第43話 交差路 交差する運命
広く豪奢な部屋。
広くふかふかの寝台。
全裸の男女。男は少女を胸に抱き。
「アルウル、気になる噂を聞いたのだが。」
男の胸に頬を寄せ見上げる少女が噂の内容を問う
「秋頃になると北の地へ入り獣人と戦うとの噂だ。お前も行くのか。」
男の問に、何だ、その様な事かと、興味を無くし男の温もりに微睡みながら。
「今年の秋は無い。一部の獣が減り過ぎてな。そもそも貴族共の嗜み、娯楽だ。王族の私が行くことは無い。」
男は安堵の表情を自身の胸の上で微睡む少女に向け優しく語りかける。
「よかった。お前にもしもの事がと気が気でなかった。」
一つ吐息し少女を抱き寄せ抱きしめる。
獣で
嗜みで
娯楽ね
男の行動と想い。
「兵士に小金握らせて聞いてきたで。今期は無い。」
街路での待ち合わせ。
御者席から告げるローレライ。
マレは情報収集の礼を告げローレライの隣、御者席へと腰を降ろす。
馬車は女王都中心地、高級な店が軒を連ね物見遊山の観光客が行き交う道を行く。
「ローレ、馬車を停めてくれるか。」
「なんや?」
男の視線を追い一人納得する。
道の端、建物角に座り込む年端もいかぬ物乞いの少女。
物見遊山に訪れた女達が少女を囲み一枚の銅貨を手渡す。
彼女達とて裕福では無い。それでも精一杯のおめかしをし女王都見物に来た農婦達。
華やかな中央大通の光と陰。
「なんや?連れて帰るんか、ええで。」
ベレー帽の少女の言葉にマレは無言を返す。
只、幼い物乞いの少女を観察していた。
如何にもガラの悪そうな一人の女が幼女に近づいていく。
幼女の前まで来ると身を屈め木椀に手を突っ込み数枚の銅貨を握りしめ自身の上着ポケットに入れてしまった。
マレは馬車を降りる。
途中、道に落ちていた小石を拾い上げ弓射用の革手袋にぎゅっと握り込む。
「姐さん。ちょいと道を尋ねたいんだがいいかい。」
普段なら無視を決め込むも男の声だった為、振り向く。
無防備に振り向いたチンピラの顎をマレの握り締めた石拳のジャブが打ち抜く。
理由もわからず短い呻きと共に尻もちを着くチンピラに周囲の道行く人々は立ち止まるが反応は二つ。
立ち止まりざわつく観光客と如何にも女王都住みの身形良い者達は、またかといった風に歩き去る。
これだから下賤の者は。
全てが、この女王都の日常。
マレは道端に蹲るチンピラ女を蹴りつける。
幾度も幾度も。
チンピラは懐の小金を握り締め呻き暴力の嵐が過ぎ去るのを耐えた。
嵐は過ぎ去るのだ。
不意にマレの右脚が重くなった。
物乞いの幼女がマレの右脚にしがみつく。
必死の形相を向けて。
視線を脚へと向かれば涙を零す幼女と視線がぶつかった。
嫌なものを見た。
これだから女王都は嫌いだ。
お前はこの後、こう言うのだろう?
