第81話 帝都散策 ー神殿ー
ランドルフさんに店から出るのを止められて戸惑っている私。
「うん、雅。後で説明するから、そのまま裏から出て、まずは神殿に行こうか」
「え、神殿? 後でよくない?」
マーコにも止められてしまった。
もちろん、ヤバいブレスレットについては神殿に相談するつもりはあったけれど、私はそれよりも先に冒険者ギルドに行きたかった。
身分証としてのギルドカードの期限がそろそろヤバい気がするのだ。最低ランクは、依頼を受けなければならない期間が決まっているはずなのだ。
「いや、先に神殿」
しかし、マーコの真剣な顔に、頷くしかない。
「早く出よう。店に迷惑がかかる前に」
――迷惑がかかるって何。
「え、ちょっと、それを先に言ってよ」
メリーアンさんも困った顔をしているけれど、ルーカスさんが何やら説明したようで、顔を強張らせている。
「早く、早く」
「わかった、わかったって」
ルーカスさんが先に裏口があると思われる店の奥へと進んで行くので、その後を追うように、マーコとニーコに腰を押されて歩かされる私。
「メリーアンさん! また来ます!」
「は、はーい」
店の奥には男性が一人、作業をしていたのか、私たちが通り抜けるときに驚かれてしまったので、すみません、すみません、と頭を下げて店から出る。
店の裏手の細い道を少し早めに歩く。私の前を歩くのはルーカスさんとマーコ、後ろをニーコとランドルフさん。ユーコは私の頭の上をふよふよ飛んでいる。
先行しているルーカスさんが、私の歩調を気にしてか、何度も振り返る。
「で、結局、何なの?」
マーコに問いかける。
「ん。店の外に、どっかの貴族の従者みたいなのが、うろついてたの」
「別に、平民街でも、従者とかいくらでもいるんじゃないの?」
「アレはダメよ。悪意モリモリなんだもの」
「え」
「アレ、雅狙い」
「なんで」
「どっかの貴族に言われてつけてきてたんじゃないかな。それも一人じゃないんだから、ムカつく~」
何でもないことのように言うマーコ。
「だいたい、見るからに聖騎士って男たちを引き連れて歩いてるんだもの、貴族の手足になってるような誰かがすぐに知らせに走るに決まってるじゃない」
「パレードみたいに街に入ったの、忘れた?」
「ぐっ」
マーコとニーコに呆れたように言われてしまった。
自分としては女の子らしい格好で街に入ったから、気付かれないと思ったのは、かなり甘かったらしい。
「申し訳ございません。私たちが離れて護衛していれば」
後ろを歩くランドルフさんが申し訳なさそうに言う。
「いや、それは」
「ほら、雅、前向く」
「は、はい、はい」
立ち止まりそうになった私の腰をツンツンと突くニーコ。素直に前を向くと、ちょうどT字路のところでルーカスさんが待っている。
「ねぇ、メリーアンさんは大丈夫なのかな」
私はそれが一番気になった。
「ああ。屋敷精霊がいるから大丈夫だろ」
「あんな小さい子が?」
『……私が少し、力を分けてやった』
「ユーコ?」
『フン、雅の品物を扱う店だぞ。ちゃんと守れなくてどうする』
屋敷精霊がどういう風に店を守るのか、興味があるけれど、ルーカスさんが先に進むように促す。
「こちらの道から神殿に向かいます」
真剣な顔のルーカスさんに、私も素直に頷くしかなかった。




