表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/90

第48話 Take The Wave (3)  

 

 それは、何処か、夢の中の出来事のようで。

 頭の中が霞がかる。


 崖上から撒いた粉末。

投げ込まれる火。局所で上がる炎は三カ所。


 ああ、死人が出ただろうな。


そうだ、俺がやれと命じたんだ。


いやいや、まだだろ。失敗だ。

「あー駄目かぁ〜。」

もっと殺さなきゃ。

千人だから損耗率三割だから、、、、

最低三百人は殺さなきゃ。


 俺が殺すのか そうだ俺が殺すんだ。


「おーい、石斧、鐘、二回だ。」

「おーい?」



爆発、連鎖し粉塵爆発。

上手くいった、、、、そう、何人の女達が、いや何百人死んだんだ。

半数超は確実か、、、

そう、俺が殺したんだ。

ニケ。

思考が纏まらない。

まるで夢だ。


連打♪連打♪ 連〜打♪ 連〜打♪ 鐘を連打♪


ハイに成ってるのか? 現実逃避か?

しっかりしろよ!!俺

皆を守るんだろ。

ミミをミウを初をアイを

ケイ、シウ、サジを家族を守ってくんだろうが

ニケの仇を討つんだろうがあああああああああああああああああああああああああああああああ。



 でけー馬だな。

目が合ったぞ。なあ君には俺がどう見える?

勇猛果敢か? それとも 虚勢はるチキン野郎か?


ああああああああああああああああああああああ


 死ねよ死ねよ死ねよ 俺の為に死んでくれよババア。

 そもそもお前達が来なきゃ俺は楽しくやれてたんだよ。

お前達が来なきゃ、、、ニ ケ


ハァハァハァ 死んだ 死んだんだよな。

違う 違う 俺がこの手で この槍で殺したんだ

目をそらすな。

ここは現代日本じゃねーーーンだよ!

理解れよ 俺

理解れよ 自分 

視ろよ 見てみろよ

ハクは一切躊躇してねえ。

あれが これが この世界の普通なんだよ!!

殺らなきゃ 殺られンだよ

俺が始めたンだろ

俺が終わらせンだよ!


ハァハァ このババアの首落とさねーと

ハァハァ その為に用意したんだろ 外科手術だってできる切れ味の黒曜石包丁をさ

くっそ 兜とれねええええ

なんだよクソ。クソ。


うッ 気持ち悪い。

兎や鼠、鳥だって解体しただろうが!