「やめて! ルルが悪いの! 全部ルルがッ!!」
泣き、懇願する幼女を振り払いマレは馬車へと戻る。
御者席を乗り越え荷台、幌の中へと身を滑り込ませた。
一部始終を無言で見ていたローレライは声を掛ける。
「あの女、メイとサンディに跡付けさせたで。一度、女王都の外へでよか。」
ああ、頼むと力無く返し荷台の中で脱力する。
酷く酷く疲れた。
「ローレ、いつもすまない。」
背後からの力無い声にええんやと笑顔で応える紅髪ベレー帽の少女。
暫し無言の時間が流れた。
女王都の端まで馬車を進ませローレライは語るように話し出す。
「あれなあ、多分あの辺りの元締めやわ。物乞いの子供を囲って観光客から金を得るんや。行商しとりゃあ、よう見る光景やで。」
「ロレ国でもか?」
「あほ言え。他所もんがうちでやりおった時、母ちゃんが、そいつ等馬で市中引き回しおったわ。むちゃ怖いで。そん時の物乞いの子がラミスや。だからロレ国にはおらん。子供は地域皆で育てるもんやいう風習がある。マレのおったとこ、天界にはおらんのやろなぁ。」
数瞬の沈黙後、いると返ってきた言葉にローレライは驚く。
「居るけど見たことが無い。知識として有る。遠い所のお話し。」
男の話しを少女は黙って聞いた。
「さっきの少女な、、、片目無かったんだよ。ああ、ここでもかって思っちまって。育てられないから子供を売る。同情を引く為に眼を潰す、片腕、片脚を切り落とす。さっきの奴も、そんな子供を囲ってるんだろうな。」
そやなとだけ少女は肯定の言葉を発した。
「ローレ、仕事を頼みたい。先程の女と周辺を調べてくれないか。」
「任せとき、サンディとメイの報告待って母ちゃんにお願いしといたるわ。ロレの兵士女王都に潜らせるわ。対価はいらへん、これは仕事やないで。後々の事考えたら必要になるやろしな。」
すまんと詫びる男にローレライは笑う。
「くっさい仲やろ。」
ルル。この世界の言葉で3。
女王都を出て数日後。
ロレ国へと入り国営交易所へと寄る。
バークス商会に卸した交易品の残りを交易品にする為。
姫、若様と交易所の従業員が駆け寄ってくる。
「若様!待ってましたよ! 壺! 皿!! どこですか!?」
わっちを待っとったんじゃないんかい!?と突っ込みを入れる王女を無視し馬車の荷台に群がる従業員達。
彼女達の話しでは、物を売りにふらりと寄った行商人、交易商が交易所に並ぶ陶器、陶磁器に気付き目の色を変えて求めたとの事。
さらに値札を見て目玉が飛び出す。
値切ろうものなら隣の商人達が自分が自分が買うと言い出し、皆悔しげな表情で陶器、陶磁器を一点購入していった。
「転売ですね。」
交易、それは転売。より高値で売り捌く。
壺を皿を一点買い、仕方無しにロレ産の薄利な品をついでに購入していく。商人達は皆尋ねる。
次の入荷はいつか?
特産品の無いロレ交易所に客寄せならぬ商人寄せの目玉商品が並んだ。
手数料もがっぽりですと興奮気味に話す従業員にローレライは木簡を手渡す。
「今回は小物十点だけや。あと、こんだけの物、馬車に積んでくれるか。」
狼人族、海浜村へと送られる職人が希望する品々や鉱石、食料の数々。
地産品が大量に売れる事に従業員皆が嬉しい悲鳴を挙げた。
「毎度ぉ〜マレ神様々ですね! 福の神様ですか!」
「ん〜恵比寿様は豊漁かな〜。宝の船に乗った神様だね。」
マレの説明に場に集う女達から、おおと感嘆の声が挙がった。
日本の民間信仰。社に祀る御神体は
「海の中の丸い石だったり、サメや海を渡って来た異国の人、渡来人だったり。」
男の次の言葉に皆が沈黙した。
「水死体だったり?サメや水死体で魚が集まり豊漁になる。もしかしたら俺も、もう死んでるのかもな。」
自虐的に笑う男。
少女は怒りの表情を湛え男の手を握り締める。
「マレ!二度と言うな!お前はここに居る。誰もが居らん言うたとしても、わっちだけは絶対マレをみとる!」
