第77話 帝都散策 ーアクセサリー屋ー (2)
ルーカスさんが案内してくれたのは、平民街と呼ばれる一角。
先ほどまでの大通りとは違い、人の多さが段違い。
大通りのほうが、どこか上品な雰囲気があるのに対して、こちらの平民街の通りは、雑多な店が並び、多くの人たちが歩いていて、賑やかだ。
そんな通りだからこそ、大柄な聖騎士のルーカスさんとランドルフさんは、目立つ、目立つ。
周囲の視線は二人に向かうから、逆に私は気ままに歩けている……と思う。
「ルーカスさんは、ここをよく知ってるみたいですね」
後ろを歩いている私たちを気にしつつも、足取りに迷いはない。
「ええ。この平民街は、神殿に入るまでは私の庭みたいなものでして」
ニカリと笑うルーカスさん。
ルーカスさんは、元々、鍛冶師の一家に生まれた末っ子なのだそう。
「うちは上に五人の兄と、姉が一人いまして」
七人兄弟の末っ子ともなると、ほぼ放置だそう。このまま、普通に鍛冶職人になるはずだったのが、何の因果か、今は引退してしまった聖騎士の先輩によって、剣術と聖魔法の才能を見出されたのだとか。
「兄たちが立派に跡を継いでいるんで、私一人がいなくても問題はないんで……ミヤビ様、あちらです」
ルーカスさんに言われて目を向けた店は、通りの角を曲がってすぐのところにあった。
「なんか、可愛いね」
店の入口の看板の飾り文字や花を彫ったデザインが、すでに店の雰囲気を伝えている。
「ですよね」
ニコニコしながら言うルーカスさん。
ここは、ルーカスさんの姉の友人がやっているお店らしい。
「ルーカスの姉というのは、ヴォイド商会の若旦那のところに嫁いだアレか」
「アレ言わないでくださいよ」
ランドルフさんがポツリと言った言葉に、ルーカスさんは苦笑い。
「えーと?」
「ああ。姉が一人いると申しましたでしょう? これがなかなかのお転婆でして」
当時ヴォイド商会の跡継ぎだった今の旦那さんに迫りまくって、ついに結婚までに至った強者らしい。
「夫婦仲はいいんですよ? ついこの前にも二人目を授かって……」
ルーカスさんが言い訳をするように話していると、目的の店のドアが開いた。
「あの。店先に立ち止まられると、他のお客さんが入れないんですけど……って、ルーカスじゃん」
店主らしき女性が、立ち止まってしまっていた私たちを注意するために出てきた。
「あ、メリーアンさん。ごめんなさい……ミヤビ様、どうぞ中に」
「すみません」
「い、いえいえ、お客様でしたか(ちょっと、ルーカス! もう一人聖騎士様いるじゃないっ)」
メリーアンと呼ばれた女性が、ランドルフさんに気付いてギョッとした顔をして、ルーカスさんにこっそり文句を言っている。
「私のことは気になさらず。さぁ、ミヤビ様」
「あ、はい」
恐縮しきりのメリーアンさんをよそに、私はワクワクしながら店内に入っていく。
『ほうほう、この店は』
一緒に入ってきたユーコが、ニンマリと笑みを浮かべる。
「え、何?」
「ほおほお」
「なるほど?」
マーコとニーコもニマニマしはじめる。
「ちょっと、何よ」
『この店はいいぞ』
「うんうん」
「いいね、いいね」
「だから何よ」
『この店には、小さい屋敷精霊がおるのさ』
ユーコの言葉に、私は「えっ」と声をあげて固まった。




