第22話 Never let you go
陽が落ちる前に二台の荷馬車はルール街道交差路を通過する。
この時、男が顔を背け俯いたのをローレライは
何とはなしに察した。
「わっち等は街外れで野営する。ヨシツネも泊まってき。金貨も貰ったことやしな。ご飯くらい食べさせたる。」
「宿使わんのか。」
「貧乏や全部貧乏が悪いんや。」
ローレライは拳を握り締め俯きさめざめと泣くが何処か笑える感が拭えない。
「俺、鍛冶屋寄りたいから。」
「よし、わっちもついてく。セイン一緒に行こか。」
虎族の男はわかったと告げ槍を手にした。
身長はおよそ190、槍は230cm程だろうか短槍部類かとマレは視る。
鍛冶屋では娘のスズが出迎え、オーダメイドで注文をだすと、ひどく喜んだ。
鍛冶屋の女主人に地面に図を描いて説明する。
「分かった、鉄輪は有るから加工して明日の昼頃には渡せる。因みにどんな使い方するんだ?」
「こう、竹の上に置いて槌で叩くわけ、で両サイドのハンドルで下に押す。竹は繊維に沿って割れる。」
「なる程な。」
「手付け金は必要かい。」
「ン?いらんだろう。兄さんが取りに来なくても、こういう便利な物は売れる。」
女主人は地面に書き込まれた設計図を今も見ながら頻りに感心していた。
雑貨屋へ行くと伝えれば二人も付いて行くと言い出す。歩きながらの会話。
「竹で何か作るん?」
「何かってか竹の用途は幾らでもある。材料にして良し、食べてよし。」
「えぇー食べるんけ?」
「土から芽がでたら掘り出すんだわ。若い竹、竹の子供で筍。此方の人は食べないのか。家には筍の塩漬物があるぞ。」
男の話を半信半疑で聞くローレライ、少女の後ろを無言で付いてくるセイン。
付き従う虎人は厚手の革鎧を着用し槍を持つ。彼が醸す空気からか通行人は道を譲る。
雑貨屋、マレは革袋、木製食器、綿の服、外套、水筒等を購入した。
金貨を出すと店主は渋い顔になる。金貨お断りであった。
建て替えてやると告げ、ローレライが銀貨で精算する。
「金貨不便だな。」
「贅沢いうなー」
マレの脚に決まる少女のローキック、小柄、非力と痛くは無いが。
時間を経る事にローレライの態度が距離感が近しいものになっていく。
荷馬車にてローレライに金貨を渡し釣り銀貨を貰う。
「なあ、悪いんだが金貨十枚程両替してくれないか?」
その場の全員が唖然としローレライはふらりとよろめきセインに支えられた。
「ン?何か問題あるか?」
「大ありじゃボケえええええ!」( # °д°)
「何か怒られたでゴザル。」 (( 'Д`;))
「解ってんの。金貨十枚いうたら麦、百袋は買えるんやで!うちらの様な貧乏商会に、そんな銀貨、銅貨無いわ。」
「ン〜そうか〜。」
全く悪びれた様子なく応えるマレに呆れる旅商隊の皆。
「ついてき!この世間識らずのボンボンが!両替商連れてっちゃる。」
「あんだって?私しゃボンボンじゃねーよ。神様だよ。」
ローレライ、無言の飛び蹴りが炸裂する。
仏頂面のセインがぷっと笑い、旅商隊皆が笑った。
案内された両替商、少量の手数料を支払い、大量の銀貨、銅貨を受け取る。
「おい、ボンボン。渡された金は、その場で枚数確認するんやで。」
プリプリ怒るローレライ。余計な一言を敢えていうマレ。
「あたしゃか」
全て言い切る前に蹴りが入れられた。
セインが笑い、両替の窓口対応女性は苦笑する。
露天で買う麦粉を練った平焼き生地を先程購入した皿にのせて貰い、水筒を渡し水を詰めてもらった。
歩きだしてすぐ、立ち止まり振り返る。
「付いて来ても、面白いものなぞないぞ。先に野営地に戻っててくれ。」
「うっさい、ボンボン。世間知らず過ぎて心配になるわ!」
