第82話 帝都散策 ー神殿ー (2)
マーコとニーコに注意されて、ちょっとばかり凹みつつ、ルーカスさんの後をついていく。
迷いなく街の細い道を進んでいくルーカスさん。さすが、『平民街は庭だった』と言うだけのことはある。
時折、建物から人が出てきては、聖騎士の格好のルーカスさんにギョッとするけれど、相手がルーカスさんだとわかると、笑顔で手をあげて挨拶される。
その様子に感心しながら、私は頑張って小走りで追いかける。
何せ、足の長さが違うのだ。
なのに、マーコとニーコが余裕の表情なのが、凄く悔しい。
「あ、裏門が見えてきましたね」
ルーカスさんの言葉で、自分たちは神殿の表門ではなく、人通りの少ない裏門のほうに向かっていたことに気付いた。
裏門の衛兵さんは、ルーカスさんとランドルフさんの姿に一瞬驚いたけれど、すぐに門を開けて中に入れてくれた。
神殿の中に入ってからは、ランドルフさんが先を歩いていく。
裏門から入る神殿は、思っていたよりも賑やかだ。裏方の人たちが色んな仕事をしているせいだと思う。
そんな中を、聖騎士の格好をしたランドルフさんとルーカスさんが歩いて行く姿は、ちょっと浮いている気がする。
「ランドルフ様」
神殿の神官だろうか。黒っぽい服を着た若い人がスルスルッとランドルフさんのところに来て、何やらボソボソと話すと、すぐに離れていった。
「ミヤビ様、聖女様はご不在のようです」
「あら」
ヤバいブレスレットの話をするなら、聖女のアイリス様にするのがいいと思っていたのだけれど、そのアイリス様は皇城のほうに出向いているらしい。
なぜに、聖女様が、と思うのだけれど、皇城の中にも神に祈りを捧げる礼拝堂があるのだとか。今日は、その礼拝堂に行く日だったのだとか。
タイミングが悪かった。
「その代わりに神殿長がいらっしゃるので、お時間をとってもらいました」
「え、いつの間に?」
「神殿に向かっている間に、ランドルフが連絡をいれていたよ」
「は?」
マーコの言葉に、思わず声があがる。
「私たち、聖騎士には、緊急時のための連絡手段を持たされております。皇都内であれば、問題ございません」
ニコリと笑みを浮かべて、腰のベルトのあたりをトントンと叩いてみせるランドルフさん。
「もしかして、こっち【異世界】にもスマホみたいなのがあるの?」
思わず興味津々で聞いてしまう。
「すまほ?」
「似たようなものか? たぶん、魔力がないと使えないヤツだろ?」
ランドルフさんは聞きなれない言葉に不思議そうな顔をしたけれど、マーコが確認すると、うんうんと頷いている。
「それも聖騎士並みに必要となると、一般には普及はしていまい」
「はい。その通りです」
ということは、当然私も使えない物ということ。ガッカリである。
そんな話をしているうちに、私たちは神殿内の中央の建物に入っていた。廊下は分厚いくすんだ臙脂色の絨毯が敷かれている。
廊下の突き当りには部屋があり、木目の綺麗な立派なドアがゆっくりと開いた。
――あ、確かあの人は。
「ああ、『愛し子』様、いらっしゃいませ」
ドアを開けて立っていた男性は、にこりともしないで無表情な顔で待ち構えていた神殿長だった。




