琴梨との一幕<広場>
〈広場〉
ここの施設に居る人達は全て番号と首輪の色で呼ばれている。
ちらっと自分の首輪を見る。
白い首輪で、Ⅱと書かれている。
友達同士なのに番号で呼ぶ事を嫌がった僕たちは、勝手に名前を付けて呼んでいる。
琴梨や夏美、番号で呼ぶより、よっぽど温かみがある。
僕は、二人より年上という事もあり、にーと呼ばれている。
Ⅱ番だからにー。
安直すぎだと思う。
そんな事を考えながらベンチに座ると、遠くから緑色の何かが近づいてくるのが見える。
「にーくん!」
琴梨だ。
こっちに向かって近づいて来てると思ったら、ズサーと盛大にコケた。
痛ったーいと言いながら涙目になっている。
僕はベンチから立ち上がり、琴梨の前まで行くと、ある事に気付いた。
服の所々が破れている。
髪もめちゃくちゃに乱れていて、顔にはアザも出来ている。
今こけて出来た傷にはどうやっても見えない。
「えへへへへ」
恥ずかしそうに琴梨がはにかむ。
「【力】、無闇に使うなって言っただろ?」
普通の人間には使えない【力】。
それを行使する為には、人によって様々な代償が必要になる。
僕は体力が奪われる。夏美は血液が奪われる。
それに、代償は一つとは限らない。
この施設に居る人の平均寿命は30歳。
分かっている代償以外にも、様々なものが奪われているように感じる。
琴梨の場合は、何が奪われているのか一つも分かっていない。
でも、確実に何かが失われているはずなんだ。
だから、【力】を使って欲しくない。
「え? 何で【力】使ったって分かったの?」
琴梨が首を傾げて聞いてくる。
「そりゃあ、緑色の光を出してたから・・・・・・」
【力】を使った時には、それに対応する色の光が出る。
その色によって、首輪を付けられるんだ。
「そっかぁ~」
しまった、という顔を琴梨がして、ごめんなさい、と素直に謝ってきた。
「って、前も同じこと説明したような・・・・・・」
気のせいじゃない。何度も同じ説明をしているはずだ。
「そう?」
琴梨の記憶には無いようだ。
まぁ、いいか。昔から琴梨は物忘れが激しい。今更気にするようなことでもないか。
気を取り直して、琴梨の前にしゃがんで、手を握る。
白い光が手の中で生まれ、琴梨を包んでいく――――。
「おら! さっさと立て!」
白衣を着た男が、うずくまっている琴梨を蹴り上げる。
「きゃ!」
琴梨は悲鳴をあげて、転がる。
周りには何人もの研究者が居て、ニヤニヤ笑いながら琴梨を見ている。
「ほら、さっさと【力】を使え」
そう言われて、琴梨は歯を食いしばって集中する。
ほのかに琴梨が緑色の光に包まれたかと思うと、また男が蹴りつける。
「あう!」
蹴られて、光はすぐに消えた。
「こら! 誰が【力】を止めていいと言った!」
そう言って男はまた琴梨を蹴る。
「くっ!」
周りの男達も加わって、琴梨に暴力を振るい続ける。
そのうち、琴梨はぐったりして動かなくなってしまった。
「ふん。今日の検診はここまでだ」
反応がなくなってつまらなくなったのか、男達はその場を立ち去っていった。
ハッと気が付くと、琴梨の頭のてっぺんが目の前にあった。
僕の胸に顔を埋めている琴梨を抱きしめている形だ。
「にぃーくん? ふふ。何だか分からないけど、すっごく落ち着く」
琴梨も僕に手を回して、ぎゅっと抱き返してきた。
「何も心配いらないよ・・・・・・大丈夫」
僕はそう言いながら、琴梨の頭をゆっくり撫でた。
小さなその肩が、小刻みに震える。
「うっ・・・・・・うぅ・・・・・・ぐすっ」
泣いてる?
琴梨に僕は何もしてやれないんだろうか。
悔しい気持ちを噛み殺しながら、琴梨が泣き止むまで、ずっと撫で続けた。
感想お待ちしてます。皆様の反応によって、エンディングを変えようと思っています。