男と女。
二人の遣り取りに周囲がニヤニヤしだす。
次は子宝やねと従業員のおばちゃんが言った。
何人もの老婆がマレに手を合わせ拝んでいた。
ありがたや ありがたや
顔を赤くし手を離した第一王女が場の空気を誤魔化すように男の脛を蹴る。
弁慶の泣き所。痛みに地面をのたうち回る。
「な、なんで、俺が、」
その夜、ロレ女王国の城に宿泊する。
夕食後の歓談にてローレライが得た資金を国へ投資する、兵士をレキ女王国に間諜として潜入させる事がライン女王と親子三代に渡り仕えるリンゼの同意を得て決定した。
「ふぅ〜 たまにはサウナも良いよな〜。整うってやつ?」
湯煙に満たされた室内。
蒸し風呂を堪能していたマレ、そこで突如扉が開き外気が流れ込む。
ちょ Σ( ° д ゜)まッ
扉の前に立つは女王ライン。
体を隠すこと無く豊かな胸、くびれた腰、そして畑仕事を嗜むせいであろう焼けた肌を男の前にさらす。
「マレ殿、裸の付き合いも大事であろう。」
マレ、二児の母をガン見しつつ自身の股間に手拭いをそっと掛ける。
ラインは堂々とした立ち居振る舞いにて男の横へと腰を降ろす。
そして一人語りの如く話しだした。
「今迄、多くの英傑、女傑が生まれ消えていった。貴殿は後世の書に、どの様に称されるのだろうか。豪商、稀代の軍略家、有能な政治家。はたまた一代にして国を築いた覇王、覇者。」
彼女の語りにマレは視線をそらし
「只の引き籠もりオタクですよ? 当然、歴史に名前が残るなんて、とてもとても。」
オタクとは何か?理解はできずとも何とも低い自己評価であろうかと感じるライン。
「して、ローレンには手をつけられましたかな? 今より、お義母様、義母上と呼んで頂いて差支えないのですよ。」
まてぃ!? Σ( ° д ゜)
まだ年若い第二王女との関係を問われ驚き次には、むせ返りゃゴホッゲホゲホと咳き込むマレを見つめるラインは不思議そうな表情ではて?と一言漏らす。
「い、いえ。娘さん二人共に手をだしてませんよ! まず、ローレライからして、その様な関係では御座いません!」
慌てふためく男、ラインはマレの股間の手拭いに手を掛け引っ剥がす。
Σ( ° д °;) なんばしよっと
「あら、これは、なかなかに立派ですね。」
(( 'Д`;)) くっコロ
「その積りあってローレンを送り出しましたに、若いよりも年増が良いか? 娘達に妹を造ってやるも吝かでなし。」
(( °ω° ;))あかんやろ!!!
焦り硬直するマレ。次の瞬間、蒸し風呂の扉が勢いよく開いた。
「母ちゃん、入るでぇ〜。」
(´;ω;`) ワイシボンヌ確定演出
声掛けと共に扉前にて硬直するローレライ、全裸で。
「マ、マレ。おのれは何しとんじゃぁぁぁ!!!」
第一王女の怒りの咆哮と共に前蹴りがマレの顔面に炸裂した瞬間。
遠のく意識、、、、
あ〜胸は母親譲りじゃないのね。
翌日、母ちゃんもまだまだ女盛りやなの一言でローレライは話しを終わらせた。
THE (´・ω・`) 理不尽
早朝、ローレライ旅商隊馬車前に立ち一人の虎族の少女が深々とお辞儀する。
「タンノと申します。マレ様、その節は大変お世話になりました。本日よりローレライ旅商隊に配属となりました。よろしくお願いします。」
小綺麗な服を着た元奴隷の虎人の少女タンノにマレはよろしくなと返しニカリと笑った。
彼女もまた奴隷以外の生き方を得られた事に男は胸を熱くする。
ロレ国と蛮地を繋ぐ外要道を抜け平原を通り海浜村へ。
「マレ、まだまだ穀物買い付けるんか?」
「まだまだ。買えるだけ、運べるだけ欲しい。共用地に蔵を建てるからな。余剰分は加工すればいいしな。」
「ふ〜ン。じゃレキと周辺国で集めたる。」
海浜村にて大量の荷を積み込み、次は十一月、十二月辺りに戻ると告げローレライ商隊は旅立つ。