同じ、、、じゃねえ。



「敵将 討ち取ったり!」


終わった 終わったんだよな 終えていいよな


ハァハァハァ 深呼吸だ。

ハァハァ   深呼吸して心落ち着けて。


俺が命じたんだ。殺しまくって千人殺したんだ。


強く強くあれ。

俺は恵比寿 神騙る 騙り神 恵比寿。

終わりじゃない。終わってねえ。

始まったんだよ。


「マレ。  マレ。 Brotherマレええ!」

ハクが呼ぶ。

「お?お?お?おう!」

夢から引き戻された様な感覚に陥るマレ。

「俺達の完勝だな!」

白狼が顔をくしゃりと歪ませ泣き笑う。

周囲を囲む槍隊の狼男、若衆皆も号泣する。

皆、十代の若者達。

彼等が泣くのは嬉しいから。

自分達の大事なものを守りきれた達成感に泣く。

彼等の何倍もの人生経験を有するマレには今だ到達できていない境地。

だから男は演じる。皆の前で演じる。


「ばっかぁ〜。この後の片付けが大変なんだぜ! 取り敢えず、奴等の持ってきた物資接収だ! 死んでしまった可哀想な、お馬さんは俺達で美味しく頂こうか!」


男の言葉に皆から歓声が挙がる。

男は詐欺師。自分すらも騙し演じる役者。





 どこか浮ついた空気。

アル峡谷の底。涸れた古代の川跡。

自然形成された隘路に立つ三百名超の狼人勇士達を前に立つ返り血塗れのマレ。


「あ〜お疲れ〜。え〜〜〜」


皆を前に口にする言葉を探す。

それは不意に。


「恵比寿!」


一人の若者が拳突き上げ叫ぶ。

近頃、海浜の村では、とんと使われ無くなったマレの別称。

 オレサマ カミ エビス アルヨ


「恵比寿!」「恵比寿!」「恵比寿!」「恵比寿!」


一人が始めた恵比寿コールは次第に皆へと伝播していく。


  此の日、此の時、此の瞬間より

 男の尊称は恵比寿となる。



 暫し皆のさせたいようにし頃合いを見計らい両手を挙げ万歳のポーズで場を沈める。

 今から喋るぞ?と。


「おk おk 皆、良くやってくれた。この戦、俺達の勝利だ。皆の協力と奮戦に感謝している。ありがとう。」


 短い戦勝挨拶。

次には休憩時間。水を飲み一息つく大半の狼人達、中央ではハク、セン、マク、タン、ホウと隊伍長とマレが車座になり座り竹筒水筒片手に各自からの報告と事後処理の担当を決めていく。

 槍隊に軽い切傷を作った者、数名の報告に胸をなで降ろすマレ。


「左翼弓隊、マク、ホウは死体の身ぐるみを剥いでくれ。使える物はありがたく使わせてもらう。死体は一箇所に集めて燃やす。」


「右翼弓隊、センとホウは生き残った馬の確保。もう助かりそうに無い馬は出来るだけ苦痛なく殺してやってくれ。で〜馬の死骸は早急に血抜き頼む。馬肉は村に送って塩漬けだな。皮や内臓、腱使える部位は余す事無く使いたいが、まあ数多いしな。村から人手や荷車送ってもらうか?」


「ハク、槍隊から三人程、村へ戦勝報告の人手だしてくれるか。急がなくていい、歩きで帰れよ。で村から人手と荷車を送ってもらって。んーで、ハクと槍隊残りは俺と共に敵軍列跡最後尾迄巡回。気を抜くにはまだ早い。槍を持って警戒して進むぞ。最後尾の物資確認と確保業務だ。以上だ。」


「あの、私は。」

車座の外、マレの斜め後からおずおずと手を挙げるユウ。

 鬼女と目を合わせたマレは暫し首を傾げ思案した。

「取り敢えずよ? 俺のヘルメット返せ。」

今だ被るフルフェイスヘルメットを返却させ、取り敢えず石斧女に用はない!と宣言され涙目のユウ。

「んじゃ、石斧女は俺の後着いてこい。その都度雑用振るから。」




 爆音と爆風。

 逃げ惑う人族。

混乱、混沌の後に訪れたのは静寂と晩秋の柔らかな陽射し。

 全てが嘘であったかの様にのどかで。

しかし、カラチが岩陰から瞳を外へとのぞかせれば、矢を無数に受け倒れ伏す農兵の死体が目に入る。

 何が起こった、どうすればいい。

何も決められ無いままに過ぎる時間。

 そして、それは現れる。

狼人を従えた、輝く衣を纏う異形の人族の雄。

髪は顔は泥塗れの。

体は乾いた血塗れ。

槍を手に荷車の物資を見聞する。


「ひッ」

「大丈夫、僕が僕がチョコちゃんを守るから。」


 荒々しき狼人を従えた異形の人族に怯える少女をギュッと抱きしめ今迄言えなかった言葉を告げる。


  ニチャァ〜


 カラチの心臓が跳ねた。

 早まる心拍数を抑え込む様にチョコをギュッと抱きしめる。


 今、異形の男と視線が交わった。


 とても卑しく、醜悪な笑みをカラチとチョコに  

 向けて。


 カラチは雄の本能で異形を睨み返す。


 一歩、一歩と二人が潜む岩陰へと狼達を引き連

 れ近付く異形。


 “シャァァァ”


