第9話 家の周囲を確認する ー家の裏手に回るー
私はブロック塀越しに、蛇を追いかける。どこか隙間を見つけて入り込んだりしないかと、心配だったからだ。
我が家は古いブロック塀で囲まれている。過去の大きな地震でも崩れることはなかったけれど、今回の転移でも大丈夫だったかは、わからない。
蛇の動きを見ているとブロック塀に沿っていきながら、角では曲がることもなく、そのまま森の中へと入っていった。その様子に、ちょっとホッとする。
そして角のところで右手を見ると、我が家の裏が見える。この先には祖父の手作りの物置と駐車場へと繋がっている。
人が一人通り抜けられる程度の幅しかないそこには雑草しか生えていない。夏場は草刈りはしたんだけど、しばらく放置していたのでまた生えてきてしまうのは仕方がないが、今はほぼ枯れている。
転移してくる前は、裏手には我が家と同じくらい古い家があった。そこは確か、少し前に娘さん夫婦が両親を引き取って空き家になってたはず。
もう一軒、駐車場側にも家があった。あちらは老夫婦に息子さんが同居していたはずだ。
――うちみたいに飛ばされてないといいけど。
どういう状況だったのかわからないから、そうとしか言えない。
隣の家があった場所は、表と同様に木々が生い茂っていた。表の木々よりも少しばかり薄暗く、なんだか嫌な感じだ。
私は家の裏側を歩いて行く。ここには小さな面格子のついた、トイレやお風呂場の小窓がついているけれど、今は閉め切ったままだ。
――あ、台所の窓、開いてた。
朝ごはんを作っている時に、小さく開けていたのを忘れていた。私はスッと閉めて、裏側を通り抜けると、祖父の手作りの物置のある場所へと辿りついた。
ここまで見た感じでは、ブロック塀は問題ないようだ。
――これも壊れずに済んだんだ。
ガラリと引き戸を開けると、祖父が使っていた工具や、古びたタイヤが置かれている。特に、崩れ落ちている感じではない。
そのまま戸を閉めると、駐車場へと目を向ける。
――こんなところに、自動車とかあっても、使いようがないか。
祖父が亡くなってからは、私が祖母を病院に連れて行ったり、買い物に行ったりする時に使っていた軽自動車だ。
まだガソリンは少し残っているはずだけれど、こんな森の中じゃ走りようがない。
自動車のそばに停めてある自転車へと目を向ける。こちらは祖母が昔使っていたもの。
祖母が亡くなって、すぐに捨てる気にはなれずに放っておいたので錆びついていて、乗れる感じではない。
――やっぱり、こっちのお隣さんもないか。
木々に囲まれているのは同じ。ブロック塀もそのまま。
「はぁ。本当に周りは木しかないのね」
思わず言葉が漏れる。
こんな場所でどうやって生き残れというのだろう。ズンッと気持ちが落ち込む。
『みゃーおー』
『にゃー』
マーコたちの鳴き声が聞こえたので、表側の庭へ出ると、リビングの大きな窓のすりガラスに、マーコとニーコの姿がぼんやり映っている。前足を伸ばしてガラスに触っているようだ。
なんか可愛い。
私は早くマーコとニーコの所に戻るべく表側の庭を突っ切り、玄関へ向かった。




