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第82話 マレの野望 激突!?狸人族 ω


 「皆、急な呼び掛けに集まってくれたこと感謝する。本日は軍議でもある。質問、提案は受付ける。がだ、軍権兵権は俺にある俺の決定には従ってもらう。」


男の言葉から普段のゆるい会議では無いことを皆が察した。


「ハク隊長は砦から帰還中の為、せン副長が代理する。カラチ伍長の斥候報告頼む。」




 猫人兵を率いての斥候活動。

カラチから狸人、犬人族集落の状況報告。

「―――以上の事から集落規模戦力規模は以前の鬼人猫人と同程度と判断致しました。」

カラチに労いの言葉を掛けるマレ。


「今回は狸、犬人族の順に砦警備を残し最大兵力にて集落へ、威嚇しつつ族長と交渉する。交渉が決裂しても即戦にはしない。一度引き揚げる。」


「分派鬼人同様の殲滅戦はありますか」


年若い狼人文官の質問に小さく頷き返し。


「選択肢の一つとしては、有る。戦争とは外交手段の一つ。戦うしかない殲滅するしかない、やむを得ない選択肢、最終手段だ。古来賢人曰く、戦は自国も疲弊する、金、物、人を浪費する。避けれる戦は避ける。その為の交渉だ。」

一週間を準備期間と定め臨時会議を終了した。



 会議後、軍属とタン、マクを交えた話し合いの場を持った。

「タン、マク。鉢金、胴鎧、短槍、馬を各軍曹に支給。ハルにも同等の装備をカラチには鉢金と馬のみ。当日、ハルは族長としてセンの隣にて交渉の場に参加。カラチは族長団二人に任せ斥候兵を率いて待機だ。」


マレの指示に族長でもある虎男と猫男は無言の頷きを返す。


「集落での暴行略奪を厳しく禁じる。命令あるまで攻撃はするな。我々は統率された規律ある軍隊でなければならない。レキ国兵とは違うのだ。部下への厳命各自頼む。」


一度言葉を止め場の皆を見廻し。


「もし破る事あらば最悪俺が直接兵に罰を降さねばならない。此の意味良く理解して欲しい。」








 午前。

海浜村北端に総勢五百人が整列する。

狸人族集落への行軍、後方は若年兵の牽く兵站積み荷馬車、職人、文官。

集落迄は15km程、皆の負担少なく休憩を度々とりゆっくりとした行軍を予定する。

列前方長槍隊、用意できただけの陣笠、胴鎧を装備させた連合兵から移動を開始した。


麗らかな陽光のしたを列がなす。

「マレ、、、居心地が、、、私も歩くし」

愛馬DANGANの手綱を牽き歩くマレ、馬の背には青の官服を着た鬼人族長ユウが所在無さげに座っていた。

連合体の頂点に立つ男に徒歩にて馬を牽かせる居心地の悪さ。

ハク達も馬を牽き徒歩でと言い出したのを堂々と乗っとけと制したマレ。


「レディーファーストですよ〜ユウ族長。うは俺テラ紳士」


周囲から何の反応も無いことにデカ溜息一つ。


「変態紳士、皆の沈黙にがっかりです」


「皆緊張してるからな」


マレの軽口に応えたのは並走する馬上のハクのみ後を振り返り皆の表情を確認してから。


「今日は話し合うだけじゃん?顔合わせと挨拶して次回また〜も有り得るし。友好的に連合体に参加してくださいニッコリ。追伸、逆らったら皆殺しにしちゃうぞ♡にちゃぁ みたいな?押して引く押して引く 硬軟織り交ぜてですよ〜」

