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第44話 交差路 交差する運命(2)


「縦と横の長さを掛ける。するとこの四角の面積が解る。ここ迄は憶えてるか〜?」


子供達を前に久方振りの青空授業。

木片を手にし説明するのは四角の木片を

組み替え。


「ほら、こー組み替えるとな? 三角形になるだろ? 面積は四角も三角も一緒。例えばこの三角形の板をこ〜連ねてくとどうだ?どうなる?」


 様々な木片を組み替え様々な形状の面積、体積の求め方を説明する授業。


 「はい、今日はここ迄。また当面は皆で復習授業よろしく。分かんない事は聞きに来るように。午後はロレの職人さんのお仕事を見学させてもらいなさい。」


終業の挨拶と共に教師、生徒共に一礼し解散する。

午前の授業を終え九月中頃、晩夏、初秋の青空を見上げ、ふぅと吐息し。


「まだ発酵熟成不足だが幾らか加工しておくか。」


村外れ、硝石丘へと足を向けた。




 午前は子供達に勉強を教え、午後は硝石丘の土を水溶きし加熱、冷却加工する日々を過ごす。

職人の休日にはハク達も巻き込み作業する日々。


「タン、休日に皆を集めて槍の柄造りやれそうか?」

「いけると思う。凄く楽しみ。」

「ブラザーできたぜ。」


笑顔を見せるタン、加工し出来上がった結晶を見せるハク。

マレは義兄弟五人を集め。


「今日迄の作業内容は秘密だ。皆は俺達が土いじりをしていると思ってるだろう。いやまあ、これ肥料にもなるから間違いじゃないんだけどな。」


 義兄の言葉に無言の頷きを返す五人。

男の行う事は常に彼等の想像の上をいく。

今回もまたと。


「この結晶は硝酸カリウム。今後、皆の家が出来上がり次第、一丁に一つの割合で公用地に硝石丘を作っていく。今から作って、、、う〜ン 数年後には同様の作業にて硝石を取り出す。公用地硝石丘の管理をマクに硝石の取り出しをタンに頼む事になる。ハク、セン、ホウは二人を助けてやってくれ。その時が来たら人員も増やしていく。この先の加工は新築した作業小屋で行う。すまんが休日は俺ン家(おれんち)集合な。」




 それからは作業小屋に籠もる日々。

休日にはハク達も共に作業を行う。


「今作ってる物は火薬。火を着けるとドカン!と破裂する。お前等、爆発って見た事無いだろ? あ?っと言う間に、すッ!て感じ?ドカン!次の瞬間に、お前はもう既に死んでいる? うん、本気マジでヤバいから本気で。火気厳禁。好奇心で火着けるなよ?本気で次の瞬間 “アベシ!” だからな? マジ本気マジ本気だからな?」


 木炭をすり鉢で摺り硫黄を加える五人の手が止まった瞬間だった。


 マジで押すなよ ( ° д ゜)

 本当に押すなよ?のお約束いらないからな?


 その後硝酸カリウムを加える作業の真剣度合いも増すというもので作業を終え小屋を出るとハク達だけでなくマレも脱力にぐったりする。

「お疲れちゃん。飯喰っていってくれ。」

新築の別邸にて皆で食卓を囲む。

ハク達と共にする夕食にケイ、シウ、サジの三人の顔も綻んだ。

 

