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第21話 幸運の神は黄金の手触り


 商会前。


次はいつ会えるか。 いつとは約束できない。

それだけの言葉を交わし別れる。

振り返る事も無く大通りを歩く。

通りをわざわざ大通りを横切り左右の商店を見て歩く。

建物の狭間、丁度よい物陰を見つ滑り込んだ。

周囲を確認しメモを取る。


レート 

 銅貨30:1銀貨 銀貨20:金貨1

 金貨1枚 6〜8万円程度?

 城北門前 バークス商会 王室御用達

 取扱い 香辛料 家具 日用品 雑貨

 レキ女王国

 王女 レキ・アルウル 16歳

 女王 レキ・アマノ八世

 公爵家 娘 レキス・アーシス 20前後


 素ばやくメモに走り書きをし大通りへでる。

チラリと城方面へ視線だけを向けて足早に大通りを歩き続ける。





 貧民窟の大通りを抜けようかという時であった。宿場町ルールへの道を逸れ他村町とを繋ぐ街道へと入る。

 等間隔に植えられた木が生えるのみの街道は見渡しが良い。

であるのにマレは忽然と消えた。



 マレが消えた場所に独りの女が駆け寄る。

女は周囲を見渡し。


「あかん、おらへん。そんな馬鹿な。」


その後、女は顔を顰める。


「しっかし酷い臭いやで。」


女の横には一本の木、そして積まれた死体の山。

貧民窟では日々人が死ぬ。

見回る巡回兵が馬車にて運び女王都郊外数カ所へ決まった場所に捨てていく。

火葬も土葬もしない。

不衛生であろうが誰も気に留めない。

蛆が沸き腐り腐臭を放つ、白骨も混じる。


 女は顔を顰めつつ、辺りを見渡す。

小柄な年若い女、少女と呼ぶべきか。革マントを羽織り、綿製のスカートを履き、特徴的なぶかぶかな緑のベレー帽の下から紅い髪が伸びる。

肩から鞄を提げ、腰には護身用のナイフ。


 少女は死体の山を背に消えた男を探す。

死体山端が崩れ動き出す。

少女が声を出す間も無く腐臭放つものに羽交い締めにされ口を塞がれた。


 少女に襲いかかったのは熊毛皮の男マレ。

少女の腰からナイフを抜き取る。

マレに付いていた蛆数匹が少女に落ちる。

少女は恐怖に震えた。


「声をだすな。質問に答えろ。はい、は首を縦に、いいえは首を横に一度振れ。」


口を押さえられ、わかりましたとばかりに首を縦に二度振った。

その間も少女を抑えつつナイフ手に少女の鞄の中身を漁っていく。


「レキ国の兵士または間諜か。」


少女は首を横に振る。


「物盗りの類か。」


少女は首を横に振る。少女の鞄の中身はパピルス、羊皮紙、ペン、墨、布。紙に何と書いてあるのかマレには読めない。


「騒ぐなよ、騒げば、お前のナイフで首を掻き切り、腹に突き刺し、腸をぶちまけてやる。」


少女が少しでも怯える用に言葉を選ぶ。

口を塞いでいた左手で少女の両頬と顎を鷲掴み顔を自身に向けた。


「目的は。」

「お兄さん、かっこえーなーと思って。」


少女の返答に胡散臭さを感じる。

マレはわざとらしく少女の瞳を覗き込み、スンスンと鼻を鳴らす。


「腐った嘘の匂いがプンプンするぞ。」


もう、走ってにげるか、と思考していると。


「若様を離せ!」


怒号に目を向ければクロスボウを構える女、距離二十歩程。


 マレは死体の山に半身を隠し羽交い締め少女を弩に対する盾とした。

 厄介な状況がさらに厄介に、時間稼ぎとこの先の行動指針にすべく。


「用が済めば返してやる。質問に答えろ。」


今も弩を向ける女に向かい叫ぶように問う。

弩を構える無言の女。


「貴様、名前は、何故俺をつけた、何者だ!」


これには女も声を大にし応じる。


「私はローレライ旅商隊、メイ、貴君と商談の機会を窺っていただけだ!」


腕の中、ベレー帽少女をみれば二度、三度と激しく首を縦に振る。

そして複数の足音と声。

「若様ぁ~」「ラァァィ!」「若ぁぁぁ!」


 うわー 増えたよ (‘A`) 逃ゲロ



若と呼ばれるベレー帽少女の耳元で囁やく。

「悪かったな、じゃあな。」

少女の強張る表情、腰に戻される少女のナイフ。

マレは駆けだした。逃げる為に脱兎の如く駆ける


 「に、逃がすかい。ま、待てやぁぁぁ!!」


必死に逃げる熊毛皮男を追うベレー帽少女の構図。

 全力で駆ける少女が離される、逃げ切られると感じたのか、男の腰に飛び掛かる。

飛びつき、勢いのままに大地に転がる二人。


「てめ、はなせ、こらッ」ヽ(`Д´)ノ

「幸運の幸運の女神はなあ!前髪しか在らへんのや、離さへん!絶対離さんでえええ!」

「てめこの!やめ!そこ髪じゃねーしッ!」Σ(゜Д゜)

