第10話 う◯こ
「親父 お袋 今帰ったぁ!」
陽が落ちる寸前、意気揚々と集落へと帰還を果たすハク一行。
族長で父であるハマは息子の晴れ晴れした顔に良い事があったようだなと察する。
そして暗がりの中、息子と若衆が運んできた熊に唖然とした。
彼奴やりおった。
集落中央、陽は落ち篝火に照らされる獲物の熊を見る為、集落中の皆が集まって来る。
「族長、こちら使ってみてください。」
解体作業、石包丁を握る大人達、センは族長に黒曜石ナイフを手渡す。
篝火にかざし、繁々とナイフを鑑賞する横で、おおと歓声が挙がる。
ハクとマクが黒曜石のナイフで熊を淀みなく解体していく。
「族長、この黒い石、大量に用意できます。」
手中のナイフと息子の解体作業を交互に観察していたハマの視線がセンの顔に吸い付く。
センは無言で頷き次にはハクの横で座り込み解体作業を見学するマレを見た。
ハマもまた度々集落へやって来る怪しい男へと視線を向ける。
次にタンとホウを見れば二人を歳の近い若者達が囲み出来たばかりの自作大弓を自慢する光景を眺める。
「もう彼は、マレは俺達にとって家族同然です。どうか狼人の友人として受け入れていただけないですか。」
息子と友人が怪しい男と笑い合う姿を眺め、しばし逡巡した後に一言、そうかとだけ。
今も一族内ではマレの来訪を快く思っていない者は多い。
翌日、集落の主だった者を集め族長は宣言した。
「息子達とエビス殿の交友を族長として正式に許す。皆もまずは見守って欲しい。その上で判断して欲しく思う。」
以降、族長ハマもまたマレと積極的な交流を心掛けるのだった。
切っ掛けはそう
「え?マジで 海で ウンコ シテルノ!?」
戦慄するマレを前にマクがうんうんと何度も頷き返す。
そっかー そうだよな 俺的には受け入れ難いけど向こうでも有ったしなー うーん
「明日は、集落で作業するわ。」
翌日早朝、女達を伴い一輪車に道具を乗せ訪れたマレ、ハク達と「HEY BROTHER」とハイタッチを交わし合う。
「ハクー、村 ハズレ 場所 借りる 欲しい。親父サン カクニン お願い デキル?」
「んー何にやるんだ?」
「うんこ しっこ 捨てる バショ。」
「えー海に捨てればいいじゃん。」
「そ~だね 匂い気にしなくていい。」
「ホウ タン 駄目駄目 ヒツヨウ ステバ ホシイ。」
力説する義兄弟の頼みとあれば無碍にも出来ずハクが父親に許可を取る。
その日の作業内容は、
屋根と柱のみの小屋一棟。廃棄穴付き。
草刈り、ヨモギの小屋横への植生。
腐葉土集め。
貝殻集め。貝殻焼成粉末加工。
「貝殻砕くの大変じゃね?」
「うん、マク君 貝カラ 焼く トテモ 熱い火で焼く 貝 ボロボロ 成る 簡単壊れる。ニケ、貝集め 焼き お願い。」
「はい、精一杯やらせて頂きます。」
マレと共に穴を掘るハクとセン。
「なあブラザー、何故必要何だ?」
糞尿捨て場の意味を確認するハクにマレは、うーんと唸り。
「俺 うんこ おシッコ ノ 神!」
「ハイハイ で本当のとこは?」
「セツメイ 出来ない。難しい。カフク 分かるか?」
「カフク?セン分かるか?」
「分からん」
「ンー カ は悪い事 フク 良い事。堆肥、肥料 分からんよな 硝石 モット 分からんよな?」
狼人は農業をしない。ゆえに肥料が分から無い。
硝石丘と言われても理解できるはずも無く。
炭焼きを教えた。
硫黄採取を教えた。
そして今、この作業。
人を生かすも殺すもできる物を作る施設。
禍福は糾える縄の如し。
「トリアエズ 憶える イツカ 役に立つ。」
「そういうもんかー。」
「そうだな。」
「ハク、セン、連れション スル!」
「おう」「ン」
男三人、掘った穴に並び立ちションをする。
後日、族長よりマレが糞尿を集めていると集落内、全ての者に連絡された。
あの人族はうんこが好きと認識されてしまう。
熱い風評被害 (´;ω;`)
「お前等 うんこ 巻けぇぇぇ」(# ゜Д゜)