「はぁ~♡ この塩茹で枝豆、美味すぎる。」

「この南瓜かぼちゃ?甘いね。うん美味い。」


枝豆に顔を綻ばすホウと南瓜の甘味に驚くマクを前にしマレは申し訳なさそうに告げる。


「すまんが食せるのは此処に有るだけだ。今ある物は次からはマクを中心に婦人部と協力して栽培して増やしていって欲しい。ニケ、アイもマクの手伝いを頼めるか。」


「はい、マレ様、精一杯やらせて頂きます。」

「頑張ります。」


初期から家庭菜園を手伝っていた二人の鬼娘。

ニケが恭しく、アイは意気込みと共に返事を返す。

新たに出来た開墾地に多数種の種が今後蒔かれ、マレの自宅家庭菜園はマレの家族が管理していく事となる。

そして、

「皆で食せるのは来年かな?」

マレの言葉にホウは大きく凹んだ。


「俺の じゃがいもおおお!さつまいもおおお!」    

(TдT) ホウ号泣ス


(*´ω`*) あ~芋焼酎造りチャレンジしたす


マレの脳内は今日も平常運転。





 食後の歓談。

自宅のパソコン前に野草茶と共に陣取るマレと狼人五人。

「ま〜これ観てくれよ。茶ぁ飲みながら。」

この日、観せた動画は自分達が生産に関わった黒色火薬に関する動画。


 画面の中で鉄筒が爆音と共に火を噴く様にハク、セン、マク、ホウ、タン、全員が首を傾げた。

 カメラが的になっていた具足鎧に近づき鉛玉の貫通跡を接写するが今一つ、その凄さを理解しきれていなかった。

 まあ、凄い?よね。うん、でも重籐弓も凄いよ。最近は時間を掛け素材の質も高めたし重籐弓、本気ヤバい。うん。

 これが五人の共通認識だった。ただ、、、


「か、かっけぇ〜。」

「ン?そうか?んん、まあ、かっこいいが、俺は重籐弓派かなー。」


 浪漫砲、もとに火縄銃に男心くすぐられるタンに幾ばくかの同意をせざる得ないハクだった。

二人の温度差にマレはクツクツと笑うしか無い。

そしてマレにとって火縄銃の生産は最初の一歩に過ぎない。

 遠くない未来、皆が識る事になるだろう。


「ほら」

マレは自身の蔵書の一冊、歴史雑誌の火縄銃特集号をタンの目の前に差出した。

表紙の写真を見て少年の様に瞳を輝かせるタン。


「火縄銃は一度撃つたびに火薬を消費する。」

「マレ! これ模様を彫ったの?」


 雑誌の表紙を捲り見開きには精緻な装飾を施した火縄銃が写る。

 武器にして芸術作品。これもまた男の浪漫。


「ねえ、マレ? この火縄銃?って、あの〜ロレの職人に造ってもらったぁ〜。」

「そう!あの、鉄筒ぅ〜。いや〜チヨさん、ええ仕事してくれたわ。」


 次にはマレが部屋角に視線を送ればタンも部屋角を見る。

畳の上に転がる数本の鉄筒。


「明日から仕事終わっても体力残ってたら自宅集合な。火縄銃の小物部品造るぞ。」

マレの笑顔にタンは笑顔で返す。





 忙しい日々に忙殺されていく。

子供達の授業に読み書き、算数に理科と体育を加えた。授業内容は小学生程度を目安に。

 午後からは作業小屋に籠もり色付きではあるがビーカー、フラスコ、金属器具に和紙等を用意し

石油の精製を試す。


「あー温度計必要かー。」


 作業小屋内で度々漏れる男の独り言。


「陶器に酸化鉄、バリウム、ストロンチウム?を混ぜて焼く?ほうほう、磁石か。」


「えーと?チョークか酸化鉛を混ぜると?無色ガラス? チョークかー、黒板欲しいよな。」


「ガラスが無色なら眼鏡、いやまず望遠鏡作るわな。」


「あれ?無色ガラス作れたら、、、温度計もいけるんじゃぁ〜。うはww俺は天才! 後で無色ガラスの作り方検索してぇ〜。」


「あー時計欲しいな、、、取りあえず日時計でよくね? 公用地に日時計を〜」


独り言を呟き、あちらこちらに思考を脱線させつつも仕事を進めていた。