男の真後ろでは若年文官が独りメモを取る。





午後。

集落前に先頭が着くと数人の狸人が軍列光景を目にし慌てた様子で集落中央へと駆けていく。

センが兵五十人と共にマレ、族長文官の護衛に付き集落外に兵一同が整列を終えた。

下馬したハク隊長が集落端、竪穴式住居が疎らに並ぶ前に立ち声を張り上げる。


「我々は 狼猫鬼虎族部族連合である 狸族族長に話しがあって参った。」


集落内から遠巻きに連合兵を見る狸人の集団。

集落からの動きが無い事にハクは


「族長は居らぬか 我は狼族族長ハマが子にして連合軍隊長 ハク」


集落内、幾らかのざわめきを経て5分程。

マレは二足歩行する狸を初めて目にした。

木の棒を杖代わりに歩く年老いた見るからに老獪そうな狸族族長が人垣ならぬ狸垣を割って一行の前へと現れた。


「わしが族長のマルですじゃ。どのようなご用ですかな?」

何処か惚けたような空気纏う族長にハクが相対する。

「自分は部族連合、狼族族長が一子にして連合軍隊長ハク。狸族と話し合いの場を持ちたく此の場に参った。」

ハクの名乗りに父親ハマ、他部族長が続き自己紹介をしていく。



 マレは族長達の自己紹介そっちのけで文官に次々と指示をだす。

ハイ 兵士は交代で休憩

ハイ 敷布敷いて〜

ハイ 麦茶超濃い目にメープル添えて

   湯呑みでね

ハイ カムミール仕事〜 こっち来て〜


「カムミール、マル族長との交渉やってみよう。目標は連合への加入。話し合いでは正しい間違っているの是非ではなく、此の方がお得ですよね?とか、こんな不利益もありますが得られる利の方が多いですとかで攻めて。利を主体に感情や善悪を少し混ぜて交渉する感じ。」


