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第64話 オレサマ カンゲキ!?


 一月中旬。


午後の遅い頃、海浜町の物見櫓から激しく鐘が打ち鳴らされた。

緊急事態を報せる鐘の音。

只、此の日だけは意味合いが異なった。

鐘の音を聴き海浜町の手隙の者が町の西口へとのんびりと歩き集まってくる。

皆雑談などを交わしながら。

海浜町西口、出来上がる人垣、向って来る荷馬車数台。

 此の日、マレが乞い願ったロレ国地場演劇団が海浜町に来訪した。




「ようこそ、おいでくださいました。」

マレと族長達が中心となり頭を下げる。

総勢三十人の団員と荷運びも兼ねて同行してきたローレライとローレライ商隊の一行。

一ヶ月で海浜町に再訪する事となった団員も多い。

団員といっても地場劇団、素人芝居、皆普段は仕事を持ち祭りで有志が地元民の前演じる無料劇。

 出迎えに集まる町民の数は数百人。

団長で本業大工のヨシエさんに挨拶に伺う族長とマレ。

面識あるヨシエおばちゃんですら、ちょっと引く歓迎振りであった。

この日の為にと簡易舞台も作ったマレの観劇に対する熱量。

客人へのおもてなしを皆に学んでもらう意味もあった。

「ささ、皆様お疲れでしょう。食事と酒、宴会の準備もできております。それとも蒸し風呂を先にご利用されますか。」

団員一行が案内されるのは海浜町五丁目。


“おふぅ”

おばちゃん団員達から吐息が漏れた。

炭と陶板、陶器皿に山と盛られた海鮮。

本日の接待料理、浜焼き。

年長文官組が客人を席へと誘う。


「おふぅ」


またも漏れる吐息。

茶碗に盛られたほぐし身鮭ご飯。

「栗ご飯も用意してございます。希望ありましたらお申し付けください。」

狼人で普段は漁師をする男が陶板の上に岩牡蠣を並べる。

これにはチヨとジュン夫婦の娘サチコも大はしゃぎであった。


「ローレ、ありがとな〜。」

「わっち等も観劇しながら、のんびりさせてもらうで。」


マレが蒸留原酒に果汁で味を調整した薄い薄い水割りカクテルを彼女の杯に注ぎながら礼を言う。

事前に皆に教育していた乾杯の音頭をとる。


「皆様、お飲み物は届きましたか。では海浜町、初の演劇舞台無事な成功を願ってぇぇぇ!」


“乾ぱあああああい”



     「なんやこりゃぁぁぁぁ!!」

 ド―――――――( ゜д゜|||)――――――――ン


おばちゃん団長ヨシエ、牡蠣フライタルタルソース添えに戦慄する。

  「て、天上人(王侯貴族)の食べ物やで!?」

      食のカルチャーショック!!


小心者マレ、当然、牡蠣は充分加熱するよう厳命済み。


  ノロウイルス怖いんやで(´・ω・`)



団員独り独りへ族長と共に挨拶周り。

「遠い所、ありがとうございます。チヨさんには二度も来て頂きましたし、ジュンさんとサチコちゃんには半年母親不在にさせ迷惑お掛けしました。家族総出での来訪ありがとうございます。」


「いいって、いいって。あのね〜私達家族三人で舞台に立つんだ〜。」

「うん、そうそう。」


は〜ほ〜と相槌打つマレ、微酔いの夫妻は饒舌に。

「私とジュンが主役なんだ〜」

「うん、そうそう。」


「主演ですか〜 楽しみの為に深く聞いてないんですが、人情、軍記物だとか。」


「うん、で、恋物語。」

「うん、そうそう。」


「ほうほう、恋物語は定番ですよね。大なり小なり男女の出会いをいれると物語への没入感が違いますからね〜。憧れ、共感。えーですと、お二人は裸の城?で主役を?」


「うん、私がエーアールでジュンがロレの王子」

「うん、そうそう。」


「へ? エーアールで、すか? と、ロレの王子」

   ( ゜ д ゜)おいおいおいおいおい

   ヽ(°∀°)/事実は小説より奇なりキター

   (*´ω`*)歴史物やん 期待大ですわ



更ける夜、客人の喜ぶ姿にマレの顔も綻ぶ。

     にっ ( ´∀`) こり






翌日、舞台準備に一日を費やす団員。

マレと養子、有志連れで準備手伝いと、時折公演場所横に建つ縁屋恵比寿の商品準備に追われる一日。

心地良い疲労感と充足感、夕方からは団員を囲んでの宴会を開く。


( ´∀`) 海鮮お好み焼きでござ〜い

「なんやこりゃぁぁぁぁ!!」

食のカルチャーショック!!

