
列をなす老若男女の狸人。
列の先頭ではマレ、ユウ族長等が炊きたての米でオニギリを握る。
その日暮らしの狸族集落横で連合体五百人が食事をするのも憚られると彼等にも配給食を配る。
農業をした事が無い狸人には初めて見る白米初めて食すオニギリであった。
食事を配る間にハク、セン、タン、マ
クと文官達が集落の状況を確認し狸人の生活実態を把握し今後の予定を建てていた。
連合体参加不明のままに狸族併合後を見据え動きだす。
「熱ッ」
「あ〜トントン、まず手に水をつける、手に塩をまぶしさっと握り込む。」
配給に列なす狸人を見てマレは、お前!手伝え!と族長曾孫トントンを指名した。
連合体総族長なる肩書きを有する傍若無人な人族の男を前にし震え上がるトントンであったが初めてのオニギリ作りに苦戦し度々マレと言葉を交わす。
飾らない言葉、泰然自若の佇まいを前にしトントンは心持直し僅かな緊張を感じつつも尋ねる。
「あの、、、南の方の鬼人を殺したと言うのは」
「鬼人分派か。殺ったぞ集落丸ごと皆殺しにし集落も全部さっぱり燃やし尽くした。」
「―――」
言葉にならず硬直するトントンにマレは溜息一つ
「奴等はな、他部族から人を攫い人族集団レキ国に奴隷として渡し安全を得たのだ。此の集落でも突然居なくなった子供はいないか?」
「―――」
「「「―――」」」
男の言葉に言葉無く表情を変えたのはトントンだけではなかった周囲の狸人達も思い当たる。
それどころか当時を見て見ぬふり、考えぬ様にとした者が大半であろう。
「侵略の度に他部族集落へ人族を道案内し、話し合いの為の連合体使者を殺した。詫びも申し開きも無いなら滅ぼすしかないだろ。」
マレもユウもオニギリを握る手を止める事はなかったが先頭に並ぶ狸人達の足は留まり後方に並ぶ狸人達も、どうしたどうしたと前へと出て人伝に話しを聞く。
明日にでも此の話は集落中に広まるだろう。
恭順には寛容をもって
逆らうものには苛烈をもって相対す
「トントン。俺はな十人の圧倒的幸福、九十人の不幸か百人の細やかな幸福なら後者を選ぶ。日々飯が食える、雨風しのぐ家があり家族が居る。十分だ十分な幸福だ。此れを邪魔する者は滅ぼす。」
(‘・ω・)
(#^ω^)あ!
何かを思い出したのかマレの表情が変わった。
「族長狸爺ぃ思い出して腹立ってきた。ざっけんなよ! 特別扱いとかねーから!平等、連合体の皆は平等!俺の下で皆平等なの!」
ブッコロ(#^ω^)
バンジャイヽ(;Д;)/
集落端、今も震え上がる老狸。
族長としての威厳は失墜し地に落ちた。
トントンは自問する平等とは
若き狸人は何時か至るだろう
人は生まれながら平等なのだと
「トントン、オニギリ食べられるとか細やかに幸せじゃね?」
男の問 トントンはすんなりとハイと言えた。
翌朝。
食事と狸人への炊き出しを終え集落の者達の前に立つ黒衣の男。
(‘・ω・)有耶無耶のうちに纏めるか
(#^ω^)の、前に爺ぃ締める
(#^ω^)マジ一日無駄にしやがって
「さて、我と部族連合体を愚弄せし族長マルに神罰を降さねばな。そうレキ国の人族の群れを燃やし尽くした様に、侵略者共に与し阿った鬼共の様に。貴様、自分は特別な存在だとでも思っているのか?なあマル?」
三百を超える武装した兵士を背景に問う男。
「え、えびすさま ばんじゃい」
「“ハッ” 寄越せ寄越せと連合体の富を要求し、いざ自分の身が可愛くなれば思っても無い事を軽々と口にする。貴様、ほんに見下げた男よのう。」
狸人族族長に価値無しと断ずる男を前にし老爺はがくがくと震え。
「え、えびすさ、」
“じょぼじょぼじょぼ” “ぶッぶりッぶりッ”
失禁し脱糞した。
集落いちのふぐりは見る影もなく縮みあがる。
“はぁ〜”
マレは深い溜息を吐いた。
「族長として最後は名誉ある決闘にて死に様に華を添えてやろうと思ったが、その価値すら無しかッ!爺いいいいッ!直ぐ様死ねいいいいいッ!!」
激昂し腰後ろに隠す鉈を抜き放ち突き付けるマレ、ほぼ演技である。
マルは地に伏し、声を大にし泣きだした。
(*^ω^*)ヒャッハー 爺ぃぃぃぃ死ねぃ
(´=ω=`) こんくらいで勘弁してやっか
