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第60話 マレの野望 革新 パワーアップキット(2)


「プラノ、馬には乗れるんだろ?」



「元近衛兵です、軍事全般にはいささか自信あります。」

「付いて来いよ。」


早朝、プラノと共に家をでて海浜町の厩舎に。

軍曹任命式翌日の事である。

二人は馬で平原を駆け南方のアル峡谷を目指す。


「くっ、、、何だ、あの巨馬は、マレ様乗馬もうまい。」


平原を前にし弾丸《DANGAN》は一つ大きく嘶き声を挙げたかと思うと一直線に駆け出した。

名は体を表すが如く。

穿つかの如く疾駆する漆黒巨馬、必死に追い縋るプラノと馬。




     ( ´ཀ`)ゲロゲロ オエップ


「マレ?俺達が汗水垂らして働いてるのに昼寝、二度寝か?」

「そ、そうか、Blue Sky 空が青いぜ。」


上から顔を覗き込む灰狼、言われ空を見上げる黒狼。

横では桶の水をがぶ飲み後、新兵が用意した塩を舐める弾丸。

五体倒置、覗き込むホウと横に立つセン、青空を仰ぎ見る馬酔いのマレ。


“マレ様あああああ”


「ン?誰だ彼奴?」

「鬼、族ではないな。」

「あー外で雇った新人指導教官。見習いという事で当面、海浜で乗馬指導させるから。」


追い付いたプラノ、訝しむ二人に説明し互いに自己紹介をさせる。


「此処で、三百対壱千ですか、、、成る程。」


左右、空堀と柵に挟まれアル峡谷の底で視線の先、隘路を観ながら、此処で起こった戦闘の説明を受けるプラノ。

確かに、此の地形、三方を押さえれば三倍差でも有利に事を運べると納得する。

その後、建設中の現場を歩き回る四人。


「流石にまだ住居と畑は手付かずだよ。」


ホウの説明。

建ち並ぶ接収天幕、風雨を凌ぐ為だけの馬屋。

簡易柵、簡易堀で一区切り付いた作業。

大量に接収した大麦は馬の飼料も含まれ、多くの馬は亡くなり解体した。

馬肉の半分は塩漬けにされ今も兵の食卓に細々と供出される。

定期的に海浜町から送られてくる炭、物資。

アル峡谷砦(仮 と海浜町は冬も大忙しであった。


「苦労かけるな。」


「それ程でもない。天幕は過ごしやすい。奪った鍋、釜もある。駐留兵の数も多くはない。奪った麦と馬肉、送られてくる炭で冬も問題なく越せる。」


「マレが謝る事じゃないね〜。マレは俺達、猫族、鬼族を救ってくれた。自分達が生き残る為の砦建設だ。マレには感謝してるよ。出会えた事も。」


センの淡々とした説明。

ホウが謝意を伝えるとマレはむず痒くなる。

恥ずかしくもあり、嬉しくもあった。


「春には此処らにジャガ芋植えたいな。」


「お!?夏の終わりには食べれちゃう!?」

「屯田兵というやつか。」


ジャガ芋の単語に即応するホウにマレとセンがククっと笑った。

並び歩く男三人、後を歩くプラノ。

此の場の者達の様子から皆から寄せられる信頼厚き事を知る。

 カラチに会い、明日、クロスボウの到着を連絡し彼等が苦無を作製する現場を見学する。

カラチと猫人達を交え意見交換し、明日以降は長剣ロングソードから短剣ショートソードに武装変更を決めた。

「すまんな、ククリナイフも軍服も、まだ数が揃わんのだ。」





「マレ様は、やはりエーアール軍学書あたりで学ばれたのですか?」

軍学書の中でも素人を率いての戦、それも防衛戦に特化した軍学書で実用書といえばエーアールだと考えるプラノは尋ねる。

そして、エーアール軍学書は、此の世界、今の時代では非主流派でもあった。


    全く (´・ω・`) 知らんがな


「エーアールは名前しか知らんな~。」


「では、どのような書、または師に師事されたのですか。」


「あー書物の独学だな。孫子、六韜三略、呉子。と戦術論か?あとは〜過去の戦争の解説読んだり?お城の説明読んだり?まあ趣味の延長、下手の横好きてやつだろ?」


「ソンシロクトですか?聞いた事もありません」


「そりゃな〜。此の世に無くて、俺しか持ってないし。」


「はぁ、、、それらは凄いのですか?」


「エーアールの書読んだ事無いからしらね。俺の用意した書の利点はね~抽象的だけど不変的なものが多いかな?だから時代が場所が変わっても通用する。黄金律ゴールデン ルールだな。」


