第70話 猛き鷹 (1)
三月末。
山脈裾野は新緑に色付く。
アル峡谷駐留新兵を引き連れ食用野草の若芽摘みする伍長。
夕暮れ前に峡谷砦に到着したマレ。
各種報告連絡、砦交代勤務と引き継ぎの話し合いを行なうマレ、ハク、ホウ、セン。
「亡くなったレキ兵士の遺体確認だろうな。少数の兵士が来た。我々で用意した石積み塚を確認し更に進もうとした為、崖上から弓にて威嚇射撃。追い払った。現在、斥候と呼べる類のものは来ていない。」
「充分な対応だ。日報には残したか。」
「当日の担当軍曹が記入。確認は俺がした。」
「うん、ありがとうセン。今は砦の存在を秘匿したい。次の報告引き継ぎお願い。」
義兄弟と一頻り話しを済ませ新緑の野草茶で一息吐き。何でも無い雑談かの様に。
「我々は、此の地の部族全てを統合し部族連合体を結成せねばならない。」
義長兄の言葉に義弟三人がおおと小さく感嘆の声をもらす。
皆、薄々は感じていた。
何時かは成さねばならんと各人も思っていた。
「基本話し合いだ。俺も相手部族の事を理解できて無い部分多々有るしな。」
アル峡谷砦東方、海沿いの集落。
鬼人族分派。
海浜町東、狸人族集落。
西、ササラ湖東の虎人族集落。
「ササラ湖の北にある犬人族集落は一番遠いし最後だな〜。」
簡易な集落位置情報が描き込まれたこれまた簡易地図を囲み話しをする。
条件
各部族は規模に関わらず対等。
各部族長は月一度の会議に参加し内政に関する発言し、採択権を持つ。
連合体は各部族集落に対し村造り、教育の援助、その間の食料配給を行なう。
「縁屋恵比寿の支店が建ち次第、配給は縁札に徐々に切り替える。」
各種権利と保護に対する義務
縁札移行後の納税。
「そして兵役。兵権軍権は俺が全て握る。俺は此の地を必ず死守する。」
義兄の真剣な眼差し、力籠る言葉。
義弟皆が無言で頷き返す。
(´=ω=`) ん〜当面は各部族に対する情報収集やな 虎んとこはこのまま交流続けてけばええやろ
(・`ω・´) カラチに望遠鏡わたして鬼分派、狸、犬集落探らせるか?
(・∀・) 猫忍 御庭番! カッコヨス
暫し地図に視線を落とし考え事に浸るマレ。
「Brother! 共に何処までも!」
「HEY BROTHER」
「HEY BROTHER」
ハクが声を挙げセン、ホウが続いた。
「頼りにしてるぜ。兄弟。」
ニカリ笑み、親指突き立てサムズアップするマレ
ハク、ホウ、センも口端を吊り上げサムズアップ
砦に一泊するマレ。
早めの就寝、そして寝起は爽やかに。
( ´∀`)はぁ~ 夜勤無し サービス残業無し
最高っすわwww
「押忍!セン 勤務明けたんだろ?帰らんのか?」
「ああ、ハクに頼まれてな。四日前後延長だ。」
「ほ〜ン ホウは?」
「ン。仕事を頼んだ出掛けてる。近隣の調達できそうな食料探索を任せた。」
センの説明に成る程なと微笑むマレだった。
「春先だもンな〜七草、タラの芽、あとなんだ〜?あ〜つくし!?」
「そんなとこだ。マレ、すまん、二人が戻る迄砦に居てくれるか。」
「おk おk カラチと猫人みんなでゲリラ戦の研究でもするわ〜。」
センに告げ、カラチ、猫人兵と朝食を共にしてくると別行動を。
(*´ω`*)うひょー 鬼娘との深夜サービス残業
か い ひ! サイコーかYo!?
