第8話 家の周囲を確認する ー門扉の外に出てみるー
猫又情報を送ってきたかと思ったら、急にメッセージが止まってしまった自称神ノナ。ポンポンとメッセージを送ってきてたので、いきなり止まると不安になる。
足元のマーコとニーコ。ただの老猫にしか見えないけれど、本当に猫又なんだろうか。
それ以上に魔法があったり、神獣がいたりするということは、もしかして小説なんかで出てくる魔物もいたりするんだろうか。
もっとこの世界の詳しい情報だったり、今いる私の場所のこととかも知りたいのだけれど、しばらく待ってもメッセージは送られてこない。
「にゃーお」
「なーご」
マーコとニーコの鳴き声で、パジャマ姿でスマホを手にしたまま立ちっぱなしだったことに気付いた私は、自分の部屋へ戻り、普段着に着替えることにした。
髪を一つにまとめて、ワインレッドのハイネックのシャツにグレーのパーカー、そしてジーパンに着替えた。これが、家にいる時の定番の格好だ。
マーコとニーコも出たがったけれど、普段から家の中でしか飼ってなかったので、出ないように押し返して玄関ドアを閉める。
「……空気がおいしい」
住宅街では感じたことのない、森林の空気、とでもいえばいいだろうか。目の前にたくさんの木が生えているのだから当然か。
こんな森の中だから鳥の鳴き声でも聞こえてきそうなものなのだけれど、チュンとも聞こえてこない。家が突然現れたから、逃げてしまったのかもしれないが、不自然なくらい静かだ。
私は門扉のところまでいくと、ゆっくりと開けて、外に出てみる。
――あ、あれ?
なぜか、にゅるりと何かを通り抜けた感覚に驚くと、同時に、一気に木々の間を抜けていく風の音が聞こえるようになった。
――どういうこと?
私は慌てて振り返ると、特別何かあるわけでもない。しかし、確かに何か壁みたいなものがあった気がするのだ。
スッと手を伸ばしてみると、指先が抵抗を感じている。透明な何かがあるようだ。
暇つぶしにWEB小説を読む私は比較的雑食で、恋愛モノや戦記物、ヒューマンドラマと色々読んでいる。そんな私だから思い浮かんだのは、ファンタジーの定番。
――結界、とか?
世界を超えて転移してきたのに家が壊れずに済んだのは、それがあったおかげなんじゃないかと、思ったのだ。
ガサガサガサ
突然、背後で草か何かが動いているような音が聞こえた。
――もしかして、魔物!?
結界らしきものの存在で、すっかりファンタジー脳になっている私が連想するのは、仕方がないと思う。
私は後ろを振り返る勇気もなく、慌てて門扉を開けて中に飛び込んだ。
再び、外の音は聞こえなくなったけれど、草が揺れているのが見えた。そこに現れたのは。
「へ、蛇?」
この家が建ってた住宅街で見かけたことがあるのは小さなトカゲくらいだったから、蛇の姿にギョッとする。
長さは1メートルくらいの青大将みたいな蛇が、頭をクーッとあげてニオイを嗅いでいる。それがニョロニョロと家のほうに近寄ってくる。
――やだ。家の中に入ってこないよね!?
そう思いながら、玄関を開けて亡くなった祖父の黒い傘を取り出し、蛇への迎撃態勢に入ったけれど。
「え」
門扉のところまで来たかと思ったら、門扉を超えずにまるで透明な壁に沿うように、逸れていった。




