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第81話 落ち延びて北国♪ マレの野望再開


 射し込む朝の陽光

寝台の上、少女は男の胸に頬を寄せ、男を腕に抱きしめる。

 自分の顔を見つめ続ける少女に男は尋ねる、どうした。


「ヨシツネに気に入ってもらえる私になるにはどうしたらいいのだ。」


万策尽きた少女はもう男に問うしか無かった。


「ン、賢者は歴史に学び、愚者は失敗に学ぶ、は先人の言葉だな。更に、失敗に学べぬ者は破滅すると、俺は思ってる。」


「そうか、、、ヨシツネは、先人の歴史に学んだか。」


「まさか 失敗もした、いや失敗の方が多いな。失敗から学ぶ事は多い。誰も彼もが愚者だろ?失敗して学べばいい。何よりもアルウル、お前は若い。」


しばし微睡む瞳を伏せ

「まず、何をしたら、いいのか」


「ン〜、パプス殿はなかなかに教養人だ。趣味が書を読む事だそうだ。お勧めの書でも尋ねるといい。」


 アルウルは男の胸の中で小さく頷いた。





早朝の静けさ。

マキウス砦、マルトゥスク方面関所にて此の国の王女と共の近衛二人、砦の副官が黒衣の男と漆黒の巨馬を見送る。

「パプス」

「はい」

「その、なんだ、政に関するお勧めの書があれば教えて欲しいのだが。」






      ( °ω° ;)ン〜〜〜

数十冊に及ぶ本を両腕に抱えパプス・ルブールは難しい表情で砦の廊下を歩いていた。

此れから応対するのは此の国の王女殿下である、対応一つ間違れば自身の進退に関わり最悪物理的に首が飛ぶ事すらありえた。

 応接室、扉前にて吐息一つ、


「殿下、パプス・ルブール失礼します」


本で塞がる両手、体で押すように扉を開ける。

人払いを済ませた応接室には二人だけ。

茶と共に一段低い長机に大量の本が積まれた。


「殿下、政に関す物、歴史書さらに注釈のついた良書で私の蔵書ですと、これだけとなります。」


眼前に積まれた本の多さに少女の表情が曇った。

幼少期、教師が付けられ学びはした。

読み書き算術、剣と(クロスボウ)に馬術。

舞踊、礼儀礼節、王侯貴族一般常識など。

しかし、政治、経済、軍略などは一切学ばなかった教えられもしなかった。

精々、自国の歴史、祖先の偉業を学ぶ程度であり、ましてや平民の生活など識りもしない。

王女表情から有能な官吏であるパプスは察し。


「殿下、多過ぎると感じてらっしゃいますね」


「うっ、いや、読ませて貰おう。」


「殿下、何を目指しておられますか?何が有りましたか?まずは()()()ください。私の方で殿下の意に沿う書を見繕います。」


  (´・ω・`)え?そこまで言います?


室内、二人だけの密談とばかりにアルウルは全てを語った。

 もう、それは、ガールズトークの如く。

時折、パプスはクスッと笑いだす。

時折、表情を一変させる。

愛人の諫言の数々と破天荒な行動は有能な副官を驚かせ同時に多くの共感をもたらした。


「ミナモト様は稀有な御仁で御座いますね――」


話しを一通り聴き終え自らの所感を述べる。

パプスの知識として、

愛人が政、人事に口出しするは悪。

有能な臣下の諫言を聴き入れるは良。

聴いた話しは何が何やら、勝手が違い過ぎてもう苦笑するしか無かった。

 彼女は机上から三冊の書を手に取り王女の前に並べる。


「富国論?ロレ・ミスキスキ著?聴いた事も無いな。」


「殿下はロレ女王国はご存知で?」


「当然識っておる。著者もあのロレか?しかし彼の国は貧しいではないか。」


「ン〜、豊かさ貧しさの尺度の違いですね。確かにロレ国は貧しいと言われます。しかし、民の生活は周辺国よりも豊かで職人の技術は群を抜いて高いです。――――」

ロレ女王国。

建国四百年を経た周辺最古の国家で在る。

幾度も他国の侵攻に合い、幾度も国境を侵されるも今尚王家国家は存続する。

弱小と蔑まれるロレ女王国が何故四百年も存続し

何故民は周辺国よりも豊かなのかを有能な官吏は滔々と語る。


「なるほど、パプス感謝する。」


「勿体なきお言葉。最近では商人の話題もロレ国ばかりですね。陶器と硝子が今大変注目されております。ロレ国内に周辺の富が集まり女王は集めた財貨で国内を大規模な梃入れをしているとか。さらに周辺国の貧者が、、、国を捨てて流民となりロレ国へ向かっているとの噂も。」










 マルトゥスクの関所を越えロレ関所を抜け。


「はぁ〜〜やっと一息つける〜ぅ」(´⊿`)


