閑話:第二聖騎士団の聖騎士たち
まだ日も昇りきらない朝焼けが広がる中、 帝都の門が開くと同時に、第二聖騎士団に所属する二人の聖騎士たちがまっすぐに向かうのは、『主神の愛し子』の家。
聖騎士たちは『主神の愛し子』の家の警備の夜勤の者たちとの交代のために向かう者たちだ。
長身で立派な体格の聖騎士たちであれば、帝都から五分とかからない場所にある。
街道から少し離れているとはいえ、ポツンと建っている家は、街道を行く者たちからも見える上に、誰が見ても違和感しか感じない。しかし、その場に聖騎士たちが立っているのを見て、神殿関係とわかるため、ほとんどが気にしつつも街道を移動していく。
今日の警備の担当は一度経験しているランドルフと、もう一人は初めて警備にあたるカッシャー。同期の二人は、今回の警備に関しては、少し楽しみにしていることがある。
「フフフ、『愛し子』様からの差し入れ、楽しみだな」
「うむ」
ランドルフは初めて昼の警備に来た時に、おにぎりとお茶の差し入れを受けていた。今まで食べたことはなかった物ではあったが、思わず「美味い」と零れるほどに、美味だった。
帝都の外ということもあり、食事をするような場所はない。そのため、警備に立つ者たちは野営の時と変わらず、携帯食で紛らわすのがほとんど。
そんな彼らに、『主神の愛し子』からの差し入れ。それも美味いときたら、聖騎士な彼らでも、少しは期待をしてしまう。
「おはようございます」
「お疲れ~」
早朝ということもあり、声を抑えながらも挨拶を交わす聖騎士たち。
「特に問題はなかったか」
「はっ」
「昨夜は、『カクニ』という肉の煮込みをご馳走になりました!」
「ルーカス!」
夜勤明けだというのに元気に返事をしたのは、雅たちを探しに向かったメンバーの一人、最年少十八才のルーカス。
一緒に警備に当たっていた先輩に叱られて、ペロリと舌を出す。
「そうか。食いもんの話題が出る程度に、問題がなかったってことだな」
聖騎士たちは和やかな雰囲気で会話を交わし、夜勤組が帝都へと戻っていく頃には、街道には帝都に向かう人々や馬車の姿も目立つようになる。
雅が帝都の外れに居を構えてから、第二聖騎士団が警備を始めたが、現在まで大きな問題は起きていない。
そもそも雅の家には結界が張られ、許可なく敷地の中には入れないのを、警護にあたる者たちは知っている。
「ふむ、朝早くからご苦労」
すっかり日が昇り、鳥の鳴き声が聞こえ始めた頃、門の前で警備に当たっていた聖騎士の背後に、気配なく現れたのはマーコ。
「おお、マーコ殿。おはようございます」
「雅から差し入れだ」
そう言って差し出されたお盆の上には、おにぎりが四つ、マグカップに入った温かいお茶が載っていた。
「おお、これが『オニギリ』というものですかな」
興味深々に問いかけるのは、今回初めてのカッシャー。
「おお。手づかみでいいぞ。その前に」
「『クリーン』ですね」
「そうだ」
初日にも注意をされたランドルフが、自分とカッシャーの手を『クリーン』の魔法で綺麗にする。
「では」
「(もぐもぐ)……こいつは」
「美味かろう?」
「はい。この白い粒々の微かな塩味もいいですな」
「前は肉が甘辛く煮た物が入ってましたが、今日のは何でしょう?」
「それは、ツナマヨだな」
「つなまよ?」
「魚を油で漬けた物よ」
「え、これが魚ですか!?」
ツナマヨの説明を自慢げにするマーコと、ふむふむと関心しながらおにぎりを食べる聖騎士たち。
今日も穏やかな一日が始まりそうである。