神さまと宣えば黄金の右ストレートをと構えたローレライ。
マレは、お節介がと一言。
セインが注意を促す。
「もう陽が沈む、用があるなら早めにな。」
茜色に染まる、ルール街道交差点。
あの時と変わらず少女はいた。
近付き、しゃがみこみ、少女と目線を合わせた、酷く虚ろな瞳。
どうしていいか。
どう接すればよいか。
わからず。
手を伸ばし。
酷く軽い少女の身体を抱え。
歩く。
ロレ・ローレライは男の背を見ていた。
幼子を抱え狼狽える様は滑稽。
地面に置かれた、ぼろぼろの莚と欠けて、くたびれた木皿を拾いあげる。
あの少女の資産。
人目を避ける為に移動する男にローレライとセインはついて行く。
「難義な性格やな。」
ベレー帽を深く被り呟いた。
陽の落ちた街道脇の植栽。木の幹を背に少女を座らせ購入した品々を並べていく。
「食べるといい。」
麦粉の平焼きパンと熊毛皮の男を数度見比べる少女は我慢できず平焼きパンに手を付ける。
「水筒、水淹れておいたから。此処に並べた物は全部君にあげよう。」
革袋、綿の服、防寒着、外套、革の靴、目の前に並べられた物に少女は戸惑う。
最後に小袋を握らせる。
「銀貨、銅貨を入れてある。俺がしてやれるのは、ここ迄だ。強く生きて欲しい。」
立ち上がるマレ、見上げる少女。二人の間に会話無く。ローレライへと顔を向け。
「あの子の着替え手伝ってやってくれないか。それで、さよならだ。」
無言で頷き返すローレライ。
街道脇、独り奥へと歩いていく。
男の行為は犬猫に餌を与え追い返すようなもの、
僅かな施しはしよう。
だが責任は負いたくない。
逃げなのだ。
“誰だってそうだろ”
陽は落ち周囲は闇に、空には月。
一本の木、太い幹を前にして。
「糞がッ」
行き場の無い感情を吐き出す用に幹に拳を叩きつけた。
怒、哀、何よりも無力感。
“あああああああああああああああああああああ”
癇癪を起こした子供の様に巨木を殴る。
皮が捲れた、血が滲んできた。
心晴れず、拳を打ちつける。
声は言葉にならない絶叫に、いつしか慟哭となり、渾身の拳を叩きつける。
「ヨシツネ、お前はなんも悪くない。」
男は木の幹に額を押しつけ嗚咽する。
女は後ろ背を見守る。
「駄目なんだよ。無駄なんだよ。意味がないんだよ。俺は無知で無力で非力でちっぽけで。自分は悪くねえ。自分は良い事をしたって言い訳ばっかで、あの子に笑って大丈夫だ、俺が何とかしてやるって、言ってやれねーし、何もできねえ。あの子だけじゃない。全部が嫌になる。」
男の膝が崩折れる。
女は近づき寄り添い、抱きしめる。
「俺は オレハ」
恥も外聞無く、女の腹に顔を埋め、鼻水と涙に塗れる号泣した。
女は男の黒髪に、そっと手を添え、優しく撫でる。
「ヨシツネは、本とボンボンやな。でも、それでええと思う。」
「ボンボンじゃねえ、神様だって」
男の涙声、最後は掠れ消える声で。
「はいはい、気の済むまで泣きな。」
抱き合う二人、観ていたのは、月と虎人だけ。
稀人のちに述懐す
303 マレ
ローレライ、思ってたよりいい子だた
304 名無しさん
You もう告っちゃいなよ
305 名無しさん
ローレライは俺の嫁
306 予告さん
テーテレテンテンテーン テッテーテテッン
出会ってしまった男と女。嫉妬渦巻く女の世界
「両者、男の腕を引っ張れ〜い。
引っ張り奪い取った方のものとす。」
次回予告 「大岡越前裁き」
真っ二つに引き裂かれたマレの体は戻るのか?
其処に現れた黒ずくめの男。
「そのオペ、金貨100枚で引き受けよう。」
307 マレ
∑( °д ( °д(°д °;)
ジェットストリーム なんだってー