「例えば?」


「情報大事、敵と自分、味方を良く知れとか〜基本だけど言われないと気付かない、直ぐ忘れそうな事が書いてある。」


「確かに。どうしてそのよう(世に無い)をお持ちで。」


「え? そりゃ、あたしゃ 神様 だぁ~よぉ」


男の煙に巻く言葉にプラノは顔を顰めるのだった


「あ〜プラノ君」

「はい、何でしょう」


「君とアミちゃんにも俺達の文字憶えてもらうから。」


「えっと、、、共通文字(タリア文字)ですか?それともラハン文字でしょうか?」


問われマレ暫し唸る。


「え〜ZIPANG文字? 片仮名、平仮名、アラビア数字。」


「何故、自信無さそうに疑問調なんですか。」


「こまけーことは いいんだYo! 兎に角ね! アラビア数字は特に便利だから! 必須だから!」


「あ、、、ハイ、あのどなたに師事すれば、、」


「帰ったら初に教えてもらって。同時進行で教材に戦術論な!」


「え!?」


子供に師事しろと言われ惑うプラノ。

教材にマキャヴェッリの戦術論を充てる無茶振りのマレ。

 明日より軍曹教育の一環で初より戦術論の授業が組まれている中に放り込まれるプラノと自主参加のサジ。

新しい養子の幼女とアーミテノールにはアイが青空授業と個別にて教えていくのだった。


ヽ(`Д´)/たいむいずまにぃぃ! オラオラオラオラ


時折、面倒事を丸投げする詐欺師。






 冬の陽が落ちるのは早い。

山脈に日が完全に沈もうかという時分にアル峡谷から帰宅したマレとプラノ。


あー夕飯に何とか間に合ったぁ〜


家族との時間を大事にしたい男は別宅の広い座卓を皆で囲む。

「ほぉ~ン。サジ今日は漁師さんとこで体験学習だったのか〜。」


 狼人の養子サジが漁師の手伝いにでて分けてもらった魚が食卓に並ぶ。

焼魚に箸を伸ばしつつマレは尋ねる。

来年、四月からの進路は決まったかと。

日本の十二歳、四月、小学校卒業同等の年齢で海浜の町に住む者は社会、働きに出る事が決められたのはつい最近の事。


「軍役に着きます。」


息子の真摯な表情にマレは、そうかと頷く。

十二歳軍役は、十五歳、四月迄土木、建築、農業、一般調練を学びつつの後方支援。

ある種、軍学校的側面を持つ。

しかし、切羽詰まれば前線での戦闘、不意、偶発的戦闘も想定される。


「ん~~決意は固い?」

「はい」


「そっか、サジ?親より先に死ぬのは親不孝だぞ? 約束しろよ?」

「はい、義父上の名誉汚さぬ様、立派に務めて参ります。」


ン、と一言返し出来すぎた息子にマレは誤魔化すように黒髪頭を搔く。

嬉しい判明、不安が無い訳でもなく胸中複雑であった。

 十二歳、まだまだ子供のはず。

 男の想いと世の常の乖離。

古来より十二歳での初陣など在った事であった。





 食後、年長のアイ、ケイ、シウが主導し初が補助する形で子供達の風呂を促す。

風呂上がりの双子にマレが声を掛けた。


「あーミミさん ミウさんや」


「なあに?おじいちゃん」

「ご飯なら今食べたでしょ!」


「あ、、、ハイ。でですね、鉄釉の茶器多目に焼いて欲しいんだけど〜。あの真っ黒なやつ。」


「え〜龍の絵がいい!!」「赤息吹(山)描くの!!」


あーさいですか〜と、さっさと引き下がろうとするマレ、これはいかんと間に入るローレライ。


「先生! 蜂蜜があるんですが、いかがでっしゃろ!」