「全員 五列縦隊 整列ッ」
陽光のしたカラチ伍長の号令に十人の猫人が一斉に動き出す。
若猫、緑一色統一された軍服とベレー帽。
背には弩、腰ベルトには数本の苦無と鉈を佩く。
「敬礼」
一糸乱れぬ全体行動。
敬礼返すマレがカラチに視線を送れば。
「全体 休め」
「おはよう。夜間警固明けの者もいるだろう朝礼は早く済ませる。数日砦に滞在する。君達には交代にてゲリラ戦術訓練に参加してもらう。斥候とゲリラ戦。君達が最も活躍できる場だと私は考える。ゲリラ戦。奇襲夜襲不意打ち。正々堂々真正面から?馬鹿らしい、実に下らない。勝たねばならん時がある。負けれぬ一戦というものがある。ならば必勝あるのみ。必勝に導く者達こそ、諸君である! 期待している。カラチ伍長、あとを頼む。」
黒衣の男の演説に胸震わす猫人兵。
自分達は猫人族は変わるのだ。
客人神 恵比寿に続き此の大地を駆ける日を待ち侘びる。
「SIR YES SIR」
一人の猫兵からその言葉は自然と、場の全猫人が続いた
“SIR YES SIR”
彼等の士気は高い。
野性の狩猟種族。
闇夜に潜み隠された爪を牙を剥き出す。
猫人が戦いの犬に成り上がる
(`・ω+´) ギラッ(`・ω+´) ギラッ(`・ω+´) ギラッ
日々訓練を猫人と行い、三日後の午後。
予定を繰り上げた海浜町からアル峡谷砦への資材搬送荷馬車と共に馬に乗るハクが戻った。
更に。
「急な訪問失礼する。」
狼人と遜色ない恵体巨躯。
虎柄毛の太い腕、右手を差し出し握手求める虎人族長と後ろに控える若衆五人。
「お、おう。よく来てくれた。ハル族長、海浜の町と違い碌な饗しはできんが、ゆっくりしてってくれ。」
マレは激しく動揺した。
虎人が砦を訪問するのは初めてである。
しかし一月の観劇移行、ハル族長と若衆の面子は入れ替えにて海浜町を数度訪問した。
忙しいマレに代わり族長が対応し時にハクや義兄弟が彼等に町を案内した。
ハルと若衆はマク、センの話しを熱心に聴いた。
縁屋の外立ち飲み席で希少な生乳を使用して作った麦芽糖で味を調整したヨーグルト飲料とチーズの味わい深さに言葉を失う若衆。
学校での授業風景の見学では。
これ無くして、あの戦いの勝利はありえなかった。
勉強会に懐疑的な虎人を前にハクは言い切った。
深まる交流。まだ時期尚早かとも考えたが彼等の訪問は問題無しと判断を下すマレ。
マレは固く握手するハルを見て、斜め後のハクを見た。
ただ〜 な〜 お前等 何やってんだよ、、、、
(#)3・) (#)ω・) ( ´∀`;)
狼男と虎男の腫れ上がった顔を見て激しい動揺抑えられずであった。
小会議用の大天幕。
備えられた机を囲み椅子にすわるマレ側の者達と虎族長と若衆。
軍曹ロロ自らが湯呑みにて温かい野草茶を皆にだす。
まず話しをと、、、しかしセン、駐留軍曹は兎に角ハクとハルの崩壊顔面が気になって仕方がなかった。
マレも大凡は察するがハル、ハクどちらからの言葉を待ち茶をすする。
ハルは温めの茶を一口。
若衆も茶に手をつける。
そして意気込み話しだしたのはハクだった。
「Brother! 此の度、虎人族が我々の部族連合体への参加を了承してくれました。此処に報告します。」
場に同席した三人の軍曹が、おおおと歓声を漏らした。
センは両腕を組み瞑目し数度頷く。
ハクはニヤつきハルを見て。
「まあ、俺が、虎人の族長との勝負に勝ったからだがな」www
「ハァン!? 俺が勝っただろ!お前の方が先にぶっ倒れたじゃねーか!お前が必死に頼みこむから俺が折れてやったんだろ!」
白狼と若虎が顔を近づけ、俺が俺が、お前がお前がと言い合う。
状況に困惑するマレと軍曹は虎の若衆を見れば。
あるものは呆れ顔。
あるものは笑顔で。
あるものは苦笑堪えず
そして、口々に、またやってる。
( ´゜ω゜) もまえら やっぱ 仲良しやん
ありえへん タイマン後 二人ぶっ倒れて
夕陽見上げてとか 昭和少年漫画かよ!?
