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君との明日  作者: 直木
3/8

琴梨との一幕<広場>

〈広場〉

 ここの施設に居る人達は全て番号と首輪の色で呼ばれている。

 ちらっと自分の首輪を見る。

 白い首輪で、Ⅱと書かれている。

 友達同士なのに番号で呼ぶ事を嫌がった僕たちは、勝手に名前を付けて呼んでいる。

 琴梨や夏美、番号で呼ぶより、よっぽど温かみがある。

 僕は、二人より年上という事もあり、にーと呼ばれている。

 Ⅱ番だからにー。

 安直すぎだと思う。

 そんな事を考えながらベンチに座ると、遠くから緑色の何かが近づいてくるのが見える。

「にーくん!」

 琴梨だ。

 こっちに向かって近づいて来てると思ったら、ズサーと盛大にコケた。

 痛ったーいと言いながら涙目になっている。

 僕はベンチから立ち上がり、琴梨の前まで行くと、ある事に気付いた。

 服の所々が破れている。

 髪もめちゃくちゃに乱れていて、顔にはアザも出来ている。

 今こけて出来た傷にはどうやっても見えない。

「えへへへへ」

 恥ずかしそうに琴梨がはにかむ。

「【力】、無闇に使うなって言っただろ?」

 普通の人間には使えない【力】。

 それを行使する為には、人によって様々な代償が必要になる。

 僕は体力が奪われる。夏美は血液が奪われる。

 それに、代償は一つとは限らない。

 この施設に居る人の平均寿命は30歳。

 分かっている代償以外にも、様々なものが奪われているように感じる。

 琴梨の場合は、何が奪われているのか一つも分かっていない。

 でも、確実に何かが失われているはずなんだ。

 だから、【力】を使って欲しくない。

「え? 何で【力】使ったって分かったの?」

 琴梨が首を傾げて聞いてくる。

「そりゃあ、緑色の光を出してたから・・・・・・」

 【力】を使った時には、それに対応する色の光が出る。

 その色によって、首輪を付けられるんだ。

「そっかぁ~」

 しまった、という顔を琴梨がして、ごめんなさい、と素直に謝ってきた。

「って、前も同じこと説明したような・・・・・・」

 気のせいじゃない。何度も同じ説明をしているはずだ。

「そう?」

 琴梨の記憶には無いようだ。

 まぁ、いいか。昔から琴梨は物忘れが激しい。今更気にするようなことでもないか。

 気を取り直して、琴梨の前にしゃがんで、手を握る。

 白い光が手の中で生まれ、琴梨を包んでいく――――。


「おら! さっさと立て!」

 白衣を着た男が、うずくまっている琴梨を蹴り上げる。

「きゃ!」

 琴梨は悲鳴をあげて、転がる。

 周りには何人もの研究者が居て、ニヤニヤ笑いながら琴梨を見ている。

「ほら、さっさと【力】を使え」

 そう言われて、琴梨は歯を食いしばって集中する。

 ほのかに琴梨が緑色の光に包まれたかと思うと、また男が蹴りつける。

「あう!」

 蹴られて、光はすぐに消えた。

「こら! 誰が【力】を止めていいと言った!」

 そう言って男はまた琴梨を蹴る。

「くっ!」

 周りの男達も加わって、琴梨に暴力を振るい続ける。

 そのうち、琴梨はぐったりして動かなくなってしまった。

「ふん。今日の検診はここまでだ」

 反応がなくなってつまらなくなったのか、男達はその場を立ち去っていった。


 ハッと気が付くと、琴梨の頭のてっぺんが目の前にあった。

 僕の胸に顔を埋めている琴梨を抱きしめている形だ。

「にぃーくん? ふふ。何だか分からないけど、すっごく落ち着く」

 琴梨も僕に手を回して、ぎゅっと抱き返してきた。

「何も心配いらないよ・・・・・・大丈夫」

 僕はそう言いながら、琴梨の頭をゆっくり撫でた。

 小さなその肩が、小刻みに震える。

「うっ・・・・・・うぅ・・・・・・ぐすっ」

 泣いてる?

 琴梨に僕は何もしてやれないんだろうか。

 悔しい気持ちを噛み殺しながら、琴梨が泣き止むまで、ずっと撫で続けた。


感想お待ちしてます。皆様の反応によって、エンディングを変えようと思っています。

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