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130話 オレの名は

間違って131話を最初更新してました…アップの確認時点で気付いたので、1分ぐらいで修正できたと思いますが、おかしいぞと思った方は更新ボタンを押してみてください。すいません……!

 Aランクパーティーでもこれだけ攻められると相当つらいはずだ。だとしたら、攻略なんてままならない。

「ダンジョンとは質的に違いますね……。こうも、連続してこられると……」

 ヴェラドンナもこれだけの数と戦うのには慣れていないから、苦しくなっている。


「ミーシャ、ヴェラドンナの援護にまわってくれ!」

「わかったわ! ちょっと、ここはハードみたいね!」


 ミーシャが加わったことで、ヴェラドンナ周囲の敵はすぐに一掃された。俺も着実にレナと一緒に敵を排除していく。


 おおかた、敵を狩りつくしたかと思ったところで、屋敷から二足歩行の野獣みたいなモンスターが出てきた。戦士みたいな鎧も羽織っている。


「人間がここまで来るのは本当に久しぶりだな」

 モンスターがしゃべった。

 高位のモンスターと考えて正しいだろう。


「オレの名は――」

「あなたがここの山を管理してるボスね。魔王とそっちの戦略について、いろいろと教えてもらいたいんだけど。できるだけ手短にお願いしたいわ。早く、この寒い山から下りたいから」

「何者か知らんが、そんなことをする義務などこっちにはない」

 そりゃ、そうだ。モンスターの言うとおりだよな。


「しかし、どうせここで殺すのだから言ってやってもいいか」

 あっ、冥途の土産理論だ!

「各地のモンスター多発地帯にはオレのような管理者が任命されている。そして人が入ってこれないように、そこでモンスターを住まわせているのだ」


「ありがとう、いいことを聞いたわ」

 にやっとミーシャが笑った。

 そのまま、気楽にボスのほうに近づいていく。


「ということは、あなたみたいなボスを倒していけば、魔王の勢力は減退するということよね。達成目標としてはすごくわかりやすい。じゃあ、まずはあなたを倒すことにする」


「お前、この俺を恐れぬのか。命知らずな奴め。このオレ――」

「ここ、寒いからちょうどよさそうね」


 ミーシャは杖から氷の刃を次々に放出した。

 そう、ミーシャは攻撃魔法の威力もチート級なのだ。

 氷の刃が敵の全身に突き刺さって、それで勝負があった。ゆっくりと後ろに倒れていった。


「これ、倒したってことでいいのかしら? さすがにこういう敵が死んだふりをしたりしないわよね?」

 ミーシャがしゃがみこんで顔を寄せてみるが、とくに反応のようなものはない。完全に沈黙しているらしい。

「あっ、今、目が動いたわ。まだ生きてる」

 ただ、ミーシャに一切緊迫感がないから、虫の息ではあるんだろう。


「オレを……一撃でたお……」

「そうね。一撃で倒したわね。もっと強くなって挑戦してきなさい」

 多分、これで死ぬから次に挑戦するのは無理だろうけど……。


「だが…………」

「もっと、大きな声で言ってくれないと聞こえないわ」

 なというか、ボスが不憫だ。多分だけど「だが、オレより強いボスがお前たちを血祭りにあげるだろう」みたいなことを言った可能性が高い。そこは忠実にやってるんじゃなかろうか。


「最期に……教えて……や……オレの名は……………………」

「聞こえなくなったわね。息絶えたみたい」


 あのボス、ついに名乗ることもできずに負けたのか……。

 たまにRPGでもボスの名前とか一切気にせずにゲームを進めていく奴がいるけど、ミーシャってそういうタイプなのかもしれない。できれば、攻撃の前に情報を聞かせてほしかった。ボスの名前がわからないままなの、モヤモヤするのだ。


「旦那、私、この敵に憐れみを覚えます……」

 レナが切なそうに言った。

「俺もそうだ……。こいつはこいつなりに頑張ったのにな……。いきなり敵が来たと思ったら、いきなり殺されたんだよな……」


「このモンスターに家族とかいたら、やりきれませんね」

 無表情のまま、ヴェラドンナが言った。絶対にやりきれないとか本人は思ってない。

「そういうこと言わないでくれ! 今後戦いづらくなるから!」

「私はなんとも思っていないので心配しないでください。でないと、暗殺者とかできませんよ」

「だったら、余計にこっちにだけ言うなよ……」


 俺たちが後ろでそんなことを言っている間にミーシャは地面の魔法を唱えて土を盛り上げていた。雪で白くなっているところが盛り上がって、黒い土が出てくる。


「ミーシャ、何をしてるんだ?」

「丁重に埋葬してあげるのよ。戦闘で容赦はしない。でも、後始末もする。それが私のやり方よ」

「ミーシャ、情け深いな」

 これまで見たことのないミーシャの一面を見た気がした。


「それに、このモンスターにも子供がいたかもしれないでしょ」

「だから、そういう罪悪感を覚えるようなことは言うなよ……」


 ミーシャは土に名前不詳のモンスターを入れると、土をかけて、手を合わせた。俺も手を合わせる。

「旦那と姉御は何をしてるんですか?」

 そっか、この世界には合掌という概念がないから、レナはわかりようがないよな。


「冥福を祈るポーズなんだ。せっかくだから、二人もやってくれ」

 俺たちは四人揃って、手を合わせた。

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