 秋深まりし、その日。

一人の女が片膝を突き数段高き場所、玉座に向かってこうべを垂れる。

「是非、是非とも、私の抱える兵も良き実戦経験となりましょう、陛下、どうか、どうか、御裁可頂きたく。」


 下座にて願い出る歳の頃、五十の女はレキ女王国西方、マキウス砦と周辺一帯を治める大領主にして貴族、ルワイ・ランシール卿。


 上座にて相対するのは、この国の女王、君主レキ・アマノ八世。

女王の玉座脇に立つ王女、レキ・アルウルに宰相が耳打ちする。

 ルワイ卿に〜〜〜とお伝えくださいまし。


「卿、そうは申されましても蛮地の獣は減るばかり。今年は見送ると決まったではありませんか。」


 女王位継承権第一位、王女アルウルの公務の一つ。

公式の場にて宰相の意見を自らの意見と称し発言する。

お飾りの王女で次期女王 レキ・アルウル。

全ては形式で様式。

この後は女王と宰相、側近にて前もって決めた結果を女王の口から伝えるのみ。

 深く頭を垂れるルワイ。

玉座横に侍る宰相が女王に一礼し裁可を促す。


「猫と鬼は減少傾向。奴等の住む穴倉は焼き払え、しかし殺すのは控えよ。さらに奥の獣共は近年逃がしてばかりであるな。間引く、奴隷にする、好きにせよ。但し住処はきっちりと焼き払う事を命ず。あと、()()共は当面放置で良いだろう、今はな。」


「ははッ。ありがたき幸せ。此度の狩り、我が兵どもも喜ぶこと。レキ女王国の治世よ永遠なれ。」







「ブラザーマレ。サンマが豊漁だったのでもらってきました。」

夕方ハク達五人が訪れセンが竹籠一杯の秋刀魚をニケへと手渡す。

 秋の収穫。団栗拾いに干柿、葛粉作り。

昨年よりも増えた家族と仲間達と行う作業の日々。


「そろそろ樹液集めの時期か?」


 喫茶の為のメイプルシロップ集めを狼人族皆と行うかとマレが話せば皆の顔も綻ぶ。

 マレが狼人族と交流を始めて以降、彼等の生活様式、食生活も大きく変わっていった。

今日も海浜の村では狼人の女達が漬物を漬ける。

 寒さ厳しい冬の間もやるべき事は沢山あり、大量に仕込んで置いた魚醤の加工とロレ国への輸出。

正月行事も予定を立て、晩冬初春には食用野草採取に筍掘り。

筍は塩漬けしメンマを造る。

年間を通しての製塩作業はロレ国の大麦、燕麦と交換される。


「ニケ、秋刀魚の処理お願いできるかな。俺は米炊くよ。」


 はい、と返事をし微笑むうら若き乙女。

サジが()()手伝いますと、大家族故、釜にて雑穀入りの米を炊く手伝いを申し出る。

ケイとシウがニケを()()()と呼び秋刀魚の鱗剥がしを手伝う。

アイがニケを()()()と呼び下の娘達、初、ミミ、ミウを風呂に入れる。


「ブラザー、手伝うぞ。」

「マレ様、私達も。」

「ええ、ええ、お客さんは茶でも飲んでて待っててくれ。風呂空いたら入っおけよ?」


 夕食の準備を手伝うと申し出てくれたハクとローレン、リンレンを自宅で休ませる。

ならばと、族長の息子としてロレ国職人団の代表者二人と作業の進捗を話し合うハクと仲間達。

 海浜村でも職人達が脂ののった秋刀魚の塩焼きに舌鼓をうっている頃だろう。

 海無し国のロレ国民には海産は高級食材であり概ね好評であった。

 男はこの異世界で血の繋がりの無い家族を手に入れた。



 “いただきます”

広さにゆとりある別宅の食卓。

陶器の皿に乗る秋刀魚の塩焼き。

陶製茶碗に山盛りに盛られた雑穀米。

漆塗りの木椀には潮汁。

小鉢に盛られた青菜の塩漬け。

夕食を前に全員が手を合わせ感謝の言葉を述べる。

 日本のいただきます文化が、此処でも根付く。


  (´・ω・`) あー味噌、醤油ほしす。

あ!? (ㆁωㆁ) 野菜とスパイス煮込んでウスターソース造ればいいんじゃね!?