( ゜ д ゜)ワイ 殴られたら 三倍返し
当然、闇討ちな! (・`ω・´)
俺がーお前がーと言い合う事暫し。
若衆の一人が、
「引き分けだったすね〜」
現地現場で見届けた若衆も同様に。
「両者、一歩も引かずでした〜」
「そうそう」
「勝敗は次に持ち越しだって」
「お互い決めたじゃないっすか〜」
「おう!次は俺が完全勝利してやんよ!」
「言ってろ!俺が勝つに決まってる!」
互いに熱くなり過ぎて席を立って睨みあっていたが若衆の引き分けの言葉に互いに身を退き席に着いた。
「虎人族長ハル殿、並びに付き添いの皆さん、アル峡谷砦への訪問、良くぞいらしてくれました。歓迎します。」
マレは連合体代表として虎人の訪問に再度歓迎を示し。
「我等、狼、猫、鬼部族連合体に虎人部族が参加して頂ける事に感謝を。族長殿、御付きの皆さん、尽力ありがとうございます。虎人の皆さんの参加に私、客人恵比寿大変に心強く思っております。本当に感謝致す。」
連合代表として参加への謝辞を述べ深く頭を下げるマレこと恵比寿。
「ン。此処の処、ずっと考えていた。我等虎人族の将来を。今回の提案は切っ掛けに過ぎない。だが自分にも族長としての立場がある。連合体狼部族次期族長との決闘という形を経て部族皆に納得してもらった。この先の交流で部族全員の理解も得られるだろうとの目測もある。恵比寿殿、よろしく頼む。」
頭を下げる族長、族長に続き頭を下げる若衆。
その後、マレとハルが固い握手を交わしあった。
「大変、結構。怪我人二人、共に軽症なのも良かった。今後の遺恨は少ない方が良い。俺も力による恭順は極力避けたかった。全ての部族は平等に。此れは連合体の不文律。此れを踏まえ今後の話しをしよう。まあ、楽にしてくれ話すと長くなるしな。茶を飲みつつ、摘める物も用意しよう。」
場一同に弛緩した空気が流れではと、軍曹三人が書記、茶、軽食の用意に動き出す。
連合体代表と虎族長との会談。
集落への配給、指導の為の職人、教師、運営管理の文官の派遣。縁屋恵比寿の出店。虎人族次代の文官育成など。
「最短二年、レキ国との戦は最短二年後だ。それ迄に次代を担う若者を育てたい。次の戦で勝って終わりとはいかんのだ。此の大地で我等連合体が暮らして行く限り護る戦いを続けていく事になる。ン、次、虎人族の軍役義務の話し進めよう。」
ハルは小さく頷き、決意の眼力をマレに向け。
「今迄の町への訪問で他部族族長より話しは聴いている。軍役には虎人族の勇士百人をだす。当然俺も参加だ。族長代理として母と妹をだす。我々の勇猛果敢さを皆に見せねばならんのでな」
(´・ω・) (`・ω・´)ン?ーーXーー(・`ω・´)チラッ
軍役に対する熱情、ハルがチラと白狼を見ればハクも対抗心に火が点く。
「おもしれーぇ!敵千を葬った狼族の凄さ見せつけてやんよ!」
ハクとハルが視線でバチバチるのを虎若衆とセン、軍曹が、はぁ~仲がよろしい事でと呆れ返る。
マレは冷静に数を考える。常備兵百は多いなと。
虎人集落の人口は狼人族と同等。
「ハル、集落の建設もある。軍役常備者五十人、集落での訓練を時折行なう予備役の育成でいきたい。」
それは少ないと感じ眉間に皺寄せる猛虎にマレは語って聞かせる。
戦う事が仕事の者を後で支える者が必ず必要であると。食料を用意する者、建物、道具、武器を作る者。そして運営管理する文官。
「槍や弓握る者だけが戦っている訳ではないんだ。総力戦といってな、全ての者が戦に何かしら関わっている。連合体、立上げの原点は俺とハク、セン、マク、タン、ホウの六人だがマクは食料、タンは武器や様々な物作りで俺達を支えてくれている。マクとタン無くして俺、ハク、セン、ホウは戦えん。二人が欠ければ敗北は必定だな。」
マレの話しを真剣に聴くハルと若衆。
一息吐きたく茶を手に取るマレ。
「なあ?ホウの奴、どこ行ってるんだ?三日も山菜とりは長くね?」
「あーあいつは〜此処から東の集落。」
「分離した鬼人集落に連合体合流の話し合いに向かった。難航してるのかもな。」
気楽に話すハク。
説明するセン。
そしてハルと虎若衆の表情が一変する。
「おい!? 鬼人族から離れた、はぐれ共の集落に向かったのか!?奴等は―――――――――。」
此の日、海浜町の櫓上で激しく鐘が打ち鳴らされた。
「アル峡谷砦からの狼煙を確認、色は黄色!!」
伝達の狼煙
色は黄色
対応は
警戒最大限 海浜町は警戒態勢
アル峡谷砦に兵士物資送れ
戦の危険有り
事前対応、取り決め通りに
タンとマク
族長と待機休日軍曹文官が動き出す