十代半ば青のベレー帽、官服の狼少女は男の話に頷く。


よっこらせ、と敷布に腰を落ち着け、族長同士自己紹介が済んだのを確認し


「連合族長、そろそろ座って話しを進めないか。各補佐官は族長を助けよ。書記官議事録頼む。文官の諸君は雑用頼んだ。進行交渉は文官長カムミールが担当する。」


「マル族長。座ってくれ、そちらも狸族の主だった者を同席させてもらって構わない。茶でも飲みながらゆるり始めようか。」


マレが自身の紹介をする事は無かった。

狸族側からは族長と年長者三名若者一名が敷布に腰を下ろし文官が茶が入った湯呑を供していく。

連合族長と狸族が向かい合い座る中、担当文官少女カムミールが一歩前にでて座り口上を。


「マル族長、狸族の皆様始めまして。私くし連合総族長恵比寿様より今回の交渉を一任されました部族連合文官カムミールと申します。以後よろしくお願いします。」


カムミールは部族連合体設立の経緯、南方人族集団レキ国からの脅威を語っていく。


「此の地の部族を統合し人族国家レキ国の大規模侵攻に対して皆で戦わねばなりません。子、孫、子孫の為にも参加をご検討して頂きたい。次は、連合参加に対し―――――」



連合体参加部族が負うべき義務と得られる権利の説明が続いた。

説明の最後にとカムミールは

「渡来人にして客人、恵比寿様は、仰っしゃりました。恭順する者には寛容を 逆らう者には苛烈をもって相対せよ。族長マル様、部族皆で話し合う時間も必要と思われます。」


午後の陽光の下、青官服の少女は一点を指差す。


「山に太陽がかかる迄、お待ちします。後悔無き返答の程、お待ちしております。」


頭を下げ一礼するカムミール。

マル族長は白く伸びた顎髭を手でしごき、垂れ下がった目蓋の下から片目を覗かせ応える。


「分かりましたじゃ。皆のものと話し合って来ますゆえ、お待ちくだされ。」


マル族長と四人の狸人は集落内から遠巻きに見守る者達の下へ向かって行く。

狸族代表の一人、族長の曾孫トントンは後ろを振り返った。

自分よりも年若い少女が(カムミール)未来を信じ大役を担う姿、対する自分は族長の血縁でありながら何もしていない、してこなかった、できない現状に自己嫌悪に苛まれる。




「なかなか堂にはいってたな大したもんだ」

少女の灰毛頭をわしゃわしゃと撫で褒めるマレ。

その後はセン伝てに各軍曹に休憩、食事の用意、警戒を割り振っていく。







 集落中央に多数の狸人が車座になり座った。

「マル殿、参加で問題なかろう。」


「いや、しかし、、、人族と戦うのだぞ?今迄の様に逃げればよいではないか。」


「だ、だが、人族を一度は追い払ったのだろう? もう冬の寒さとひもじさに耐えるのはごめんだ」


「そう、、、よね。狼族は暮らし振りが良くなった噂は聞いてたし。」


車座の中央で老獪な狸はくくと小笑いし


「参加は決まりよな。あとは、条件よ。」

族長マルは垂れ下がっる目蓋を吊り上げて片目を覗かせニヤリと笑った。








 山に掛かる夕陽 周囲を茜に染める

 約束の時

マレとハクは顔を突き合わせ。


「いや〜デカかったな〜」

「カラチ伍長の報告通りだったな。まさか〜と信じてなかったが」


「「デカすぎだろ!」」ω


地を擦る程の玉袋ωに驚き隠せぬマレとハクだった。

二人がする事も無くなり雑談する頃合い、狸族側も意見が纏まったと敷布上に着席する。

集落の狸人も今度は遠巻きではなく族長代表者の後方にて話し合いを聴く。


「連合参加の件、考えてみなくもないですじゃ」

族長マルは口角を上げ笑った。


対応するのは文官カムミール。

「マル族長、曖昧なお返事では困ります。私達も忙しい、戻り村造りもせねばなりません。それとも、此度返事は保留、今後も話し合いの場を持ちたいとの意思表示でしょうか?」


被害無く穏便に狸族の連合参加を取付けたいが為

次回以降でも返事は構わない。

今回で話しを纏めようとの考えはカムミールにもマレにも無い。

対する族長マルは、そうですな〜、う〜んなどとぼやき。


「軍役無し 税無し 村は造って()()()()() 配給もずっと続くなら即決ですじゃ。」


     (#^ω^)ピキ


カムミールの返答は即決の拒否。

各部族の義務と権利は平等であり認められ無いと答える。


「では譲歩して()()()()じゃ。税なる物、少しは払いますじゃ。」


     (#^ω^)ピキッ ピキピキ


カムミール即断の拒否。

マレは笑顔で見守った。

周囲、連合側の皆が表情に怒りを露わにし狸族の多くが内心の焦りを抱え交渉を見守る。


「そうですか、そうですか。では此方も譲歩しますじゃ。此の集落での村造り、()()()()()いいですじゃ。」


    (#^ω^)ピキッ ピキピキ プチッ


「マル族長。お話しになりません参加拒否ですね。」

「そうは申しておりませんじゃ。此方も最大限譲歩しますじゃ。配給は期間限定の件飲みますじゃ。本当に苦しい条件ですじゃ。」


     (#^ω^)ぶちッ

カムミールよりも先に族長各位、周囲の連合兵文官が怒り露わに巫山戯るな!と声を挙げる。

狸族の者達も此れは、もう、話し合いどころでは無いと思い知るも族長マルだけは独りニヤと笑む


「お話しにも――」

交渉を続けようとするカムミール。

彼女の言葉を掻き消す怒声


「セエンンン!族長の家に火い掛けろッ!焚火代わりだッ!終わったら周囲の家も燃やせええッ!」


立ち上がり怒りと共に号令下すマレにセンは即座に応じる。


「全員抜剣 邪魔する者は斬り捨てろ 族長の家に火を掛ける 前進!」


両腕を組み見守るハク隊長の横でセン副長が麾下五十の狼人に号令を下す。

自身も(ククリナイフ)を抜き先頭を歩くセンに鹵獲したレキ国長剣を手に兵が続き集落へ向かう。

怒り狂う兵士を前にし狸人達は無言で道を譲るしかなかった。


族長マルは、待て!と悲鳴の様な声を挙げ慌てて立ち上がろうとするも。


「爺ぃぃ!座ってろおおッ!!」


敷布上、族長マルの巨玉袋横に突き立つ肉厚な鉈


“ひッ ひぃぃぃぃぃぃ”