はちみつ ハチミツ 蜂蜜 ミミ、ミウの体がピクリと反応しローレライに同じ容姿の二つ顔が向けられた。


「ローレライ屋、お主も悪よのう。」ニヤリ

「黒い器が 渋い! 粋!」ニヤリ


「お前達、本当に六歳かYo!?あーミミ、ミウ、自分達だけで食べるの禁止。皆で分けるように。」


一連のやり取りをみてローレライの横で商会雑務担当のラミスが、家族が多いと賑やかですねとコロコロと笑った。

対するマレも風呂の順番待ちと寝る場所の確保に苦労しますと苦笑でかえした。

「これだと硝子職人研修生の宿泊場所の確保も」

「何とかなるやろ。」






「アイちゃん、また授業無い時、俺の化学実験手伝ってくれるかな。」


「はい、誠心誠意やらせて頂きます。」


「ケイ、シウ、サジ、初、皆もありがとう。すまんが妹達の勉強みてやってくれ。任せっぱなしで本当にすまんな。」


「お養父様、良いのですよ。家族なんですから」

「お養父様に頼りにされるの嫌じゃありません」

ケイ、シウの言葉、サジと初の笑顔、父マレはやはりむず痒く、恥ずかしく、そして感謝を重ね心の中で。


「あ、あと、明日午後から大事な仕事をしたい皆手伝ってくれるかな?」


「貧乏暇なし!」「この甲斐性無し!」


「はぁ、さーせん」(´・ω・`)


イジり担当ミミとミウの言葉に皆で笑い合う。


「大事な仕事、クンクンクン、マレぇ、お金の匂いするでぇ〜わっちも混ぜてな〜」(´¥ω¥`)


「匂いじゃなくてさ、明日、金を刷る。」


「あかん!サンディ、メイ、ラミス、セイン! 金目の物全部隠すんやぁ!」Σ(゜Д゜|||)


「いや、そっちのスルじゃねーし!」






 午前、学校での授業を終える、何かしらの仕事を済ませ、午後家族みなと野次馬根性丸出しのローレライと商隊の皆がマレ家別邸に集合した


「マレ、何か、これ、売れそうやないか?」


額縁のような銅版を手に脳内算盤を弾くローレライにマレは、やれやれとばかりに溜息一つ。


「ん〜これ物おんなじか?これは違う絵柄やな、これ、バラした方が売れるやろ?」


同一絵柄が十二個並ぶ銅版。

ミミ、ミウが彫った版画板からタンに鋳型を作らせ複製した銅版。

マレは同じ絵柄の版画を二枚とり、それぞれに異なる染料を塗っていく。


「今日はね〜皆に版画、おしゃれに言ったら浮世絵を刷ってもらいます。」


養子達の前で銅版に和紙を重ね全体を刷り色付を裏表計、四回。

「ほら、できた。」

興味を示した子供達、只残念ながら仕事の為、色指定あり。

片面二色、両面二色刷り、三色刷り、四色刷り。

子供達の作業を監督しつつマレは一枚紙の同一絵柄を十二等分に切り分ける。

切り分けられた小紙切れ一枚をマレから引っ手繰るローレライ。


「なあマレ?これ、もっと大きい絵にしよや。あの〜五色のとかええ値段で売れるで。」


色鮮やかな浮世絵である。絵柄に凝れば、大判であれば、それなりの値段は付くであろう。

そのうちな〜と返事し。


「ローレ、今手に持ってる一枚で銅貨一枚な。」

「は?いきなりなんや。」


 壱縁 絵柄は釣り竿と鯛を抱える恵比寿様

 二色片面刷り


必要枚数確保の為、子供達に日替わりで時間交代などにて大量刷ってもらうのだった。



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