「なに!ここか!?ここが!ええんか!?えーんヤロ!ええって言えや!!!」


遅れ追いついた少女の仲間達は天下の往来、街道の真ん中で熊毛皮男の股間《黄金》を必死の形相で握り締める若様を見てオロオロと狼狽えるしかなかった。





 「悪かったって 跡つけてたのは謝るし。」

午前、宿場町ルールへと向かう街道を歩くマレ。

マレと並走する様に進む荷馬車一台。


「いい、此方も危険な賭けをした。互いに怪我人、死人無し、もういい。」


男のぶっきらぼうな対応。喰い下がる様に少女は話しかけるのをやめない。


「怒ってるやろ?」

「かもな。終わった事だ。」

「いやいやいや、怒ってる、怒ってるやん。」

「初見だ。互いに信用できるものがない。」


商人である、流石に男の言葉にウッ呻く少女。


「このツンデレさん。」

「何処にデレがある。」

「なあ、バークス商会と取引したんやろ。」

「して無い。」

「嘘だッ!バークスの主人と貴族?に見送られてたやん。」

「それは事実だが()()()バークス商会とは取引していない。」

「でも〜商会と貴族の伝手あるんやろ?」

「さあな〜。」

「なあなあ、教えてやぁ〜二人の仲やん。」


マレは立ち止まり少女を見た、少女は男に視線を向けられニカッと笑う。立ち止まるマレを置いてけぼりに馬車は進む。


「ストップ!ストップ!ストーーーップ!」


慌てたのは少女、さらに追走して来た仲間が乗る後方馬車から急停止への文句の声。

ローレライ旅商隊が保有する馬車二台が急停止する中、マレは歩みを再開する。遅れて馬車も歩きだす。


「どしたん。」

「どんな仲だ?」

「何が。」

「俺とお前の仲。」

「臭い仲ちゃうん。」

「はぁ、、、そうか?」

「デレた デレたで!?」

「いや全く。」

「なあ、ルール行くんか?馬車の荷台に乗せたるで、教えてや。」


ベレー帽の少女の笑みはとても無邪気で。

マレは荷台に麻袋を放り込み次には荷台に転がり込んだ。


「おっ、その気になってくれたん。」

「“Give and Take” な。」

「ギブなんそれ?」

「俺の識ってる国の言葉、対等な取引契約の約束の誓い “Give and Take”」

「ぎぶあんどてーく」

「OK」

「お、おけ?」

「俺が一つお前の質問に答える。お前は対価に俺の質問に一つ答える。嘘は無し、不都合な事は黙秘を認める。で、どうだ?」

「ほな、契約成立や!」


契約はまとまったと、少女は御者席から荷台へと移る。がら空きの荷台、胡座をかき座るマレは顎を撫でながら。


「そうだなぁ、まずは互いの自己紹介からか?あ、これは契約外な。俺はヨシツネ駆け出しの交易商で職人だな。」

「ローレライや、よろしゅうに。」


赤い髪を後ろで束ね緑色大き目のブカブカベレー帽を被る少女はローレライ。


旅商の仲間で御者をするのはサウス・メイ先程弩を構えていた年若い女。

灰髪ショートに旅装束。


 後方の馬車に乗る三人は、

初老のサウス・サンディ、メイの祖母。

マウリ・ラミス、雑用食事担当の少女。

ライヅ・セイン、護衛 獣人、虎人族。


「あの虎人は奴隷なのか?」

「ちゃう、歴とした商隊の一員や。うちの国に奴隷はおらん。」


ローレライはキッパリと言い切った。

マレは何食わぬ顔でフーンと応じたが内心はとても気になる。


「で、何が聞きたい。」

「バークスさんに何を売った。それとも大口の顧客なんか?」

「バークス商会に販売はしていない。王族を紹介してもらい香辛料と皿を売った。」

「まじか!ええ金になったんやろ!」

「金額は明かせないが、まあそれなりだ。因みにだ、バークス商会はそれ程有名なのか?あ、これ契約外な。」


「知らんのか?有名も有名や王室御用達、創業数百年、歴史と格が桁違いや。バークス商会と取引があるいうだけでその商人の信用信頼が保証されたようなもんやで。バークス商会に自身が仕入れてきた品が並ぶんは交易商の憧れや、わっちはなぁ 五年や五年懸けて、やっと三日前に取引してもろうたんや!聴くも涙!語るも涙やで!聞くか?聞くやろ?聞いてくれ!いや、聞けや!!!」