・・・・(*´ω`*) もう、いっそカレースパイス

 おビネガーをロレから仕入れて、、、

あああん!?マヨはサルモネラ怖えYo!!('A`)

消毒液作らなあかんやん(´・ω・`)


「あの、、、マレ様、味付けがお気に召しませんでしたか?」

 俯き、モソモソと雑穀米を箸にて口に運びつつブツブツと呟くマレを恐る恐る下から覗き込むニケ。

 そんな二人の様を見て美食家ホウは自生柑橘を秋刀魚に搾り掛けながらゲラゲラと笑う。


「あ〜駄目駄目、マレ今考え事してたんだよ。」

ホウはニヤニヤと笑いながらさらに。

「ご飯食べながらの考え事だから、これは期待大!」


え?と疑問の表情を浮かべるニケ、マレの考えなどお見通しと秋刀魚の身を箸で摘み雑穀米と共にかき込むホウ。

ハク、セン、マク、タンもクツクツと笑い、釣られて場の皆も笑いだす。

油灯の仄かな明かりの下。

温かな団欒の時間。


「あ〜すまん、すまん。考え事してた。うん、ニケの作ってくれた夕飯、今日も美味しいよ。シウ、ケイ、サジも手伝ってくれてありがとな。アイちゃんも妹達の面倒みてくれてありがと。」


 男の笑顔、家族皆が笑顔を浮かべる。

その後、秋の秋刀魚は美味いの話しから、そろそろ鮭漁の時期だと話しが移っていく。

鮭漁に興味を示すサジ。

鮭の塩漬けをロレに輸出するか?とローレン、リンレンに話しを振るハクとセン。

初に潮汁のお代わりを尋ねるニケ。

ケイとシウ、初も陶器、陶磁器を造るのが上手くなったなと褒めるマレ。

いつ何時も仕事の話しばかりするマレにミミとミウが。


「「部族畜乙」」


言われマレも苦笑いで誰に似たのやらと独りゴチる。

当然、皆口には出さないが分かっていた。

父親似だよねと。




 夜、ローレンやニケ等も寝静まった時間。

炬燵机に自家製焙煎麦茶を置き、マレとタンは火縄銃用の真鍮小物部品を加工する。

 周囲ではマレが自作した教材に楽な姿勢をとりながえら目を通すハク、セン、ホウ、マクの四人。


「マレ?ここどういう意味?砂糖作りの、ここ。」

「あーそこな。加工した物を布に詰めて振る。水車の上下運動じゃなく直接回転運動で振れば楽でいいんじゃね?マク、甜菜の栽培具合はどうよ?」

「いけるんじゃないかな〜。」


 砂糖、甘味料作りの進捗を聞きホウがニヤニヤしだすがマレは当面食えないぞ?と伝えれば目に見えて落ち込むホウだった。


「当面、砂糖は備蓄して風邪や下痢の薬として提供する。」


「ブラザー、ここ、刀剣より槍。弓より火縄銃が良い。刀剣は使い勝手が良いが弱い。これ本当か?」


 マレが編集した武芸書を手にハクが尋ねる。

自身の持つ重籐弓が火縄銃に劣るのが、どうも納得できないらしい。

マレは本当、本当、有名な剣豪の言葉だぞと。


 センが軍略書を手に尋ねる。

軍事訓練、第一整列の動作教育。第二、整列行進等。

 これで強くなれるのか?さっぱり分からない。

マレは懇切丁寧に集団戦闘を説明していく。


「もう集団行動訓練始めてるだろ?」


「は?」


「ほら、学校の授業。あれ自体が集団行動訓練だ。でお前等、班長だろ?」


 長兄の言葉に義兄弟皆が絶句した。

学び始めた教養。彼等にとって男は千里、万里を見通す賢者。


「全員、韓非子まで読めよ?」

「え〜〜」


ホウは一人嫌そうな顔をする。

更けてゆく夜、狭い部屋、六人で雑魚寝する。



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