ウスターソース(少量タリア産蜂蜜混合)

+マヨネーズ

(卵殻、作業者手指アルコール殺菌済み)

のかかった海鮮お好み焼きに戦慄したヨシエさん


  (´=ω=`)サルモネラ菌怖いんやで



「あ、モダン焼きもいっときます?」ヽ(°∀°)/


炭水化物(お好み焼き)炭水化物(焼きそば)、小麦と小麦、それは狂気の日本食


こまけ〜ことはいいんだYo (`・ω・´)シャキーン







 公演初日

舞台は整った。

しかし、舞台はあるが客席は無かった。

露天観劇。観劇無料。敷物持参。

今、舞台の幕が上がる時を皆が待った。




「ケイ、シウ、初日からすまんな〜。」


劇場横、縁屋恵比寿は客でごったがえす。

観劇が始まれば暇になるだろうと営業を手伝うマレとアイ、サジ。

プラノとアーミテノールには子供達を連れて観劇席の準備をさせて。


「二日目、三日目、交代でゆっくり観劇してくれ、すまんな。」


養女に労いの言葉を掛ければ二人は良い経験ですからと忙しい中、笑ってくれた。


「HEY BROTHER」

「おう!Brotherハ、、、、ク、えーと後の皆さんは? どちら様で〜お客様か?」


縁屋恵比寿に訪れたハク、後に連れる虎人はライズ・セインかと見紛う戦士然とした虎人の男と若い虎人数人。


「ブラザー、事後報告になってすまない。虎人族の族長を招待した。()()で造った町をこの田舎者にも自慢してやりたくてな。構わないか?」


「ハぁ〜〜クぅ〜 言い方!」


マレが諫めるもハクはフフンと虎人達に胸を張る

対する彼等は怒る風でも無く泰然とし、彼等の若きリーダー、族長は悠然と。


「狼族、族長の()鹿()()()がどうしても、と言うからな。あんたが、マロウド・エビスか。自分は虎人族、族長を務めるハル。狼人を率いて人族を打倒した勇者に敬意を払う。俺の事は族長ではなくハルと呼んでもらって構わない。」


自己紹介、そして右手を差し出すハル。


(´・ω・`)お前等、実は仲良しなんじゃね?


虎人族族長ハル。彼の醸し出す空気感、若くして族長を務めるだけはある男であった。


「ハル、連れの虎人の皆さんもよく来てくれた。俺の事はマレと呼んでくれ。皆もそう呼ぶ。」


マレは彼の手を強く握り熱い握手を交わす。

後ろの虎人達もまたマレに握手を求め固く握手を交わしあった。

彼等は何処から知ったのであろうかルワイとの一戦に勝利したマレを勇敢なる戦士として認め受け入れた。

彼等虎人とマレが交流を深める間、ハクは。

「鮭とば、燻製鮭と〜干柿も欲しいな。あ、ハル、お前等もメザシ炙ったら食うか?」


「お、おう」( ゜ д ゜(△△)|||)


 オイ( ゜∀ 。)お前等やっぱ仲良しだろ!?


縁屋の商品を物色し虎人に尋ねるハク。

ハクのマイペースさに押され気味な虎人達。


「たけーけど、奮発してチーズの燻製も交換するか! あ、シウちゃん! 甘酒、大徳利で人数分五本!」


「ハ〜イ 毎度で〜す」


「あとは〜スルメと〜燻製団栗いっとくか。」

意気揚々、最高額紙幣百縁札を腰の布小袋から取り出すハク。

最高額紙幣で釣り紙幣無く豪快に大人買いし持参籠に商品を詰めていくハクを眺める虎人達。


「ハク、大事なお客さんだ、年長組に族長席の隣用意してもらえ、火鉢も用意な。」


「おう SIR YES SIR だぜ」


「観劇後も夕方の食事会にお招きして泊まっていってもらえ。」


「“SIR YES SIR”」


長兄の指示に次兄は両頬を吊り上げ犬歯を剥き出して笑顔を浮かべた。

ハクなりに楽しんでいたのだった。


「ハル、御付きの皆さんも。友人として歓待させて欲しい。俺は手が離せそうにない。申し訳ないが案内はハクに一任するので楽しんでいって欲しい。」


「気を遣わせてしまったな。」


「そんな事はない。俺はこの出会いに感謝する」


ハクはハルと虎人達に甘酒いり徳利を一本づつ押し付けると、マレとハイタッチを交わし観劇へと向かった。






 舞台袖から客席を覗きたじろいだ。


「せ、千人は、おるんちゃう?」


「場に飲まれすぎ、、、七百人超え、らしいよ」


地域、村での演し物。

観客の村人など精々百人前後である。

今、目の前、満員御礼の観客席に動揺する団員達。


「あんれま〜ひーふーみーよー、、、家族八人、炬燵持参やで。」


露天観劇、皆が火鉢持参、敷物に炬燵持参の観客多数。

寒空の下でも防寒バッチリの体制であった。

観劇は一日掛かり、二部制。


午前の部、奴隷と王女様。

ロレ国建国初期。

虎人の奴隷が王女と女王を戦場で守りロレ女王国が他種族奴隷制度を廃止し虎人が市民権を得た史実の物語。


午後の部、裸の城。

約三百年前のロレ国。

史実を元にした恋愛、人情、活劇戦記物





 