安堵の吐息を漏らし向かう先はロレ国王城。

城門前、全身黒尽くめナルシー男は門衛も顔パス、馬をお預かりしますのVIP待遇。

山頂途上に建てられた硝子工房へと立ち寄る。

熱気に包まれる工房、二人の乙女コリンとトリントが研修生と共に作業するを眺める。


「マレ様!お疲れ様です。今回のレキ滞在は如何でしたか。」


作業の邪魔をせぬよう遠くから見学していた男を発見し此の国の第二王女ローレンが声を掛けた。

愛人業て、、、面倒臭いよなと呟いた男にローレンはハァ?と小首を傾げるのだった。


「ローレンさん、硝子販売は順調?」


男の問に少女に笑顔の華が咲いた。

それはもう――

板硝子と実用品としての硝子に注力し販売は好調


「やはりタリア産硝子の造形美には遠く及びませんね〜」


「美術品嗜好品としてですか。年季が違いますしね。あ〜切子試してみるのもいいかな?」


硝子のカッティングや研磨。

江戸切子、薩摩切子の説明をしばし立ち話しし。


「将来ですね〜。今でも皆さん多忙ですし。」


笑顔で現在未来を語る王女ローレン、マレに気付き手を振るコリン、トリント。

次代の若き少女達が汗に塗れ硝子を造る様は眩しく煌めく。





 ロレ国を抜け外要道を通り北の大地へ。

帰路の途上、虎人族の集落へと立ち寄る。

族長ハルは現在海浜村にて軍事教練にて不在、ハルの母セルルと妹シルルに出迎えられる。


「連絡も無く突然お邪魔し申し訳ありません」


頭を下げ挨拶もそこそこにセルル、シルル、補佐官と共に集落を周る。

息吹山と湖、サララス湖の間に造られた虎人族集落。

現在の人口は811人。

湖での漁と狩猟を生活の糧とする。

現在、海浜から出張する職人、教師、文官が天幕生活にて村の建設に携わる。


「あちらの積石は?」


集落端積まれる大小の石、補佐官が気付かぬ事に気付くマレ。


「あちらは、ハル、シルルの父、私の夫ナキと仲間達の墓です。」


昔話、レキ兵による襲撃、当時の族長と男衆が殿(しんがり)を務め集落の者達を逃がした。

此の時共に戦おうとした息子ハルをナキは許さず集落皆の未来を託した。

族長ナキと男衆合わせ二十四人の亡骸を埋め石を積み墓とした。

 マレは積石塚の前に立ち手を合わせる。


「セルルさん、シルルさん。此処に鎮魂の社を建てて良いか集落の皆さんに確認して頂けますか」


「お心遣い 感謝致します」


男の寄り添いに母娘の目尻に涙。

その後、集落を周り虎人と共に家を建てる狼人に声を掛け、青空授業を見学する。

一通りの見学を終えたマレは三人の補佐官と共に湖の前に立った。

 湖面を眺め。


「タタモ、ササ、ニモ。俺が口出しする事も無く村造りが進む事に感謝する。ありがとう。」


三人の虎人族長補佐官、年若く十三、四歳にして優秀有能な官吏官僚。

遊びたい年頃の彼等彼女等への申し訳無さもあったのだろう。

 しばし湖を眺め、浜辺足元に打ち上がった水草を拾い上げる。

あ〜先生、また何か考えてるなと察する狼少年少女達。

手の上で弄くり球根部を手で裂き。


「なあ?此の水草の繊維、紙にならないか?」


タタモに手渡される水草を覗きこむササとニモ。


「水草の育成期間を調べ湖西村(仮称)で紙漉きを検討してみます。」


「うん、お願いできるかな?」


「「「はい!」」」









「ただいま〜 長く留守にしてごめんな〜」

二週間振りの帰宅、子供達独り独りと顔を合わせ頭を撫で留守を任せているアイとアーミテノールに問題は無いかと確認し。

「んじゃ、海浜にDANGAN預けて来るから、すぐ帰る予定。」



海浜村ではカラチに会い斥候報告を受け次にハマ族長に会う。

「明日、臨時の族長会議したいけどいいかな?」

必要な事だけを伝え詳しくは会議でとし海浜村にて養子の狼人サジと指導軍曹プラノと合流し共に自宅へと帰った。

帰り道。

「プラノ、急で悪いけど明日、会議参加よろしく。」


「自分ですか?政は詳しくないのですが」


「戦争とは 外交手段の 一つである 偉い人の言葉です。明日の会議は軍議でもあるからね」







 自宅、全員揃って囲む夕食。

パンに春野菜と魚の白身フライを挟んだサンドウィッチを食しながら家族の会話。


「ケイさんシウさん、縁屋で採用した従業員の皆さん如何でしょ。」


「問題は無いのですけど〜 ねえケイ?」


「えーと、従業員多過ぎるかなって?暇してる子も〜」


「うん、そんな時は仕事の説明時間、お掃除に充ててください。労働の対価にお金、縁札を受け取るとは労働時間内を無為に過ごさない。一所懸命に働く事で自分と家族の生活を守り、労働が地域、社会への貢献であるきとを理解って欲しい。今後縁屋恵比寿は七店舗程増やす予定だからね?」


「七店舗ですか!?」


「えっと、従業員も増えるんですか?」


「今働いてる子を仕事憶えさせて〜の移動させて〜の新規採用して〜ので適正人数にして迄。二人に任せて良い?」


「が、頑張ります!」


アミちゃん(アーミテノール)に手伝ってもらう?」


「え?わ、私ですか?でも〜小さい子達の面倒もアイさんだけではぁ〜」


「ン、まずアミはお勉強進んでる?読み書き算数必須ですよ?」


「うッ うぅ〜」


「まあ、当面は勉強しようか。その後、アミはアミの進みたい道を選べばよかとですよ」


「好きな、道、ですか?」

現在、子供達に混じり読み書きを習い家庭での雑用を手伝う日々、元王族亡国の姫君にとって考えた事も無かった未来への道に不思議さと戸惑いを憶えるのだった。

食事と共に家族皆に日々の礼を伝え、年少の子供達へと顔を向け。


「十二歳の四月を迎えたら好きな道、自分に合った職業に着けば良い。皆の幸福が俺の願いだ。あ〜アイちゃんは御免、当面俺の助手お願いします。ほんとさーせン。」


少女はにこりと笑みで応えるえてくれた。





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