挙がる老爺の悲鳴

しおしおと縮みゆく玉袋

腰を抜かししゃがみ込む族長マルに顔を近付け


「爺ぃ、自己紹介がまだだったな、我、客人恵比寿也。」


ごくりと唾を飲む族長マル。

場の狸人達も、終わったと感じた。

背後、集落中央、一番大きな竪穴住居に火が掛かる。

恵比寿(マレ)の大きな手が焦げ茶の頭毛を鷲掴み。


「爺ぃ 集落を渡せええぃ!」


硬直し動けぬ老狸。


「爺ぃ 選ばせてやる、はい、か、Yesか。」


硬直する老狸は口を開く事もできず、胸にはやり過ぎたの後悔だけが占めた。


「爺ぃ 選択肢が二つでは不満か?強欲そうな顔しやがって。選択肢を増やしてやる。ハイ。Yes。連合の一員として頑張らせて頂きます。そして、恵比寿様万歳だ。ほら、二つも選択肢が増えたぞ。俺は寛容だからな、お勧めは両手を挙げてエビスさまバンザ〜イ。ほら、大きな声で元気良く!」


背後、族長の家が煙と炎をあげて燃え上がる。

時折パチリと火の爆ぜる音が聴こえた。

老爺族長マルの眼前、恵比寿の顔がすっと能面の様に表情をなくした。


「五つ目の選択肢だ。南にいた鬼人分派集落のように全員皆殺しにしてやる。」


ざわりざわめく狸人。

族長が欲をかいたばかりにと恨めし気に。

ガタガタと震える族長マルに恵比寿は顔を近付ける。

「なんか言えや 殺すぞ」


“ひぃぃぃぃぃぃぃ” ヽ(;Д;(△△))/


両手を挙げ悲鳴挙げる老狸。

鬼共が皆殺しと口々に囁やき合う狸人達。


「ひぃぃぃじゃねーンダヨッ!クソがッ!エビスさまバンザイだろうがクソ爺いいい殺すぞ!」


周囲、狸人達の冷たい視線が族長に集中した。

さっさと言え 早く言えと催促する冷たい視線。


「え、えびすさま、ば、ばんじゃい」


傍らで下顎を撫でながら見ていたハクが頃合いかと声を張り上げる。


「セえええン! そこまでええええッ!」


集落焼き討ち指示は取り消され族長宅のみが今も燃え続ける。




「おう、なんか言えや爺ぃ」(#^ω^)


「え、えびすしゃま、ばんじゃい」


「爺ぃ 俺を舐めてんのか?マジ集落焼け野原にすっゾ。」(#^ω^)


「えびすさま ばんじゃいいい」


「調子に乗ってんじゃねーぞ 爺ぃ」(#^ω^)


「えびすさまああ ばんじゃい!」


ますます縮むふぐり。ω

チンピラよろしく鉈で族長マルの頬をピタピタするマレ。

男の怒りの沸点が下がる迄、爺ぃ〜いびりは続くのだった。


「爺ぃ〜 大きな声でぇ〜」(#^ω^)

「えびすしゃまあ ばんじゃぁぃいい!」

 ヽ(;Д;(△△))/

「わんもあぷり〜ズ もう一回〜い」(#^ω^)


 茜空の下 老爺の万歳三唱がしばらく続いた




(#^ω^) 鬼のババアといい此の爺といい

舐めてんのかッ! マジ 殴りてえええええッ





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