 マレは虎族の席、暖房器具状況等を目視確認し次の現場へと向かう。


「マレ、殿は忙しないのだな。」


用意された炬燵で下半身の暖をとり上半身は冬の大気に触れる事で睡魔に襲われる事なくすごせた虎人。

ハルはマレをどう呼ぶか逡巡し敬称の殿を付け。

ハクはといえば土瓶に甘酒を入れ火鉢に掛ける。


「ン、Brotherの頭の中は色々な計画や予定でいっぱいだからな。俺にはできん。センでも遠く及ばん。そ〜なるとさ、任せるしかないジャン?で見て学ぶしかねえ。」


「そうか」

言葉短く。しかし様々な思い。思案する族長。




舞台の幕がゆっくりと上がった。

同時に音楽の生演奏が入る。


  Σ(゜Д゜)マジカ 本格的ヤン


侮り難しロレ地場劇団であった。

マレは移動しながら舞台を一瞥し、炬燵持参、マレの家族席に顔をだし様子を確認し次へと移動する。

「アイちゃん、よろしく」


 

       ( ;´゜3°)・;’.、ブッ

マレ噴き出す。

舞台上、半裸のセインが四つん這い状態で鞭打たれていた。

主役の虎人を演じるセイン。

ロレ国の御先祖様に鞭で折檻を受ける場面。


      ハッ(゜Д゜≡゜д゜)チラッ

思わず心配になり舞台最前列、族長席を見ればハルと若衆が険しい表情で犬歯剥き出しにして舞台上の大工で団長、鞭打つヨシエさんを今にも射殺さんとばかりに睨んでいた。


 ( ゜ д ゜)あ、え、う、見なかった事に、うん


マレ、縁屋へ様子を見に向かう。


「お、お客さん引いたな〜。」

「はい、始まると同時にピタリです。」

「ケ〜イ、明日の甘酒仕込むね〜。」


客足遠退いた今だと昼と明日の仕込みを始めるケイとシウ。

それを手伝うマレ。

「じゃ俺、昼弁の塩と鮭おにぎりやるね〜。」


  御手々アルコール殺菌! (`・ω・´)シャキーン


      ドーヨ(゜Д゜≡゜д゜)チラッ

縁屋から離れた舞台を覗くマレ。

        (; ゜Д゜)アッ!?

舞台上、幼い幼女、ロレ王女役のサチコがセインに自身の食事を分け与える場面。

物語の重要な転換点であった。


        ( ゜ д ゜)ウア〜

客席最前列、ハルと若衆、号泣。

マレ、塩むすびを握りながら一安心する。

時折、フライパンの鮭の焼具合チェック。


今日、今日を乗り切れば明日は婦人会が縁屋に応援来てくれる! (´=ω=`)頑張れ俺

うん、観客の反応も上々か?


おにぎり作りも終ろうかという頃。


鳴り響く陣太鼓の音。

“おおおおおおおおおおおおおおおおおおお”

観客の熱狂した声援。


   (´・ω・`)ええ ですやん

奴隷と王女様舞台一番の見せ場。

戦場、追い詰められた女王と王女。

槍を手に半裸の虎人セインが同族と共に駆けつけての敵を薙ぎ倒す大立ち回り。


      イイ (´=ω=`) ネ!

最前列、ハルと若衆が拳を突き上げ声援を送っていた。

ハルと若衆の反応に一安心したマレ。

厨房お片付け。

無料の麦茶用意の為に水を汲みにでる直前。

    

      ドーヨ(゜Д゜≡゜д゜)チラッ

沈黙する観客席、舞台上を観れば槍を手に膝をつくセイン。

敵を追い払うが自身も傷を負い他の虎人に傷口に布を巻かれる場面。

女王ヨシエが膝をつきセインの手を握り詫びる。

王女サチコがセインに抱きつく。

舞台一番の感動場面。

観客席でもお涙頂戴。


       (;・∀・)え?

観客席最前列、セインと若衆が大号泣。

着ている皮の羽織りで鼻水を拭っていた。

激しく心揺さぶられたらしい。

成功を確信しマレは壺を手に水汲みに出た。



 壺に井戸水を汲み抱え歩くマレの耳に舞台演奏が届いた。

「あ〜奴王終わりか?一応様子見だけ行くか。明日ゆっくり鑑賞させてもらお。」

マレは歩速を早め縁屋に向かう。

手狭な厨房に、ふうと吐息し壺を置けば舞台上ではセインと花嫁役タンノの結婚式場面。

ロレ国に虎人が根付いてゆく始まりの歴史。

今から四百年も昔の事であった。

舞台上で役者が観客席に向って一礼する。

マレの事前指導により幕が降りてゆくと共に族長皆が拍手を贈った。


       Σ(゜Д゜)うほっ

観客席最前列、立ち上がり、泣きながら拍手喝采するハルと虎人若衆達。


 スタンディング オベーション(´;ω;`)(△△)


観客席からは万雷の拍手。

演劇鑑賞はマレの予想以上の成果を上げたのだった。




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