独り興奮する少女に引き気味になりながら。

「う、うん、聞こうか。」





 三日前、南方のタリア帝国で仕入れた胡椒をバークス商会に納入した事。

胡椒を取り扱いたい商人は多く、入手困難、薄利になりがちである事。

生まれはロレ女王国。

小国故に力が無い。

他国へ行けば何処も高い税を吹っ掛けてくる。

ロレ女王国には特産品も無く、皆が困っている。

関所での税が高くロレ国から農産物を輸出しても利がでない。


「農家のおばちゃんの為にも利が無くても、わっちが売りにいかなあかんのや!」


「ロレ国の外貨は、わっちが稼ぐんや!」


胸の前で拳を握り力説する少女。

御者の少女が感涙に鼻を啜る音が聴こえる。

 詐欺師は、うんうんと相槌を打ち。最後には拍手喝采した。


 此奴こいつ、勝手に喋って、勝手に情報提供してくれるなww


(都合の)良い女に認定しますた (*゜∀゜)ニッコリ





 マレは、えらいな〜、立派だな〜と一頻り褒め終え。


「じゃ次、俺からの質問な。地図見せてくれ。旅商人なら持ってるだろ?」


ローレライは、エッ!?と発し動きを止めた。

旅商人にとって地図は重要。

国家は自国の詳細な地図を秘匿する。

旅商人は自ら歩き地図を作るか、旅商人から情報を購入するか。

マレは、革袋から硬貨をとりだしローレライに投げて寄越す。


「情報料だ。写させて貰うが俺は旅商する気は無い。」


ローレライは手の平の上、金貨一枚に、唾をゴクリと飲み込んだ。

荷台に並べられる地図(パピルス)

マレは麻袋から自家製和紙と鉛筆を取り出す。


「その白布、パピルスか?そのペン、インク必要無いん?」

「和紙と鉛筆、インクは、、まあ、いらんな。」


ローレライは和紙を撫で、鉛筆が使われる様を観察する。


「ええなーええな〜。その二つ、うち等に取り扱いさせてくれへんか?」


ニコニコと男を見て揉み手をするベレー帽少女。


「和紙は量産する材料と職人が居ない。鉛筆は、、、作れないな。」

「はぁぁぁぁ?作れんて、眼の前にあるで?どうやって、手に入れた?」

「神の御業。」


真剣な表情で告げる男。少女は、まだ、その言葉を信じない。


「しっかしまあ、地図に金貨一枚は、払い過ぎやろ、もう、返さへんけどなー。」


真剣な表情で地図を模写する男。


「情報は世界を制す。彼を知り、己を知れば、危うからず。この地図には金貨一枚以上の価値がある。」


ローレライは、ほぅと感嘆の声をもらし感心した。


「情報を得て、命拾えるならやすいもの。ローレライも金も大事だろうが、何よりも自分の命大事にしろよ。農家のおばちゃん泣くぞ。」


マレの言葉に目元を拭うローレライ。


此奴、涙脆い?チョロインか?(´・ω・`)



「ヨシツネ教養あるんやな。」

「ローレライ、地図に書いてある文字、読み上げてくれないか。」

「なんや、教養あるのに読めへんのか?」

「よめん。無知の知。私は、私が無知である事を知っている。恥ずかしい事では無い。読んでくれ。」

少女が地図を指差し読み上げた言葉を模写に書き込む。

「ン?文字書けるんやな。初めて見る文字やわ。」

「そうか、この文字を使用してるのは世界で俺独りだけだろうな。」

「うわぁ~使えねぇ〜。」





ローレライと雑談混じりに一時間かけ模写作業を終え。

「じゃ次わっちからな。ヨシツネは旅商する気ないんやろ。」

「今のとこな。年数回バークス商会に品卸すくらいだ。」

「じゃ、わっち等に、その香辛料と皿扱わせてえな。」

「信用が無い。考えさせてくれ。」

「わっちは信用できるえ。この眼をみてみい!!」


    (*¥∀¥)  Σ(゜Д゜)


「あ、うん、無理。守銭奴顔やん」

「ちょ!待!?」

「ローレライ、まだ何か聞きたいか?」

「ん、今はもうええよ。」


彼女の言葉にそうかと返し袋から金貨一枚取り出し放る。


「Give and Take ローレライが今迄観てきた事、聞いた事、ルールの街に着くまで地図と一緒に話を聞かせてくれないか。」




 馬車の荷台、揺られ男と少女は語り合う。


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