 それは本能、威嚇の唸り。


 しかし異形は怯まない。


 それどころか更に下卑た笑みを深める。


 体がガクガクと震える。


 只、チョコを強く抱きしめ、震えながら異形を

 睨めつける。


 異形の雄が近づく。もう顔の真横まで。


 ああ、生臭く、温かな吐息が耳にかかる。











「そこだ、優しく尻を撫でつつ、彼女を真正面から見つめて ぶっちゅう〜だ ぶっちゅう〜と唇を重ねるんだ。いけいけ、今こそ千載一遇の好機。男になれよ。いつするのいまでしょ。キス キッス Kiss!」

 

  

       ( ° д ゜=)(△△) シャぁ?


 ニヤニヤする男が猫耳元で囁く言葉にカラチは脱力した。

マレの肩越しに白毛の狼が顔をだす。

ハクは槍を肩に担ぎながら。


「お〜い 助けにきたぞぉ〜、、って、ひっでえな。立てるか?帰してやっから着いて来いよ。」


 カラチとチョコ、二人の穴が空けられ縄が通され血塗れになった掌を見て顔を顰める。

自分達へと向かられたハクの同情。

更に後ろでは晴れ晴れとした表情で槍を握る狼達。

 正午の陽光がまるで後光の様に彼等を照らす様にカラチは羨望と嫉妬、そして自己嫌悪に陥る。

 こちら側とあちら側。

 此方と彼方。



 峡谷入口。

ユウが奪った物資の鍋で湯を沸かす。

「じゃ始めるぞ。」

マレは黒曜石ナイフを握り締めカラチの手の甲から生える荒縄を切っていく。


「次、縄引き抜くから、123カウントな、いーち エイッ!」

「にぃぃぃやぁぁぁぁぁッ」


 正に鬼畜の所業、自身が宣言したスリーカウントを無視し、心構えが出来ていないカラチから縄を引抜いた。


「はい、乙、乙。じゃ毛剃るぞ〜。」


 涙目のカラチを放置し手の甲の毛を剃るマレ。

この後、湯冷ましで傷口を洗い、マレの自宅救急箱から用意した貴重な消毒液で傷口を消毒。

煮沸済み、鈎針と綿糸にて縫合を行った。

カラチ、チョコ共に涙目で歯を食い縛り耐えるのだった。


「ブラザー、まだ息のある兵はどうする〜。」


 縫合の終了と共にハクがセンを伴い指示を仰ぎに来た。


「本来であれば救命後、捕虜としてレキ国と交渉するが、現行レキ国との正規交渉ルートは無い。よって、殺せ。せめて一突きで苦しみが長引かない用に殺してやってくれ。」


“SIR YES SIR”


マレの指示を敬礼にて返答したハクとセン。

次にはホウが青銅の大皿を手にやってくる。


モグモグ「マレ〜、お肉焼けたよ〜。」


接収した皿と塩、絶命した馬の肉を載せ持って来たホウ。

ホウは焼きたて肉一切れを噛み締めながら。


「あーありがとな。流石に俺は今は肉は遠慮する。二人は肉食うか?」

問われカラチとチョコは首を横に振った。


「あー、じゃあ麦粥用意するよ。」

ホウの気遣いに感謝し遅い午後三人は麦粥を啜り、ホウとユウは焼けた馬肉に齧り付いた。

「で、猫人族には何があったんだ?」

食事と共に彼等の事情、現状、状況を尋ねていく。

 判ったのは騎兵百騎程にて集落が襲撃を受けた事。家々が焼かれた事。

死者は多分ない。怪我人はでた。

カラチとチョコだけが攫われた事。


「ホウ、俺、急な仕事が出来た。ハク達と後の事頼んだ。夜には帰る。」


「あいよ〜。皆には伝えとく。」モグモグ


「カラチ、俺に付き合え。」


 猫人の若者を後ろに乗せ、原付が平原を駆け抜ける。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