第37話 交差路 交差する人生(4)
元奴隷であった少女、男児も呼ばれ歓迎の宴が開かれる。
格式ばったものでも無く。
大量の食事と酒、そして会話。
和やかに場は進んでいく。
宴の席にて女王側近リンゼを紹介される。
サウス・リンゼ。リンゼ家三代、サンディ、リンゼ、メイ。サンディの娘にしてメイの母。
サウス家代々ロレ家に仕え、この山城山頂の一角に居を構える。
「んでな!他国の使者が、ほんま極稀にくるんよ。でな、この城みて露骨に表情にだすし。来客用の部屋みて、これだから小国はとかいいよるんや!腹立つは!」
アルコール度数が低いであろう自家製麦酒の入った木製コップ片手に管を巻く第一王女。
酒を好まないマレは社会勉強と割り切り麦酒をちびちびと飲みながらローレライの愚痴を聞く。
ふむ、そろそろか?と感じハク達五人を手招きし呼び寄せた。
「今から話しをしようか。ロレ王家、来客用の建物と部屋。一般女王家からしたら、小さく、調度品もろくに無い。それ言っちゃ狼人族にの立場ないんだが。」
「お前まで言うなや!」
激怒する酔っ払いを宥めつつ。
「まあまあ、待て待て。でな?あの絨毯、あれは良い物だと思うぞ。ものが無いなりに一点、来客の為に良い物を用意する。これが、もてなしというやつだ。」
若くもの知らぬ狼男五人、彼等に対し教養を語って聞かせるマレ。
様々なものを見て、様々な文化に触れ成長を願う親心のように。
五人皆、神妙に聞き、その後ろで、奴隷市から買われてきた少女と男児もマレの話を聞く。
「これを粋、粋に感ずるだな。無いなりに、精一杯のもてなし、これを粋に感じれず、これを察せぬは、心貧しいと、俺は思う。」
何故かローレライ独りドヤ顔になる。
少し離れた席にて女王、第二王女、サウス・リンゼがマレの語りを聴いていた。
年長者、サンディ、リンゼの母が酒杯片手に、
面白い方ですよね、本当に、と男を評した。
暫し、男と第一王女の雑談に皆が耳を傾けた。
「やっぱさ、友好的でない国の使者は無能がいいと、思う訳ですよ、僕は。」
男が語って聴かせる。使者とは同時に間諜。情報の断片から全体を予想し自国の外交判断に活用すべきである。
「城の攻略法を考える使者で無くて良かったと」
「Brotherが使者とか、なにこいつヤバいだな」
「使者に無能を寄越す。この時点で相手国はロレを軽視しているのが理解できる。良いではないか?侮らせておけば。」
セン、ハク、マレの言葉に不承不承に頷く第一王女。
「まあ、そやな。でも、でもな、く、悔しい。」
「侮り、軽視、不覚、情報不足だな。敗北の原因は己の内に有り。敵に勝てる要因は、相手の内に有り。敵に勝つ要因は敵の中にしかなくて、自分が敗北する原因は自分の中にしかないと、兵書の一節にあってな。よくよく考えりゃ当然ちゃ当然の事なんだけど、言われる迄気づかないもんだよな。昔の人は良い事いったわ。」
理。
言葉、文言にて示され初めて多くの人々が気づき理解する。
宴の席、歓談にて語る男の識る理を聞き、ハクがセンが狼人だけで無くロレ国の家臣、文官、王族が男の知見、教養に一目置いた。
「な、なんや、目の前に古の軍略家エーアールがおる。」
(*´ω`*) ほほう、諸葛さんならぬARさんとな?
気になりますやん?
「ARさん?どんな人?三行でヨロ。」
「本気
パネェ
女達。」
ローレライの端的な説明から集団であった事を識るマレ。
歴史、過去が積み重なり現在を形成し未来へと続いていく。
初めて触れる異世界の歴史に胸ときめかせる。
「彼女達は多種多様な職人、武侠、思想家の集団だったのだよ。博愛と非戦を唱え大国に攻められる窮地の国家、共同体を助けて回っていた。」
「で、滅んだのでしょ?」
娘の説明では心許ないと女王ライン自ら集団、エーアールを説明する。
解説に対するマレの切り返しにラインは小さくほうと感嘆する。
「なぜ、わかった?」
「何となく。で陛下自ら語られる、訳ありですか?」
問を問で返した男に女王は意味ありげに笑んだ。
「エーアールとロレ王家は縁深い。何故なら、この城も昔々に彼女達の手によって改築されたのだよ。」
(*゜∀゜) お!?胸熱展開来る?
今、自分が座る、この場所。この山、この城と、関わった歴史上の人物達に想いはせる。
「でもよく、当時の女王、その集団信じましたね。」
王族としての権利、義務。知らない者に軍権を寄越せと言われ、はいそうですかと渡す君主はいない。
マレは思う、だから、歴史は、面白い。
男の問にラインはハァ〜と溜め息を吐いた。
マレも女王の仕草、表情で察する。
あ、歴史あるある、残念な歴史人シリーズか?と続きを待った。
女王 ロレ・ラインは先祖とARの縁を語る。
当時の御先祖様が大国に宣戦布告された。困ったと言いながら暗い顔して夜の酒場で呑んでいた。その横で、たまたま、エーアールの集団、彼女達は宴会をしており、辛気臭い御先祖様に、お酌しながら、暗い顔するな、とりあえず飲め。兎に角飲め。私の酒が飲めないのか!?飲めと、彼女達と酒を酌み交わし愚痴を聞いてもらったそうだ。
話しを聞きながら、彼女達は。
あーそれはガーッと城を改築してだな。
民を城に引き入れてバシッと弓撃たせるかガツンと投石させてな?
夜明け直前に少数精鋭にて本陣ドーン!
大将首スパーン!
そこから〜ねえねえ今どんな気持ち?
今なら停戦してあげなくもないんだからね!
と提案されて、話しを聞いてもらえて嬉しかった
御先祖は、そのままエーアールを城に招き、更に飲み明かしたそうだ。
で朝起きて頭痛てー、二日酔いだ。あー外が騒がしいなと思いながら起きて外を見れば、彼女達がロレの民を集め城を改築中。
御先祖様は、それを眺め、あー酒飲もうとか思ったらしく飲みながら一日中、城の改築を眺めていたそうだ。
そして一日の作業が終わると共にエーアールと酒飲んで宴会を繰り返す日々を送っていたら。
何故か敵国が、もう勘弁して欲しいと停戦を申し入れてきたそうだ。
語り終えた女王は瞑目する。その表情は渋く。
「面白いお話しですね。大変為になりました。」
「いや、お恥ずかしい。為になるも何も御先祖様は、、、」
語尾が弱々しくなる女王ラインに己が言葉を被せる男。
「いえ、ロレ家の当時の御先祖は、人誑しですな。一種の才です。此奴の為にならと思わせる何かを持っていた。人徳、魅力を持ち合わせ人を惹きつけた。」
男の言葉に、こそばゆいものを感じ伏せていた視線を上げれば。
マレは柔らかな視線を酔って微睡、娘、ロレ・ローレライへと向けていた。
女王ラインも又微笑を娘と男に向け。
後に語られる男の物語。
義と情の男、恵比寿。