「お待ちくださいッ!」
( ° д ゜)あ、、、、
「どうかッ!どうか大御爺様に御慈悲を どうか どうか お願いします。」
( 'ω ` ;)いや、その、もう終わりというか
ど〜でもいいとうか
( °ω° ;)命まで取る気 茄子なんだが
「どうか どうか」
曽祖父の横で伏して額を付け助命乞うトントン。
曽祖父のもらした糞尿に塗れた大地の上で構うこと無く土下座する年若き彼の必死さは見る者皆に伝わった。
('A`)ハァ〜
Σ( ° д ゜)あ!? ピコーン! ktkr
(*^ω^*)おっおっおっ 閃いたお また
あれで ええですやん あれで
「ほう、貴様、族長の親族トントンだったな。」
「ハイッ」
「良かろう」
「あ、ありがとうございます!」
許された事に勢いよく顔を上げたトントンにマレは言葉を続けた。
「トントン、貴様が族長に代わって罰を受けよ」
少年の顔は苦渋に歪み次には俯き、それでも力無く答える。
「はい」
「結構、大変結構。族長としての責果たさぬマルに代わり狸族を率いよ、トントン貴様が今日より族長である。」
「 」
「「「「 」」」」
男の沙汰に言葉失うトントンと狸人達。
マレは騙り神恵比寿となり振舞う。
“無知無道なる族長マルの罪科を今よりトントン 貴様が生涯を賭して背負え
我に従え 我に侍れ 我を奉り 畏怖せよ
我 八百万の神々すまう 此の地に 天降りし
渡来人にして 客人神 恵比寿 也
今此処に神聖なる契約は成った
我 恵比寿が狸人族を守護する 氏神となろう
我 無知なる知 力無き力が 奇跡を産む也
狸族よ 我が子よ 子を産み育て栄えるが良い
我 恵比寿を奉るをもって 契約とし
狸人族の繁栄を約束する也”
誰彼時 闇を払う朝の陽光を背負い
深緑の草木薫る清涼なる空間
黒衣の男、詐欺師は神騙りて威光纏わす
「あ、ありがとう、ございます」
涙と鼻水に塗れ感謝を述べる新族長トントン
彼の新族長就任に異を唱える者は皆無
狸人族の未来に光明の糸が垂らされたと
集落全ての狸人が信じた
此処は歴史と神話が交錯する時
天孫降臨 五穀豊穣 神罰と繁栄 王権神授
詐欺師の大法螺、大言壮語
「カムミール、トントンに三人の補佐官を付けよ。ハク、セン、マク、タンの四人と協議し後は任せる。俺は先に帰り諸々の計画をたてる。」
黒衣の男は詐欺師
たが 約束は守る
背を向け歩きだす男
青の官服を着た少女が深く一礼すれば皆が続く
狼の義兄弟が軽く手を挙げ、男はハイタッチで応え、頼んだの一言。
(‘・ω・)よ〜し よ〜し
俺だけ撤退! |・`ω・´)
丸投げて逃げるZe! (´ω ` ;)
「え えびすさまッ」
朝陽を受ける後背に掛かる若き新族長の声
(( °ω° ;))ビクッ
男の反応は無く 振り返る事も無い
新族長は地に両膝を着けたままに両腕を天へと
掲げる
それは天を支えるかの様に
“バンザイ!”
“えびすさま バンザイ!”
誰彼時 空の下
新族長と狸人の万歳三唱はしばし続いた
数台の荷馬車が列を成す。
海浜町と狸族集落間の人材交流が始まった。
狸族集落を村にする為海浜町から送られた職人、教師、文官と各種資材食料。
此の日、トントンと狸人の若者達を乗せた荷馬車が海浜町へと向かう。
族長として職人見習い新兵として向かう海浜町。
狸人の若者達から感嘆の声が漏れた。
切り拓かれた森、無数の畑、土を踏み硬め造られた道、陽光の下、水を受けくるくると廻る水車。
海辺に置かれた木造船と塩田。
さらに奥には木造平屋の住宅が幾つも立ち並び、ぽつりぽつりと散見される大型建物は土壁漆喰。
一年、二年間隔で住処を荒され燃やされる彼等彼女等にとって眼の前の光景は別世界。
「これが、元狼族の集落、、、海浜ですか」
「町造りを始めて一年程になります。まだ予定の半分に達していません。猫鬼人の皆さんも共用建物での間借り共同生活ですね。後二年、二年後には海浜の町も形になり各部族集落も村と呼べる形になるはずです。」
若き族長に説明する族長付き補佐官の言葉と瞳には希望の熱が籠り希望の熱は狸人の若者達にも伝播していく。
荷馬車が大地に刻む希望の轍




