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151話 特別すぎる薬

 俺たちはモンスターが撤退したのを確認したうえで、ドライアドのところに戻った。といっても、モンスターが出ていくのを遠くから確認していたドライアドの数もけっこういたので、報告は形式的なものだが。


 長老とその関係者たちも俺たちのところにやってきた。

森の中で例外的に木が少なくて、大通りになっているようなところで、俺たちとドライアドたちは向かい合う形になる。


 その周囲に野次馬的なドライアドがずらずらと集まってくる。

 興味津々といった感じの若いドライアドや、「ありがとう、勇者!」などと声を出している者もいる。


 俺たちが勇者に当たるのか謎ではあるけど、少なくともミーシャは、声援に対して楽しげに手を振っていた。こういうところではっちゃけるのはいかにもミーシャらしい。逆にヴェラドンナはマイペースに仏頂面をしている。

 家の近所でも歩いているような落ち着きぶりだ。


 ドライアドの長老はかなりの老齢で髪もヒげも真っ白だった。それと、ほかのドライアド同様、半透明の姿をしていた。

 いつ頃から生まれたかもよくわからないほど生きているらしい。基本的に森が滅んだりしない限り、ドライアドは生き続けるんだろう。


「皆さんのおかげで我々は解放されました。どう、お礼を言ってよいかわかりません……」

 長老が深々と頭を下げた。頭を下げると長すぎるヒゲが地面に垂れていく。


「これでモンスターが仕返しに来なければいいんですけどね、そこまでバカじゃないと信じたいですけど」

「その場合は、こちらも魔法などで戦いますのじゃ。自分たちの土地を奪われて、平然としておるのもおかしな話ですのでな……。次は奴らを退散させるぐらいの力を見せます」


 長老の言葉に、ほかのドライアドたちも「そうだ、もう負けないぞ!」「魔族をやっつけろ!」といった声をあげる。


「わかりました。ご健闘をお祈りします。俺たちも魔族の侵略を食い止めるつもりですから」


 小さな範囲といっても、ドライアドの住むケルティンの森は一つの独立国だ。

 そこを守るのは森に暮らすドライアドの使命ではある。


 これでひとまずの報告は終わったつもりなのだが、長老の側近と思しき男がなにやら水筒のようなものを持ってきた。


 そして、コップに一杯ずつ少しとろみがあるような水を入れていく。


「我々はほとんど物を持ちません。なので、恩返しができることとしたら、これぐらいのものです。どうか、お飲みください」

「すいません、これはいったいどういうドリンクですかね……?」


 これで実は猛毒だったなんてことは考えづらいけど、それでも得たいが知れないのは事実なので、聞いてみても失礼には当たらないだろう。


「これは活力の水と言いまして、貴重な樹液を集めて作った飲み物です。一言で言いますと、生命力を高め、寿命を大幅に延ばすことができます。別名『老いを消す薬』とも」


「それ、聞いたことありますぜ!」


 レナの尻尾がぴんと立っていた。これはよほど興奮している証拠だ。


「旦那、これはかつて王が探し求めたことがあるとかいう伝説の霊薬ですぜ! まさか実在していたとは思わなかった……。とんでもないものと向き合うことになっちまったな……」

「そんなすごいものなんだな……」


 レナは目を見開いて、こくこくうなずいた。

「すごいも何もこれが記録に残れば私は世界最高の盗賊ですよ! もう、これ以上の成功なんて考えられねえ!」


「あっ、申し訳ありませんが、この活力の水については口外はなさらないようにお願いいたします……。残っているのはこれだけですし、このことが知れれば間違いなくドライアドの土地は人間の国にも攻められます……」

 長老が懇願するように言った。


 たしかに不老不死に近いような効果があるものがあると知れたら、大変なことになる。


「こんなのがあったら魔族も探し回ったんじゃないの?」

 ミーシャがもっともな疑問を尋ねた。だよなあ。


「ただの伝説でそんなものは存在しない、ドライアドが長命種なのでそういう話ができただけだと言い続けました。そもそも、魔王にしてもその部下たちにしても寿命は長いので、あまり興味がなかったのが大きいですが」


「そういや、魔王の作戦も百年計画らしいものね」

 むしろ人間の寿命が短すぎる気がしてきた。


「我々が見せることができる最大の恩がこれでございます。もちろん、無理強いはいたしません。それは普通の人間を超えるということですので」


 それはそうだよな。不老不死になったら人の別れをたくさん見ることになったなんて話は日本にすらあったぐらいだ。

 回復アイテムをもらう発想で考えてはダメだ。今後の人生がまさしく変わってしまう。


 俺はミーシャのほうを向いた。

「お前はどうしたい、ミーシャ?」

別作品になりますが、「若者の黒魔法離れが深刻ですが、就職してみたら待遇いいし、社長も使い魔もかわいくて最高です!」が新社会人最初の一か月編がちょうど終わりました。現在全25話です。よろしければこちらもご覧ください! http://ncode.syosetu.com/n7498dq/



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